MASパートナーズ診療所経営ウイークリーレポート 10月10日号

原聡彦

原聡彦

テーマ:診療報酬・医療行政・労務・事業承継の動向

今週は、10月1日に施行された労務・社会保険制度の変更が中心です。

今週の最重要ポイント
1. カスタマーハラスメント対策が全診療所に義務化
患者・家族から職員を守る方針、相談窓口、発生時の対応手順などの整備が必要です。

2. 短時間労働者の社会保険「月額8万8,000円以上」の要件を撤廃
51人以上の事業所などでは、週20時間以上であれば賃金額にかかわらず加入対象となり得ます。

3. 近畿厚生局が診療報酬返還書類の作成支援ツールを公開
個別指導・適時調査後の返還実務がExcelツールで標準化されました。

1.カスタマーハラスメント対策が事業主の義務に
■何が変わったか
2026年10月1日から、患者・家族などによるカスタマーハラスメントについて、事業主が防止措置を講じることが義務化されました。同時に、採用面接やインターンシップ等における「求職者等セクシュアルハラスメント」対策も義務化されています。
厚生労働省の指針では、主に次の対応が求められています。
- 職員をカスハラから守る方針の明確化と周知
- カスハラの定義、判断基準、対応方法の明示
- 職員が利用できる相談窓口の設置
- 事実関係の迅速・正確な確認
- 被害職員への配慮、行為者への対応、再発防止
- 相談者のプライバシー保護
- 相談を理由とした不利益取扱いの禁止
厚生労働省・ハラスメント防止対策 mhlw.go.jp

■診療所経営への影響
単に院内掲示で「迷惑行為お断り」と表示するだけでは足りません。職員から相談を受ける体制や、暴言、長時間の拘束、不合理な謝罪要求、SNSへの投稿をほのめかす行為などへの対応手順が必要です。
一方で、正当な診療上の苦情や、障害のある患者への合理的配慮までカスハラとして排除しないよう注意が必要です。

2.短時間労働者の社会保険「賃金要件」を撤廃
■2026年10月1日、短時間労働者の健康保険・厚生年金加入要件のうち、所定内賃金月額8万8,000円以上という賃金要件が撤廃されました。
現在の主な加入要件は次のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 厚生年金被保険者数が51人以上の企業等、または任意特定適用事業所
- 学生ではないこと
最低賃金の減額特例許可を受け、月額8万8,000円未満となる一定の労働者は、原則として対象外です。

■診療所経営への影響
一般的な単独診療所では51人要件を満たさないケースが多いため、すべての診療所に直ちに適用されるわけではありません。
ただし、複数診療所を運営する医療法人では、法人全体の厚生年金被保険者数で判定されるため注意が必要です。新たに加入対象者が出れば、本人手取りと法人負担の双方に影響します。

3.近畿厚生局が診療報酬返還書類の作成ツールを公開
■何が変わったか
近畿厚生局は10月1日、個別指導や適時調査等で不適切な請求が判明した場合に使用する、Excel形式の「返還同意書等作成支援ツール」を公開しました。
医療機関・薬局用はVer.1.11で、返還方法として今後の診療報酬からの控除を希望する場合の留意事項も掲載されています。使用時は、各府県事務所担当者の指示に従う必要があります。
近畿厚生局・診療報酬の返還手続き kouseikyoku.mhlw.go.jp

■診療所経営への影響
返還対象患者や返還額が多い場合の集計作業が標準化されます。ただし、ツールの公開によって返還判断や対象範囲が変わるものではありません。
クライアントへの具体的な助言
返還指示を受けた場合は、自己判断で旧様式を使用せず、担当官に対象期間、対象患者、返還項目、使用するツールの版を確認してください。返還額が大きい場合は、診療報酬からの控除による資金繰りへの影響も試算します。

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原聡彦
専門家

原聡彦(医業経営コンサルタント)

合同会社 MASパートナーズ

院外事務長(事務長代行)、院長夫人コーチング、医療法人運営サポート、医院開業支援など、院長先生の経営のブレーンとして財務と人事の面から健全経営を継続できる環境づくりをサポートいたします。

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