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敷金・礼金・保証金・解約引きの違いについて

中谷崇志

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テーマ:賃貸借契約

住居でも店舗でも事務所でも、借りたい物件を探しはじめると目にする「敷金」「礼金」「保証金」「解約引き」について解説します。
不動産会社の方に「払うことになる初期費用」と聞いて、よくわからないままお支払いする方も多いのではないでしょうか。

敷金・礼金・保証金・解約引きの違い

結論を先にまとめます

敷金:物件を借りる人が家主に対して、担保として預ける目的のお金
   新民法下では定義がなされたので、きちんと理解しておきましょう
礼金:部屋を貸してくれた大家さんに対するお礼のお金。お礼のお金なので返金なし
   初期費用の一時金として考えましょう。
保証金:関西他、西の文化。物件を借りる人が家主に対して、担保として預ける目的のお金
    新民法下では敷金と同一として定義されたので注意が必要
解約引:敷引ともいう。「保証金」とセットで、保証金の一部を変換しないという契約に
    なっていることが多く差し引くお金のこと

では、細かくみていきましょう。

敷金と礼金の違い


敷金と礼金は、どちらも賃貸物件を借りる際の初期費用です。
順番にみていきましょう。

・敷金
まず広辞苑の記載から紹介します。

【不動産貸借の際、借主が貸主に対して借賃滞納・損害賠償の担保として預けておく保証金。
 借主に未払い債務がない限り契約終了の際に返還される。】

記載の通り、物件を借りる人が家主に対して、担保として預ける目的のお金になります。
簡単に書くと、家賃の未払いや退去時に借り手の過失で壊してしまったものの修繕費などがなければ、全額返金されるお金となります。

ただし、驚くことに現在の法律では明文化されていません。

2020年4月施行の新民法でようやく明文化されます。
【いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう】

こちらにも担保と記載されていますね。

・礼金
同じく広辞苑から。
【家や部屋を借りるときに、お礼という名目で家主に払う金銭。】
こちらは由来が諸説ありますが、主に関東で部屋の数が足りない時代に、部屋を貸してくれた大家さんに対して、お礼の気持で包んだお金と言われています。
お礼の気持のお金なので、当然返ってきません。

現代でも、商習慣として残っていて、大家さんや管理会社に支払う一時金という性質になっています。
面白いことに地域特性があって、例えば北海道などは礼金文化があまりなかったせいか、今でも礼金なし物件のほうが多数を占めています。

関西は後述の保証金、敷引という文化がありましたが、インターネットの発展とともに、多くは上記の敷金・礼金の文化に変わってきている状況です。

こちらも、実は法律上の明文がありません。
不動産業界は商習慣と判例の積み重ねで成り立っているところが多くありますね。

保証金と解約引き(敷引)について


・保証金
【私法上、一定の債務の担保として、あらかじめ債権者に交付する金銭。】
同じく広辞苑から引っ張ってきました。
こちらは、不動産というより全般的な言葉の意味として書かれていますね。

不動産業界上は、主に関西地方で、独特の商習慣として使われてきたものです。
物件を借りる人が家主に対して、担保として預ける目的のお金になります。
性質は敷金と同じものとして考えて差し支えありませんが、
保証金名目の場合、礼金は基本的にありません。
代わりに、解約引(敷引)という表記があると思います。

・解約引き(敷引)
こちらは広辞苑には記載がありませんでした。
入居の際に預けた保証金から、退去時に差し引かれる金銭のことを指します。

元々、主に関西地方では礼金・敷金などの慣習がありませんでした。
「保証金」という名目で預け入れられた金額の一部を、返金しない条項が記されている契約が多かったため、
「敷引き金」が退去時の原状回復費用に充てられるという商習慣でした。
それでも不足した場合は「保証金の残額」で補填され、
最終的に残った金額が賃借人に返還されます。

ただし、今では敷金・礼金が増え、保証金とセットの解約引き(敷引)は、少なくなってきています。

新民法での注意点

以下、引用です。

【 改正民法622条の2 】
賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭を言う。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。


敷金のあとにいかなる名目によるかを問わず、と書かれています。
これは敷金と保証金は表記が異なっても、全部敷金として定義されたということです。
弁済や返金のことに関しても新民法下では規定されているため、
問題になりにくい敷金・礼金のほうがこれからも増えていくことでしょう。

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中谷崇志
専門家

中谷崇志(宅地建物取引業)

株式会社トライアス

「わかりにくい事をわかりやすく」伝える事をモットーに、クライアントの立場に立って丁寧にヒアリング。小さな企業だからこそ「社員の顔」が見える対応でクライアントとの信頼関係を築いている。

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