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【知ってる人だけ始めてる】マンション共用部の電力自由化の仕組み、裏側解説

中谷崇志

中谷崇志

テーマ:賃貸経営

最近、弊社の料金表の更新ばかりだったので、
知っている人だけ始めている業界ネタを一つ書いていきたいと思います。

弊社で提供しているのは主にビルやマンション共用部の電気契約ですが、
この記事では電気の切替全般に関わる仕組み解説の内容になります。

マンション共用部やビルの高圧契約に関する独特な話は別記事で後日書きたいと思います。

ビル 照明

さて、管理組合様、1棟オーナー様のお悩みで、毎月出ていく費用の削減があります。
点検、メンテナンス関連の費用であったり、水道光熱費であったり。

この水道光熱費の中で、共用部において大部分を占めるのが電気代です。
電気代の削減としては近年、点灯する照明の間引きやLED化工事、エアコンの設定温度や時間の調節を実施された方も多いはずです。
(もしされてない場合は、LED機器も安くなってきているので、削減額計算してくれる業者に見積り依頼しても良いと思います)

これらの対策をした上で、さらになにかお金をかけて工事等をして電気代を削減するには費用対効果が薄いのが実情ですが、
電力会社(小売)の切替によって、費用をかけずに電気代をもう少し削減できる可能性があります。

あくまで料金やサービスの仕組み解説になりますので、
各社のプランなどの比較は含まれておりません。ご注意ください。


そもそも電力自由化や電力会社の切替とは

個人向けの家庭用電力の切替(電力自由化)に関しては、大手ガス会社さんや大手携帯会社さんなどでもされているので、CMをご覧になった方も多いと思います。

サービス概要を説明する前に、電力会社の解説を少し。
電力会社は大きく3つの役割にわけることができます。

発電:字の通り発電をすること
送配電:発電された電気を各家庭や事業所まで届けること
    また定期的な点検や、緊急時や停電時の対応も行う
小売:開栓や閉栓の対応、各メーターの数値から使用量を計算し、毎月請求すること

この小売の役割をしている会社を、より安い単価で提供しているところに切り替える、というのが電力会社の切替(電力自由化)になります。
それによって、年間で5~30%くらいの電気代を削減できる可能性があります。
(契約状況によって大きく異なるので金額の話はこの記事では割愛します)


となると、次に電力会社の切替って安全なの?という疑問があります。


合わせて解説していきますね。

下図の「地域の電力会社」は、いわゆる関西電力様や東京電力様などにあたります。
電気の需要家は電気料金を支払っている人とお考えください。

電力会社切替の図

多くの方が誤解をしていることなんですが、
電力会社の切替、といっても最後の「検針数値から請求書を作成して送る役割の会社」を変えるだけなので、
停電などで何かあったときの連絡先・対応先は変わりません。
また、電気に色はなく通り道(電線・電柱)も同じなので、
○○の会社の電気だけ停電!や、○○の会社の電気だけ不安定!ということもありません。


家庭向け電力の自由化が話題になってから数年経ち、
全国で2割~3割くらいは新しい電力会社に切り替えているという統計データがあります。

ですが、地震や災害、台風被害などの停電ニュース時に、○○電力に変えたお客様以外は復旧しました!みたいなニュースはありません。
仕組み上、全て今まで通りの送配電部門が対応しているからです。


以下、経済産業省の資源エネルギー庁の文章から抜粋です。
「送配電網全体で電気の需要と供給のバランスをとる「需給管理」や、電柱や電線など送配電網の建設・保守業務については、スケールメリットの観点などから、一社が一元的に行うほうが効率的という状況があります。
地域のすみずみまで張り巡らされた送配電網を一元的に管理することで、二重投資を防ぐこともできます。

こうした背景から、送配電部門に関しては、発電部門や小売部門のように自由化で新規参入を促す方法ではなく、
これまでのように、ひとつの事業者が地域独占的にサービスを提供する形態は残しつつも、
さまざまな事業者が送配電網を公平に利用できるよう、中立性を高める改革が進められています。」
詳しくお読みになりたい方はこちら。経済産業省のホームページです。


電力会社のプランや価格差はどこから生じるのか


次になぜいろんな会社によって価格差が出るのか、というところをざっくりと解説します。
サービスを提供する各会社の営業努力や経営戦略にもよりますが、大きくわけて2つ。


