男女間トラブル事件簿その11~死亡した内縁の夫名義の家に内縁の妻は住み続けることができるか
ストーカー被害に遭っていた女性が、加害者により殺害されるという最悪の事態へと発展してしまう事件が続いています。
ストーカー規制法はどのような内容になっているのか、また、ストーカー被害に遭ってしまったら、どうすればよいのでしょうか。
「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」は、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏を守ることを目的として、脅迫罪など既存の犯罪ではとらえることができなかった、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生へと発展するおそれが高い行為を「つきまとい等」として規制し、さらにこの「つきまとい等」を同一人物に対して繰り返して行うことを「ストーカー行為」として規制しています。
しかしながら、「つきまとい等」を1度行っただけでは、警察などから警告を受けるのみで、処罰はされません。
「つきまとい等」を繰り返し行ってはじめて「ストーカー行為」となり、処罰の対象となるのです。
いいかえれば、逮捕してもらうためには、かなり反復継続して被害に遭わなければならないわけです。
警察などからの警告によって、加害行為が止まればよいですが、警告を受けたにもかかわらず、あるいは警告を受けたがためにかえって加害者が行き詰まり、冒頭で述べたような最悪の事態にまで加害行為がエスカレートするケースもあり、場合によっては、警察によるさらに強力な介入や、被害者の保護が必要になることもあります。
この点について、近時、警察の対応にようやく変化があり、平成25年12月6日付警察庁通達にて「警告等の行政措置が犯行を阻止するのに十分な有効性を持たない場合もあることから(中略)被害者に対する脅迫文言等を捉えて速やかに検挙するなど、被害者等に危害が加えられる危険性・切迫性に応じて第一義的に検挙措置による加害行為の防止を図ること」とし、被害者が「被害の届出をしない場合であっても(中略)必要性が認められ、かつ、客観証拠及び逮捕の理由がある場合には、加害者の逮捕を始めとした強制捜査を行うことを積極的に検討する」として、被害が深刻な事案については、早期の逮捕という手段も辞さないことを表明しました。
あわせて、「被害者等に対しては、まず安全な場所へ速やかに避難させることを最優先に検討し、危害が加えられる危険性・切迫性に応じて、身辺の警戒等の執り得る措置を確実に行うことにより、被害者等の保護の徹底を図る」として、従来より、被害者保護に大きく舵を切った対応へと方針が転換されました。
この通達によって、警察内部における、ストーカー被害対応についての重要度が格上げされ、被害者にとっては、従来よりも警察へ相談しやすい環境になったといえます。
もし、ストーカー被害に遭ってしまい、少しでも身の危険を感じるのであれば、速やかに警察に相談し、必要な保護を求めましょう。
すぐに介入に動いてもらうということでなくても、事前に相談をしておくことで、万々一の際に、警察に迅速な介入や保護をしてもらいやすくなります。
弁護士 中村正彦