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緊張で足が震える理由と、その意外な解決法

野口由美

野口由美

テーマ:症例紹介

「人前で話す」「上司に報告する」ような場面で、緊張して足が震えてしまう。
長年悩んでいて、なんとかしたいと相談にみえました。

血液検査結果から機能性低血糖が見られました。

「緊張」や「足が震える」などの症状と低血糖との関連について解説し、その対策をお話しします。

人前で緊張してしまう

38歳の男性です。

「人前で話す」「上司に報告する」とき、緊張して手や足が震えて、声も上ずってしまいます。

緊張していることを他人に知られてしまうのがいやで、はずかしいです。
緊張していると思われたくありません。

何とかしたいと相談に見えました。


人前で緊張してしまうのは、子供のころからです。

それが、数年前に役職付きとなり、人前にでる機会がさらに増えて、いっそう悩みが深くなりました。

いつもあがってしまうわけでもなくて、なんともない時もあって、
いったいどういうことなのか、さっぱりわかりません。


「あがり症を解決する方法」とインターネットで検索すると一杯でてくるので、いろいろ試してみましたが、まったく全く役に立ちませんでした。

夜中に目が覚める


困っているのは、それだけではありません。

寝る前に、「明日も人前に出なければならない」と考えただけで、嫌な気持ちになってしまい、それがいやです。

寝ていて、急に目が覚めたときも、「人前に出なければならない」ことを思い出して、いやな気持ちになります。
それがいやですね。
熟睡できない気がします。

よく目が覚めますか?

「はい、夜間頻尿なのも気になります」

検診結果は要再検査!

会社の検診結果をみせていただきました。

すると大きな太字の「要再検査、要指導」が目に飛び込んできました。

血液検査結果には脂肪肝の所見が見られ、尿酸値も高値、HbA1cも高値です。

中性脂肪60に目をとめました。

栄養療法的には、だいたい100mg/dlを目指したいところですので、かなり低めに出ています。

脂肪肝の場合は、中性脂肪は高値を取ることが多いです。

それが、これだけの低値をとっているとはどういうことでしょうか。
解釈には注意が必要なデータです。

食生活は?

いつもどのようなお食事ですか?

「朝は7時ごろ、パンにマーガリンと、コーヒー。

昼は12時に、社食で、カレー、ラーメンもしくは揚げ物です。

夜は、20時で、コンビニ弁当、もしくは、ダイエットのためにコンビニサラダで済ましすこともあります。

食後に、ビールとポテトチップスをとって、寝ます」

間食はしますか?

「甘いお菓子は食べません。

ポテトチップスとかスナック菓子は夕食後に。

勤務中の休憩時間には、ペットボトルのカフェオレとかジュースをよくのみます」


「緊張と脂肪肝」を同時に解決?

血液検査結果には、人前にでると緊張してしまう原因はこれなんじゃないのかな、というのが現れています。

その原因にたいする対処方法をとると、自然と、この「要再検査、要指導!」と判定された脂肪肝、高血糖、高尿酸血症も一緒に解決することができますよ。

その対処法とは、薬を飲むとかではなくて、「食事を変える」ということなんです。

どうでしょう。
トライしてみますか?

「はい、やってみたいです」

血糖値は高くて、かつ低い?

