その節税対策は本当に有利なのか?医療法人編vol.62

原聡彦

原聡彦

テーマ:医療経営の処方箋

2011年の税制改正では、法人税率が下がりました。今後も高額所得者は増税となる方向で考えられています(所得税の税率アップなど)。

高額納税者の税金の負担についてはますます重くなり、個人診療所の院長、院長夫人の節税ニーズは高まってくるなか、税理士の先生や会計事務所の担当者から医療法人設立の提案がある事と思います。

医療法人設立は一度、法人になってしまえば、よほどの理由がない限りやめる事はできませんし、法人設立後、「そんな事があったのか?」という事があっても取り返しがつきません。当事者は知らなかったではすまされないので慎重にご検討頂きたいと思います。

たしかに節税ニーズのある個人診療所の顧問先に医療法人設立を提案するのはクライアントにとっても会計事務所にとっても利点があるかもしれませんが、その中には必ずデメリットも潜んでいる事を知って頂きたいのです。

本日は、節税対策として医療法人の設立を提案された場合、デメリットを把握でき、その節税がご自身にとって有利かどうかを判断する質問事項をお伝えします。

1.節税額はいくらなのか?
まずは基本中の基本です。節税金額はいくらなのか?数字をもって把握すること。税理士の先生や会計事務所の担当者にまず、はじめに確認してください。

2.節税の行方は?
次に節税額の行き先を把握してください。節税した金額すべてが、個人でそのまま使えるわけではありません。法人に残る留保金額、法人設立にともない役員や従業員の社会保険料の法定福利費、家族に支払われる役員報酬の可処分所得、法人設立によって発生するコストなど節税の行方を金額をもって把握してください。

3.家族の可処分所得はいくらか?
法人で留保される金額、役員になっている家族全体の可処分所得の金額を把握してください。役員個人が住宅ローンや教育費などを役員報酬内でやっていけるか?を検討してください。

4.個人事業時代の負債を引き継ぐ事ができるか?
事業の借入金残高があるところは要注意です。借入金が引き継げるのかをよくよく検討してください。特に医療法人においては都道府県庁の認可が必要になります。あらかじめ事前相談しておくべきでしょう。

5.退職金でとった方がご自身にとって有利なのか?
「医療法人であれば引退するときに退職金をとれます。退職金は、給与所得などとちがって1/2の課税ですみます。退職金でとることは税制上、有利です。」というような説明をしてもらえると思います。はたして、ご自身にとってどうなのか?今、役員報酬でとった方がいいのでは?将来的に退職所得課税も税制改正で1/2課税ではなくなるかもしれないなど、よくよく考えてください。

6.医療法人で保険加入して経費におとしながらお金を貯めることができる?
法人で保険加入して節税をしながら将来の退職金などお金を貯める事ができます。個人診療所でも小規模共済で節税しながら準備することもできますが、生命保険を活用することができないので、生命保険に加入できる法人を活用して資産形成するという面では有利になります。

7.相続・事業承継の観点で見てどうか?
後継者が決まっているのであれば、私は医療法人の設立を積極的に提案しています。理由は、診療所の資産を後継者に課税されることなく承継できるなど事業承継においては、有利になるからです。

医療法人設立は単なる節税対策目的だけではなく、7つの質問をもとにして総合的に判断頂くことをお勧めいたします。

ご不明な点、質問事項などございましたら,コラム読者の方であれば、メール等でお答えできる範囲で対応させて頂きます。

以上、最後までお読み頂きありがとうございました。感謝!

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原聡彦(医業経営コンサルタント)

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院外事務長(事務長代行)、院長夫人コーチング、医療法人運営サポート、医院開業支援など、院長先生の経営のブレーンとして財務と人事の面から健全経営を継続できる環境づくりをサポートいたします。

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