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中谷崇志

オーナー目線で本当に必要な事を提案する賃貸管理のアドバイザー

中谷崇志(なかたにたかし) / 宅地建物取引業

株式会社トライアス

コラム

定期借家契約とは何か

2021年2月17日

テーマ:不動産業界ネタ

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 賃貸管理

不動産業界の専門用語解説シリーズです。
自社ホームページでも書いたものをよりシンプルにまとめてみました。


「定期借家契約」という言葉を聞いたけど、一般的な契約の時と何が違うのかについてわからない方も多いと思われます。

一般的な契約の「普通賃貸借契約」との違いについて、噛み砕いて書いてみますね。
法律上の細かい規定や例外のケースなどは今回はあまり触れません。


定期借家契約とは何か

お部屋を借りるための賃貸借契約は2種類あります。

「普通賃貸借契約」と「定期賃貸借契約(定期借家契約)」です。

最も大きい違いは契約期間終了時に退去となるかどうかです。

普通賃貸借契約は貸主からの解約には「正当事由」がなければ退去をしてもらうことができません。

定期借家契約は原則として、期間満了時には確定的に退去となります。

「正当事由」が認められることは難しく、国土交通省の言葉を引用すると…
1:建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。)が建物の使用を必要とする事情
2:建物の賃貸借に関する従前の経過
3:建物の利用状況及び建物の現況
4:建物の賃貸人が建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出
  (表現を言い換えると立ち退き料の提示)
などを考慮して判断されます。

実際には裁判で認められるかどうかの話になるため、ケース・バイ・ケースですが、
よくあるのは家賃の滞納3ヶ月分とか、近隣への影響が大きい迷惑行為を何度も何度も注意してもやめないとか、
上の4項目目の立ち退き料を払った上で、金額や理由によっては認められるとか、状況によって様々です。

そのため、一定期間で退去させる権利がある上での賃貸契約は、オーナー視点だけで考えればお得に感じられます。

しかし、期限がきたら解約となるお部屋に住みたいという方は少ないという現実があります。
そのあたりを踏まえて、メリット・デメリットをざっと並べてみます。


定期借家契約のメリットとデメリット

【貸し手のメリット】

■期間満了によって確定的に契約を終了することができる

→転勤で3年後には自宅に戻りたい(3年だけ貸し出したい)、子供の学校の近くに住む期間のみ家を賃貸に出したいなどの、希望期間のみ賃貸に出すということができる

■建物取壊しなど、近未来に退去してもらう必要があるような計画を立てつつ賃貸に出すことができる

■1年未満の期間でも、賃貸の契約ができる(普通賃貸借契約では1年未満は期間の定めがないものになります)

■家賃減額請求権を排除できる(普通賃貸借契約では特約で書いても無効です)


【貸し手のデメリット】
■賃料が相場より安い設定でないと、中々入居者が決まらないという現実がある

■契約期間の途中で解約できない(そもそもが期限付きのため、特約で中途解約条項がなければ中途解約不可)


【借り手のメリット】
■賃料等が相場より安い物件が多いため、お得に部屋を借りることができる

■更新料がないため、5年契約等で住む場合、2年毎に更新料を払う場合などと比べ費用負担が少ない
(大阪では更新料がない商習慣ですが、関東などでは更新料があります)

■家を買うまでの間、短期間戸建てにお試し住みをしたいなど、目的がはっきりした短期間の賃貸用途に向いている
 
■その他、短期で借りたい時に普通の物件は断られることが多いが、短期期間の定期賃貸借契約物件があれば断られにくい

■迷惑行為をする入居者が長く居住するリスクが少ない

→質の悪い入居者は再契約されないので、期間満了時に入れ替わります


【借り手のデメリット】
■契約期間の途中で解約できない(そもそもが期限付きのため、特約で中途解約条項がなければ中途解約不可)

→レアケースとして、居住用の建物で床面積が200㎡未満のものについては、転勤、療養、親族の介護などその他やむを得ない事情により、借主が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、借主から中途解約の申し入れが可能です。

■再契約特約がなければ、確定的に期間満了時に退去することになる


事務上の問題点


定期借家契約は別途「賃借人は「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書等とは別に、予め書面を交付して説明しなければならない」という制限があるため、仲介をする不動産会社の契約時に必要な書類が増えます。

さらに、1年以上の定期借家契約は自動的に期間満了で解約になるのではなく、6ヶ月前に期間満了による退去通知を出す必要があるため、管理会社等がその通知を忘れると期間満了での解約ができなくなり、トラブルになります。

このように、普通賃貸借契約と比べて定期借家契約はやることが増えるため、仲介会社が取り扱いを嫌がります。
結果的に客付けが遅くなったり、管理を断わられるなどの可能性があります。


これらを踏まえて、定期借家契約で賃貸運用を考えているオーナーは専門に扱っている会社に依頼をするほうが無難です。
定期借家専門!リロケーション専門!という会社に相談してみましょう。

複数社に声がけをして、対応を比較することもお忘れなく。

お部屋を探している方も専門で取り扱っている会社で話を聞くことをオススメします。

専門業者に依頼していても、転勤から戻って自宅を使いたかったのに、半年前の退去通知が出されておらず、貸主・借主双方クレームになったケースを知り合いから耳にしたことがあります。(その後裁判になったようです)



定期借家契約と、普通賃貸借契約について、
今回はざっくりとした違いのみですが、理解した上で運用すれば便利に使える契約方法でもあります。

今はまだまだ浸透率が低いですが、今後より良くなっていくことを期待しています。
最後に国の出しているパンフレットもリンクしておきます。

国土交通省のパンフレットへのリンク

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中谷崇志

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