血液検査結果をみてください。

中性脂肪が低いというのは、低血糖になっているということなんです。

脂肪肝のときは、中性脂肪は高くなりやすいので、
中性脂肪が低いということは、
脂肪肝がなければ、もっと低い値になっていると考えた方がいいです。

つまり、実際には、60よりかなり低い、と予想されます。

かなりひどい低血糖を起こしている、ということですね。


低血糖の前には、必ず、急激な高血糖状態があります。

急激に血糖値が上昇するから、インスリンが急激に大量に分泌されるため、血糖値が急降下するわけです。


HbA1cが6.0というのは、この数か月の血糖の平均値が高いということを示しています。

ここからも、高血糖になっていたことがわかります。


そしたら、低血糖があるというのはわかったと、
それで、人前で緊張するのと、どうつながるの?っていうことですよね。

緊張の原因

低血糖は体にとっては、死ぬかもしれないような、緊急事態なので、アドレナリン、ノルアドレナリンを分泌して、血糖値をあげようとします。

このとき、どこから糖をもってくるのかというと、自分の脂肪と筋肉をこわして糖に変換しているのです。

せっかく作った自分の脂肪と筋肉を壊して、低血糖を治すわけです。

そのくらい、低血糖は体にとって大変な状況なのです。


それで、血糖値はもとにもどるからいいんだけど、困ったことが起こります。

アドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されると、交感神経優位になります。
これは、たとえば、急にクマやライオンに遭遇したのと同じ状況ですから、

