不動産用語「分かれ」「片手」「両手」の意味ついて解説します
管理費と共益費って違いがあるの?という素朴な質問を受けたので、解説記事にまとめました。
業界の方でも管理費・共益費という名目で賃料設定しているけれど、正確には何を指しているのか知らない方もいらっしゃるかもしれません。
この図を覚えておいてくださいね。
毎月払っている賃貸費用の中身を知ろう
賃貸物件を借りるための家賃(賃料)は、賃貸借料の略なので、
お部屋を賃貸するにあたり必要な費用、とあまり違和感なく理解できます。
でもそれ以外の不動産に関わる用語は普段の生活では馴染みがないものが多く、
似てるけれど意味の異なる言い回しもあります。
過去、別の記事で敷金・礼金・保証金などの解説をしていますが、
そのシリーズで今回は「管理費・共益費」について。
最初に結論をざくっと書きますと、
・賃貸物件においての「管理費」「共益費」表記に明確な違いはありませんし、金額も何か縛られるルールがあるわけではないです。
・賃料を決めるときに、全体として値決めをどうするかに影響があるのみです。
・物件探しの際には「共益費」=「管理費」と考えて問題ありません。
・また共益費と管理費の両方を徴収されることはなく、どちらか一方のみです。
さて、では細かくみていきましょう。
管理費とは
不動産公正取引協議会連合会(景品表示法に基づいて設定された、業界自主ルールの運営団体)の
「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」には下記のように記載されています。
参考ページ:公正競争規約について
【管理費】
マンションの事務を処理し、設備その他共用部分の維持及び管理をするために必要とされる費用をいい、共用部分の公租公課等を含み、修繕積立金を含まない。
ここまでは引用です。小難しいですね。
噛み砕くと、分譲マンションの物件に対して使われることが多い言葉です。
修繕積立金を含まない、とわざわざ記載されているあたり、分譲マンション向けの含みがありますね。
分譲マンションには管理組合があり、建物によっては管理人がいらっしゃることや、管理に必要な文書のやりとりを事務委託していることが多く、その費用に使われるイメージです。また、共用部分の設備維持費用としても扱われます。
分譲マンションの所有者は「管理費・修繕積立金」をご自身で払っていますが、
その物件を賃貸に出す際に、「共益費」ではなく「管理費」という表記で賃借人から費用をもらうことが多いです。
ただし、分譲マンション所有者の払う「管理費」と、賃借人に請求する「管理費」は言葉は同じですが、費用を一致させる必要がありません。
このあたりの話は共益費の記載の後に。
共益費とは
【共益費】
借家人が共同して使用又は利用する設備又は施設の運営及び維持に関する費用。
ここまでは同じところからの引用です。
噛み砕くと、分譲マンションではなく1棟賃貸不動産のときに使われることが多いです。
賃借人が共同で使用したり、利用する設備や施設の運営および維持するために使われるイメージです。
具体的には、共用部分の電気代や照明器具交換代、共用部分の水道代、ゴミ置場清掃費、エレベーターの電気代や設備記事費、消防設備などの定期点検費用、共用部分の定期清掃費などなど…。
建物が大きくなればもっと様々な費用がありますし、小さければエレベータなどの費用は不要となりますね。
なので、アパートサイズの物件は共益費が安めに設定されていることが多いイメージです。
法律で義務付けられる建物への各種点検なども少ないためです。
管理費と共益費の違いって何
さて、最初に明確な違いがないと書きましたが、管理費の中にも共益費と同じく、共用部の設備維持費用や清掃代が含まれています。
共益費には分譲マンションにある管理組合運営事務がありません。管理組合がないためです。
そのため、大まかなイメージは最初のこの図にある通り、管理費の言葉の中に共益費が内包されています。
ただし、業界的にふわっとした使い分けで使われているのが実情のため、あまり深く違いを考える必要はありません。
値決めのルールはあるのか
費用を決めるにあたり、縛りはないと書きました。
実際の相場的には賃料の5%~10%程度で値付けられることが多いです。
そもそも、なぜ「家賃」と「共益費」分けて表記するのか。賃料総額表示だけでもいいのでは?という疑問が生まれます。
この値決めに関わる要因がいくつかあります。
1:「家賃」を少しでも安く見せるため
管理費・共益費が家賃と別になっている場合、月々の支払いは同じでも割安感を演出することができます。
ここでは同じ総額50,000円の物件(1)(2)があると仮定します。
・家賃45,000円+共益費5,000円の物件…(1)
・家賃50,000円(共益費込み)の物件…(2)
例えば不動産サイト(ホームズやスーモやアットホームなど)で「4万円台の家賃」で検索した場合、
(1)の家賃は45,000円
(2)の家賃は50,000円
なので、(1)の物件のみがHITします。
そのため、総額は同じであっても共益費を別にして家賃を安くした方が検索にかかりやすく、
割安感を演出できるというわけです。
ただし、総額表示で検索したいユーザーニーズにも合わせるため、
検索サイトにはほとんど総額で検索するチェック項目も存在しています。
参考にライフルホームズ様のサイトからスクリーンショットで貼り付けています。
2:敷金・礼金を安く抑えるため
多くの場合、仲介手数料・敷金・礼金・更新料は「家賃の○ヶ月」で金額が設定されます。
この表記の場合は、家賃と管理費・共益費を分けることにより、金額が安くなります。
入居者確保の目的で、初期費用の高さで入居を断念するケースに対して、
少しでも歩み寄りたいパターンが考えられますね。
逆の視点ではオーナーの敷金・礼金の総額が減りますので、ご注意ください。
回避策としては、◯ヶ月分という表記ではなく、◯万円として敷金・礼金を設定する方法があります。
3:管理費や共益費はフリーレント物件でもかかる
フリーレント物件とは、入居後一定期間は「家賃」がかからない条件がついた物件のことです。
入居促進目的で、約1~2ヶ月分の「家賃」を無料にする仕組みとなっています。
こちらはあくまで「家賃」が無料になるだけなので、
管理費・共益費をはじめとしたその他の費用は通常通り発生するため、お気をつけください。
まとめ
・賃貸物件における管理費と共益費には明確な違いがない
・値付けは入居者募集のことを考慮し、不動産会社やオーナーの判断で決められる
・相場は家賃の5%~10%程度
・家賃に「管理費」「共益費」を含むことでメリットになることもデメリットになることもある
最後までお付き合いいただきありがとうございました。