クリニックの傘置き場から患者さんの傘がなくなった場合の管理責任は?
税務調査において、院長夫人が社長であるメディカルサービス法人(以下 MS法人)との間において、夫である院長が経営する病医院の建物清掃管理、給食及び事務管理を委託する旨の契約(以下 委託請負契約という)に基づきMS法人に対しその対価としての委託料の額について厳しく取り扱われています。
そこで、今回は病医院とMS法人の業務請負契約について注意するべきポイントをまとめした。
(1)業務請負契約と派遣の違い
派遣と業務請負との根本的な違いは、労働者に対して指揮命令権を行使するのは誰かということです。
派遣については院長に指揮命令権がありますが、業務請負については、MS法人に指揮命令権があります。指揮命令権については形式でなく実態により判断され、労務管理の独立性、業務運営上の独立性を満たしていることが必要です。
従業員の多い病院ならば管理者も複数であり独立した管理の手法も充分可能でありますが、診療所のように少人数の従業員の場合は組織に対する認識が薄く、社長が院長夫人であれば社長としての独立性に細心の注意を払うことが必要です。例えば、MS法人の従業員が病医院のタイムレコーダーを使用して勤務実績を院長に管理されている、又、事務所の賃貸料の支払や電気代、消耗品の無償での使用は、労務管理の独立性を薄める要因になり得ますので注意が必要です。
(2)MS法人の独立性を保つための方策
診療所の労務管理の独立性を保つための方策として下記にまとめましたのでご参考にして頂ければと思います。
1.契約書と実態との差をチェック
契約書がないというのは問題外である。例えば、契約書に「使用する機械・什器・消耗品については両者協議する」となっているのに、協議した形跡がないようでは、どうにも対抗のしようがありませんので、契約書をもう一度、じっくり読み返して頂き形式と実態との差を確認して頂く必要があります。
2.業務請負契約の金額
根拠のある金額を設定する。税務署は業務請負の金額がお手盛りになっていないかをチェックしてきます。根拠のある金額とは第三者との契約すればいくらになるかという観点で検討頂きたい。そして、顧問税理士と相談して決定頂きたいと思います。
3.MS法人の組織図を備える
MS法人の社長の指揮命令権を明確にするために命令系統、職務権限の分かる組織図を備え、組織図どおりの運営を行う。
4.MS法人の従業員の服務規程を備える
MS法人の就業規則を独自で規定し病医院への入場、退場、服装、職場秩序、風紀等の服務規定を備え、従業員に周知徹底する。
病医院とMS法人との業務請負契約については税務調査の際、厳しくチェックされますので、第三者と契約すればどうなるかという観点で見直して頂く事を提案します。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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