びっくりして動揺しますし、
ドキドキして、
手に汗握って、
体に力が入りますよね。

低血糖になると、クマやライオンはいないんだけど、このようなおなじような変化が起こるわけです。

人前に出て、緊張するのも、交感神経優位な状態です。
現れる症状は似ています。

交感神経優位だと
「動揺する」
つまり、精神的に不安定になるんです。

だから「不安」や「焦り」を感じるかもしれません。

緊張しているとき、「うまくできるかな」とか「失敗したらどうしよう」とか、不安になったり、焦ったりしますよね。


交感神経優位だと「ドキドキ」するわけなので、急に動悸を感じるわけです。

緊張したらドキドキしますよね。


交感神経優位だと「手に汗握る」

緊張すると、なんだかいやな汗をかきますよね。


交感神経優位だと「体に力が入る」

緊張すると、変にからだに力が入ってしまいます。
力を入れたり、ゆるめたりが上手にできなくなって、それで震えが起きたりするわけです。

つまり、人前で緊張して、震えてしまうのは、
低血糖になっていて、交感神経優位な症状が現れている、と考えられます。


「緊張するときとしないときがある」といわれました。

低血糖で交感神経優位な状態に入っていると、あがってしまうし、
血糖値が安定していて、交感神経優位な状態に入っていないと、あがらない、平気っていうことなんですね。

まとめると、
低血糖を起こして、交感神経優位な状態になり、
あがる、震える、不安が起こる、と考えられるのです。

夜間低血糖

夜寝る前も低血糖を起こしやすい時間帯です。

食べたり飲んだりできる日中に低血糖を起こしているのですから、
飲み食いできない、寝ている間は、低血糖必発です。

寝ているときに低血糖になって、交感神経優位になり、頭が冴えて目が覚める。

すると交感神経優位な状態になっているものだから、不安になる。

不安と言ったら、すぐに、
「人前に出て緊張する、いやだ」
という思いと結び付けてしまいます。

おっしゃったことすべて、低血糖の交感神経優位な症状と関連している、ということ、理解していただけたでしょうか。


「めちゃくちゃ、納得しました!!」

よかったです。

どうも低血糖と関係してるみたいだから、これをどうにかしたらいいらしい、というところまで、わかりましたよね。

低血糖対策の食事とは

そしたら、次は、低血糖対策をどうするのかってことですよね。

低血糖は、高血糖の後に起こります。

だからまず、高血糖を起こさないようにするのです。


急激な高血糖って、どうしておこるのかっていうと、
急激な血糖値上昇をきたす食べ物をとるためです。


その代表が、小麦粉製品と砂糖です。

甘いお菓子は食べないということですが、
ペットボトルのカフェオレとかジュースを間食としてとっていると言われました。

これが問題なんです。

ペットボトルのカフェオレとかジュースには砂糖がたくさん含まれていて、高血糖をきたします。


砂糖が含まれていない場合、人工甘味料が入っています。

人工甘味料は腸内環境を悪化させます。

必ず購入前に、裏の成分表示をみて、できるだけ入っていないものを買うようにしてください。


朝のパンは、ごはんに変えられるといいのですが、可能でしょうか。

「大丈夫です。かえてみます」

ご飯に、お味噌汁、納豆、もしくは豆腐があるといいですね。

朝、タンパク質をとることはとても重要です。

朝、時間がなければ、前日の夜におにぎりとお味噌汁を作っておくのもいいと思います。


昼は、カレー、ラーメンだと、炭水化物中心になってしまい、血糖値急上昇を起こしやすいので、可能でしたら、定食を選んでいただくといいのですが、いかがですか。

「定食、たしかにありますね、健康的な感じのヤツ、それに変えます!!」

揚げ物は、小麦粉、パン粉つけてあげているので、脂肪肝、高血糖、高尿酸血症のかたには、控えていただきたい食事です。


夜のコンビニ弁当はおすすめできないのですが、ご自身でお食事作ったりされますか?

「はい、つくります」


コンビニサラダや、スーパーのカット野菜はおすすめできないんです。

なぜなら工場で、野菜を洗って、切って、洗浄、消毒、洗浄を繰り返しているので、野菜のビタミン、ミネラルは洗い流されてしまっています。

カット野菜からビタミン、ミネラルを摂ることはほぼ期待できない、と思っていただいた方がいいです。

それなら、ご自分で、きゅうりとトマトを買ってきて、塩をかけて食べる方がずっと安全で、ビタミン、ミネラルもしっかり摂ることができます。

いかがですか。

「それは知らなかったです。カット野菜よく買っています」


ビタミン、ミネラルはとても重要です。

気持ちを安定させる神経伝達物質を作る際に、ぜったい必要な栄養素だからです。

サラダでは痩せられない理由

ダイエットのために、コンビニサラダ、というのは実は、ダイエットにならないんです。

なぜなら、サラダだけで、炭水化物もタンパク質もとっていないと、
その後、必ず、ものすごくお腹がすいてしまいます。

すると、「血糖値を急激に上げるものを食べてくれー!」って体が命令するんですよ。

それで、炭水化物中心のものを、ガツガツと食べてしまいます。
そのほうが太ってしまうんです。


瘦せたいときは、血糖値が緩やかに上がって、緩やかに下がる、
そういった普通の食事を、三食、ちゃんと、とったほうがいいのです。

血糖値が急激にあがる食事をとると、急激に上がった血糖値部分の糖は脂肪に変換されて蓄積されます。

飲酒は低血糖の大敵

アルコールも低血糖に対してはよくありません。

なぜなら飲酒後、肝臓は、アルコールを解毒する仕事でフル回転になってしまい、
肝臓のたいせつな仕事である、「血糖値を上げる」仕事ができなくなってしまうからです。

できればビールも減量して、最終的にやめていただけるといいのですが、いかがでしょう。

「そうなんですか。
それは知りませんでした。
やめないといけないですね」

あがり症を解決

いかがですか。

人前で緊張する話が、低血糖の話につながりました。
思いもしなかった展開になったのはないでしょうか。


「はい、想像していなかった展開ですが、
でも、めちゃくちゃ納得しました。

解決方法が食事とは、おどろきました。

全然知らないことばかりでした

とにかく、緊張することでとても困っているので、これはぜひやってみます」


今までも、「人前で緊張して、手が震える」という方に、低血糖が認められて、対策を摂っていただき、かなりよくなったと言っていただいています。

ぜひ、はじめてみてください。


半年後に、検診の再検査があるとかいてありますね。
低血糖対策を始めることで、脂肪肝、高尿酸血症も改善できるかと思います。
ぜひ半年後の検診結果も教えてください。

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野口由美
専門家

野口由美(医師)

クリニック千里の森

患者一人ひとりの個性を重視した「患者ファースト」の治療方針のもと、薬に頼らない医療を提供。近代西洋医学の最前線で培った豊富な知識、自身の体験を裏付けに、幅広い選択肢の中から最適な治療法を提案します。

野口由美プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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