低血糖のとき、からだに何がおこっているのか
前項で、さまざまな低血糖症状についてお話ししました。
そのほかにも、
「些細な音をうるさく感じる」
「太陽の光や、照明の灯りを眩しく感じる」
といったような、一見、低血糖とは関係なさそうな症状がみられることがあります。
今回は、「ささいな物音が気になる」、「光がまぶしい」ために、日常生活が困難になる理由について、お話しいたします。
些細な音に敏感になる理由
「些細な音をうるさく感じる」のはなぜでしょう。
ひとは、にぎやかな場所で友人と会話をしても、友人の声を聞きとることができます。
耳は、騒音の中でも、必要な音声のみを聞き取る高度な作業をおこなっているのです。
聴覚機能がこのような繊細な仕事をするためには、多くのエネルギーが必要です。
ところが低血糖でエネルギー不足になると、心臓、脳、肝臓などの主要な臓器でほとんどのエネルギーを使いはたしてしまい、生命維持に関係のない部分は省エネモードに変換されます。
すると、必要な音のみを拾い上げるような繊細な仕事はできなくなり、大きな音も小さな音も同じように拾い上げてしまいます。
そのため、ささいな物音が気になってしまうのです。
患者様のAさんは、
「物音が気になって、気になって、癇に障ってイライラするんです」
と話されます。
今まで、マンション上階の部屋の物音が気になって、何度も引っ越しを繰り返してきました。
「騒音のために眠れない」ことで疲労が積み重なり、さらに物音が気になるという、悪循環に入ってしまい、ほとほと困って病院を受診したところ、向精神薬を処方されました。
ところが全く効果がなく、私のクリニックを受診されたのです。
低血糖がみられたため、低血糖対策を行ったところ、物音が気にならなくなっただけでなく、体調がよくなったと言われます。
「疲れているのが自分の通常の状態だと思い込んでいたんです。
体調がよくなったことで、以前の自分は相当疲れていたんだなと気づきました」
食事に気を付けるようになってからは、疲れがとれ、ささいなことにイライラしなくなったそうです。
光がまぶしい
次は、「太陽の光や、照明の灯りを眩しく感じる」についてお話ししていきましょう。
目に入る光の量を調節しているのは瞳孔です。
瞳孔を開くと、光を取り入れ、光がまぶしいと感じたら、瞳孔を閉じ、入ってくる光の量を調整します。
ところが、瞳孔を閉じる筋肉がうまく働かないと、必要以上の光が目に入り込み、まぶしさを感じるのです。
低血糖でエネルギー不足の状態では、瞳孔を閉じる筋肉の動きが鈍り、瞳孔を閉じておくことができないため、まぶしく感じます。
光がまぶしくてつらいときは、照明の明るさを落とし、サングラスをかけるなどして、目から入る光の量を減らす工夫をしてみるとよいでしょう。
患者様のBさんは、サングラスをかけたまま診察室に入ってこられました。
「部屋の中でもサングラスを外すことができなくて、サングラスのままで、すいません」
「はじめは太陽の光がまぶしくて、サングラスをかけるようになったのですが、そのうち、部屋の灯りでさえ眩しく感じるようになって、部屋の中でもサングラスを手放せなくなりました」
Bさんにも低血糖対策を取り入れていただいたところ、
「昨年の夏と比べて、眩しさがマシになっていて驚いています。
目がまぶしいことと、血糖が関係するなんてびっくりです。
食事って大切だなと思いました」
次項からは、血糖を安定させる「低血糖対策」について解説していきましょう。