不動産用語「分かれ」「片手」「両手」の意味ついて解説します
先日、ツイッターで話題になっていた話が興味深かったので取り上げてみたいと思います。
こちらには転載しませんが、内容としては新民法下における、原状回復の請求範囲についてでした。
引用されていた画像はこちら
画像の引用元はこちら
新民法についてのパンフレット(法務省)
ネタ元のツイートは5万リツイートを超える反響だったため、今でも退去時のトラブル経験者が多いことが伺えます。
皆様、○○の費用は払う必要がある、ないなど色々議論がなされていましたが、
契約書、地域の商習慣、入居年数など、前提条件がバラバラなので個人的主観の議論になっていました。
国民消費生活センターによると、実際にあったトラブル事例紹介としてはこんな感じです。
参考:国民消費生活センター
【事例の転載】
・賃貸マンションの退去時、規定のハウスクリーニングと補修費用を支払ったのに、追加で原状回復費用を請求された。納得できない。
・十数年住んだ賃貸アパートを退去したが、大家からの原状回復費用請求が高額である。国交省の原状回復ガイドラインを調べて反論したが、大家は取り合わない。どうしたらよいか。
・賃貸マンションを解約したら、ペット特約を根拠に原状回復費用を過剰に請求された。納得できない。
・5年間居住した賃貸アパートを退去したら、管理会社からクリーニング代や修繕費を請求された。高額で納得できない。
・10年以上居住したペット可の賃貸マンションを退去後、高額な原状回復費用を請求された。支払わなければならないか。
※「最近の事例」は、相談者の申し出内容をもとにまとめたものです。
この文章を見ただけでは判断できないのが、この手の問題の難しいところです。
契約書や特約はどういう内容だったのか、入居者は通常の損耗と主張している部分はどの程度の傷なのかなど、ケースバイケースと言えます。
個別の事例はさておき、どうすればトラブルにならずに退去精算できるのかを考えてみます。
退去時の原状回復に伴う、よくあるトラブルを防ぐには
退去時のトラブルは最終的にお金を払う、払わないになるため、少しコミュニケーションがかけ違うとトラブルになります。
ひどいときには管理会社を飛び越え、オーナーを巻き込んでの訴訟になるため、双方とも十分に注意しつつ、説明と対応を行うべき事柄です。
【注意しておくポイント】
・原状回復ガイドラインを理解しておく
・賃借人(借主)と契約内容の確認を行う
・入居時に現況の確認作業を細かく行っておく
一つずつ見ていきましょう。
原状回復ガイドラインを理解しておく
国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドラインについて
国土交通省 ホームページ
このガイドラインは、例えばクロスの耐用年数は6年であるから、償却された価値で計算したほうが良い等、各種設備などの経年劣化を考慮して退去時請求費用を計算することなどが書かれています。
その他、こういう傷は入居者負担、こういうことはオーナー負担などの目安が書かれています。
ざっくりと重要事項をまとめると、以下の4点です。
1:原状回復とは という定義の明確化
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、
その費用は賃借人負担としました。
そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
⇒ 原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化しました。
2:「通常の使用」とはの定義
・賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの
・基本的に上記であるが、その後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるもの
⇒ この2つを賃借人に原状回復義務があるとしました。
3:経過年数の考慮
住んでいる期間が1年の人と10年の人で同じように請求するのはおかしいよね?
という考え方から、経過年数を考えて減額する、という考え方になっています。
4:施工単位
原状回復は毀損部分の復旧なので、可能な限り毀損部分に限定し、
その補修工事は出来るだけ最低限度の施工単位を基本とする。
ただし、毀損部分と補修を要する部分とにギャップ(色あわせ、模様あわせなどが必要なとき)がある場合の取扱いについて、一定の判断を示す。
要するに・・・
⇒ 1箇所クロスを破いたからと言って、部屋全部のクロスを請求してはだめ。だけど、その部分だけも難しいから、1面は入居者、その他はオーナーのような考え方になっている。
賃借人(借主)と契約内容の確認を行う
何が契約上負担に含まれているか、特約としてのハウスクリーニングや鍵交換費用は含まれているか、など
契約書にどう書かれていて何が含まれているかをきちんと双方が理解して、入居、退去の話をすることが大切です。
【ガイドラインにこう書かれています】
・トラブルを未然に防止するために
原状回復の問題は、賃貸借契約の「出口」すなわち退去時の問題と捉えられがちですが、
これを「入口」すなわち入居時の問題と捉える。
入退去時における損耗等の有無など物件の状況をよく確認しておくことや、
契約締結時において、原状回復などの契約条件を当事者双方がよく確認し、
納得したうえで契約を締結するなどの対策を的確にとることが、
トラブルを未然に防止するためには有効であると考えられます。
入居時に現況の確認作業を細かく行っておく
ある傷が入居前からあったものか、なかったものか、というトラブルもよくある事例です。
・入居時にこういう傷や汚れがあるという管理会社からの説明をきちんと行うこと
・入居者も、入居時に自分がつけた傷ではないものを細かく確認し、入居してすぐに主張しておくこと
できれば専用の傷申告書面を【きちんと内容と意義を説明して】書面で出してもらうことが望ましいでしょう。
とりあえず紙を渡したから出してない入居者が悪い、管理会社に責任がない、というのは実際に訴訟になった場合は絶対とは言えないでしょう。
基本的には知識のない一般の方とプロの訴訟では、説明責任等が争点になる可能性もあります。
まとめ
退去時のトラブルは、入居時からトラブルの芽が発生する。
入居時にきちんと対応、説明をしておくことが重要です。
また、以下の3点に気をつけて入居者と話し合いをしましょう。
・原状回復ガイドラインを理解しておく
・賃借人(借主)と契約内容の確認を行う
・入居時に現況の確認作業を細かく行っておく
業界の人間として、退去時のトラブルが1件でも少なくなることを願っています。