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コラム

男女間トラブル事件簿その6~LINE(ライン)やSNSによるストーカー被害に遭ったら

2014年2月21日 公開 / 2021年2月24日更新

テーマ:男女間トラブル事件簿

コラムカテゴリ:法律関連

 スマートフォンの普及に伴い、従来の携帯電話のEメールよりも、LINE(ライン)で友人などと連絡を取り合うことが多くなったという方が随分増えているようです。
 また、Facebook(フェイスブック)などのSNSも当り前のように利用されるようになり、もはや一部の人達のものではなくなってきました。

 平成12年に成立・施行された「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」は、平成25年に一部法改正され、遅まきながら、電子メールを送信する行為も規制の対象となったわけですが、LINEやFacebookなどのSNSを利用して、執拗に書き込みを続ける行為についても、改正ストーカー規制法にいう「電子メールを送信すること」にあたり、規制されるのでしょうか。

 ストーカー規制法では、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で、その特定の者又はその家族などに対して行う、以下の8類型の行為を「つきまとい等」として規定し、規制しています。

① つきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、見張り、押しかけ
② 監視していると告げる行為
③ 面会・交際その他義務なきことの要求
④ 著しく粗野または乱暴な言動
⑤ 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・電子メール
⑥ 汚物などの送付
⑦ 名誉を害する事項を告げる行為
⑧ 性的羞恥心を侵害する事項を告げる行為

 これらのうち、LINE、FacebookなどのSNSが問題となるのは、⑤の「電子メール」に含まれるのかということです。
 この点について、警察庁は、平成25年7月3日付通達において、改正ストーカー規制法における「『電子メール』とは、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)第2条第1号の電子メールと同様」であるとして、「パソコン・携帯電話端末によるEメールのほか、Yahoo!メールやGmailといったウェブメールサービスを利用したもの及びSMS(ショートメールサービス。携帯電話同士で短い文字メッセージを電話番号宛てに送信できるサービス)は含まれるが、Facebookやmixi等におけるメッセージ機能等については、含まれないと解しています。

 では、現在よく使われているLINEはどうなのでしょうか。
 通達においては、LINEについて触れられていません。
 この点については、インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等における、総務省による「電子メール」についての以下の解説から類推できると思われます。

 「電子メール」とは、ストーカー規制法と同様に、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の第2条第1号の電子メールであるとした上で、「電子メールとして定義された2つの通信方式(『その全部又は一部にシンプル・メール・トランスファー・プロトコルが用いられる通信方式(SMTP方式)と、電話番号を送受信のために用いて情報を伝達する通信方式(電話番号方式)』)以外の通信方式を用いるもの、具体的にはフェイスブックやLINEなどのユーザー間でやりとりするメッセージ機能は、『電子メール』ではなく、『ウェブサイト等』に該当」するとしています。
 
 先の警察庁の通達とあわせ考えると、連続したLINEによるメッセージ送信は、ストーカー規制法による「連続した電子メールの送信」という規制の対象外であると解するのが、現時点では妥当なようです。
 しかしながら、LINEによるトラブルが多発している現状からすれば、LINEについても早急に規制の対象とすべきでしょう。
 一部の地方自治体では、迷惑防止条例を改正することによって、LINEやTwitterでのストーカー行為を規制対象にしようという動きもありますが、やはりストーカー規制法自体を法改正し、居住地域に関係なく規制対象となることが望まれます。

 なお、LINEやTwitterによるメッセージ送信は、「電子メールを送信すること」には該当しなくても、その内容が、前記の「つきまとい等」の「② 監視していると告げる行為」、「③ 面会・交際その他義務なきことの要求」、「⑦ 名誉を害する事項を告げる行為」、「⑧ 性的羞恥心を侵害する事項を告げる行為」などに該当する場合には、やはりストーカー規制法の対象となりますから、LINEやTwitterなら全く同法に抵触しないという理解は間違いです。
 さらに、LINEやTwitterでの連絡が、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知するような内容の場合には脅迫罪で罰せられるなど、態様によっては各種の刑法犯にも当然該当します。

 ネット上では、ごく限定された情報やコミュニケーションから相手が一見いい人のように思われても、実像は全然違っていたということは、決して少なくありません。
 ストーカー被害の予防という観点からは、LINEやSNSは、法律が現実に追いつくまで、慎重に、しっかりと自衛して利用することをお勧めします。

【追記】近時の法改正について

 上記記事のとおり、SNSを利用したメッセージの送信が、ストーカー行為の「連続した電子メールの送信」に該当せず、取り締まれないという点は、以前から重大な課題でした。
 平成28年5月には、芸能活動を行っていた当時20歳の大学生の女性に対し、ファンを自称する男がTwitterなどのSNS上でのストーカー的行為を繰り返した後、東京都小金井市内のライブハウスにて、ナイフで刺殺しようとし重体に陥らせた殺人未遂事件が発生しました。
 被害女性は「Twitterに男から執拗な書き込みをされている」と警視庁に相談していましたが、結果的に警察は、この刺傷事件の発生を防止できませんでした。
 これには、前述のような法規制の不十分さが背景にあったとも指摘されています。

 このような事態を受けて、平成28年12月の国会で、ストーカー規制法の改正が行われました。
 この改正では、恋愛感情等の充足目的で、以下の行為を行った場合も「つきまとい等」に該当するものとされ、規制対象行為が拡大しました。

(1)住居等の付近をみだりにうろつくこと
(2)拒まれたにもかかわらず、連続して、
   ① SNSを用いたメッセージ送信等を行うこと
   ② ブログ、SNS等の個人のページにコメント等を送ること

 また、今回の改正では、罰則についても、ストーカー行為を懲役1年以下または100万円以下の罰金に(従前は6月以下の懲役または50万円以下の罰金)、禁止命令に違反してのストーカー行為も懲役2年以下または200万円以下の罰金に(従前は1年以下の懲役または100万円以下の罰金)、それぞれ従来の法定刑を2倍に引き上げるなどの強化が図られ、また、同法による処罰については、従前、「親告罪規定」があり、被害者の告訴がなければ起訴することができませんでしたが、この規定を撤廃し、被害者の告訴がなくとも起訴することができることとするなどの点も盛り込まれました(以上の改正については、平成29年1月3日から施行もされています)。

 加えて、今回の改正においては、規制対象の行為を行った加害者に対して、各地の公安委員会が発令する禁止命令についても、状況に応じて迅速かつ効果的に対応できるよう手続の緩和が図られ、「警察による警告」という段階を経ずに発令できるようになり、また、公安委員会で独自に出すのみならず、警察本部長や警察署長に委任して行わせることも可能になりました(この改正点については、改正法公布の6カ月後である平成29年6月14日の施行になります)。

                                  平成29年2月21日

                                  弁護士 中村正彦

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