1:電気を購入する原価費用が異なります。

自社発電をしている会社は自社発電の電気を含めますが、基本的には電気を購入します。
一般社団法人 日本卸電力取引所(JPEX)などから日々値段の変わる電気を、
自社の契約者の使用量を予測し、購入して提供しています。

また、たくさん発電をしている会社と相対契約を結び、
卸売市場よりもまとまった量を安い単価で仕入れることによって、原価を抑える努力をしている会社もあります。

また大きな問題として、電気はどこかにためておくことが難しいものです。
そのため、需給予測の正確さが求められます。

電力は買いすぎても無駄になり、
買わなさすぎると、不足分に対してペナルティで追加費用を払わなければならないシステムになっています。

こういった、需要予測システム(無駄な電気を極力買わないためのソフト等)を自社で持っている会社と、
システムは他社のものを費用を払って使わせてもらっている会社があります。
そのあたりの費用が、最終のお客様に提供する電気代に乗っかってくるため、差が生じます。


2:広告宣伝費および営業マンなどの人件費や電気サービスに対する戦略の違い

こちらはあまり説明しなくても字のままなのですが、
広告宣伝費を大量に使えば、その費用を回収しなければなりません。
テレアポや営業マンなどの人件費も、抱えすぎるとコストになります。
(もちろん担当者がいないのも不安につながってしまうので難しいところですが・・・)

営業戦略的にシェア拡大先行で、赤字覚悟で契約者数を先に確保する戦略をしている会社もあると聞いています。
また、本業の契約(例えば携帯電話とか)につなげるために、
電気単体ではあまり利益が出なくても良いという経営戦略も考えられます。
これらが総合され、各電力小売会社の価格差につながっています。


電力会社切替や比較検討するための、重要ポイントやデメリット


仕組みや業界裏話はこのくらいにして、
実際に切替したいと思ったときに、各社をどう比較してみたら良いのかを考えていきます。

基本的に値段が安いところで決めていく、何かとセットで恩恵が強く受けられる、
もしくは営業担当やサポートの良さで決めていくことが多いと思います。
これは契約する方の好みで良いと思います。

重要ポイント・契約時に気をつけたいデメリットとしては大きく2つ。


1:契約に関して、特別な縛りなどがあるかどうか

よくあるのは2年や3年の契約年数縛りです。
途中で解約すると違約金が発生することがあります。
いろんな会社で比較、もしくは検討した上で、納得して加入されている場合は良いのですが、
言われるがままに契約していて、実は・・・パターンもありますので、お気をつけ下さい。

その他、提案によっては別のサービスと合わせてセット契約になっている場合があります。
その場合、片方だけ解約すると違約金やサービスの提供が受けられないことが考えられますのでご注意ください。


2:燃料調整費が自由計算のもの

こちらはちょっと複雑になりますが、電気の基本的な契約には
使用電力量に応じて燃料調整費や再生可能エネルギー賦課金というものが上乗せされています。

燃料調整費:火力燃料(原油・LNG・石炭)の価格変動を電気料金に反映させるため、変動に応じて、毎月自動的に調整される費用
再生可能エネルギー促進賦課金:再生可能エネルギーを用いて発電された電気を、法令に基づいた価格で買い取るために、 電気を使う全ての方が使用量に応じて、全国一律の賦課金として負担する費用

計算の詳細は省きますが、電力会社によって、費用の上乗せ方がわかれています。
・地域電力会社(関西電力様など)と同一価格で計算するパターン
・すべて電力料金単価に含んでいて、項目としてはないパターン
・燃料調整費はその時に応じて独自計算して上乗せするパターン

何が良い、というわけではないんですが、3つ目の独自計算するパターンの場合、
切替時のお見積りには表に出ず、安くみえていて、実際は請求時には地域電力会社より高めの燃料調整費が上乗せされていて、見積もりより削減額が小さくなる可能性があります。
(もちろん会社によります。地域電力会社より安くなることもあるかもしれません)

このあたりも、できればよく説明をきいてから契約しましょう。


長々と書いてしまったので、この記事はこのくらいでおわります。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

共用部切り替えに関する細かい業界話は別記事でまとめました。
おすすめコラムに登録しておきましたので、ご興味ある方は合わせてお読みください。

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中谷崇志
専門家

中谷崇志(宅地建物取引業)

株式会社トライアス

「わかりにくい事をわかりやすく」伝える事をモットーに、クライアントの立場に立って丁寧にヒアリング。小さな企業だからこそ「社員の顔」が見える対応でクライアントとの信頼関係を築いている。

中谷崇志プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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