スマホを持つ親指が激痛「腱鞘炎」、本当の原因は【手首の角度】と【巻き肩による腕のねじれ】にあった!

東角剛司

東角剛司

テーマ:身体の痛み・不調

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

「スマートフォンの画面をスクロールしようとすると、親指の付け根に電気が走る」

「赤ちゃんを抱っこしたり、フライパンを持ったりする動作が恐怖でしかない」

「湿布を貼って安静にしているつもりだけど、少し動かすだけでズキズキ痛む」

そんな、親指から手首にかけての鋭い痛み、「腱鞘炎(けんしょうえん)」、特に親指側に起こる「ドケルバン病」に悩まされていませんか?

かつてはピアニストや作家など、手を酷使する職業病と言われていましたが、現代ではスマホの普及により、誰もがなりうる国民病となっています。

病院に行くと「使いすぎですね、安静にしてください」と言われますが、仕事や家事、育児がある以上、手を使わない生活など不可能です。

では、なぜ同じように手を使っているのに、腱鞘炎になる人とならない人がいるのでしょうか?

その違いは、手の「使用量」ではなく、手を使う時の「手首の角度」と「腕のポジション」にあります。

あなたの痛みは、筋肉が疲れているのではなく、骨と腱が物理的にこすれ合い、摩擦熱で炎症を起こしている「火事」の状態です。

今回は、サポーターで固める前に知っておくべき、腱鞘炎が起きる生理学的なメカニズム、特に見過ごされがちな【尺屈(しゃっくつ)という危険な角度】と【巻き肩による前腕のねじれ】に焦点を当て、摩擦をゼロにするための「知識」について、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

手首の中で何が起きている?「刀と鞘」の関係


まず、痛みの現場である手首の構造を理解しましょう。

手首には、指を動かすための紐である「腱(けん)」が通っています。そして、その腱がバラバラにならないように束ねているトンネル、「腱鞘(けんしょう)」があります。

イメージとしては、「刀(腱)」と「鞘(腱鞘)」の関係です。

正常な状態では、刀は鞘の中をスムーズに出し入れできます。

しかし、刀を出し入れする角度が悪かったり、鞘が腫れて狭くなったりすると、刀と鞘が激しくこすれ合います。

腱鞘炎とは、この摩擦によって鞘(トンネル)の内側が傷つき、腫れ上がってしまい、腱がスムーズに通れなくなっている状態です。

腫れたトンネルの中を、無理やり腱を通そうとするたびに、強い摩擦が生じて激痛が走るのです。

摩擦を生み出す、2つの物理的要因


では、なぜスムーズだったはずのトンネルで、摩擦が起きてしまうのでしょうか。

そこには、現代人特有の「持ち方」と「姿勢」の問題があります。

1.腱を壁に押し付ける「尺屈(しゃっくつ)」という角度


これが、スマホユーザーや育児中の方にドケルバン病が多発する、最大の物理的要因です。

あなたのスマホの持ち方を確認してみてください。

片手で持ち、小指でスマホの下を支えていませんか?

この時、手首は小指側へと大きく曲がっています。この角度を専門用語で「尺屈(しゃっくつ)」と呼びます。

親指を伸ばす腱は、手首の親指側を通っています。

手首を小指側に曲げた(尺屈した)状態で親指を動かすということは、トンネルの壁に腱を強く押し付けながら、無理やりこすり合わせているのと同じことなのです。

赤ちゃんの抱っこも同様です。

脇を締めず、手首だけで頭を支えようとすると、手首が小指側に折れ曲がり、強烈な摩擦が発生します。

「使いすぎ」以前に、この「角度」で使っていること自体が、炎症を引き起こす火種となっているのです。

2.腱を常に引っ張る「巻き肩と腕のねじれ」


もう一つの要因は、手首よりも上、肩と腕の位置関係にあります。

腱鞘炎になりやすい人の多くは、ひどい「巻き肩(猫背)」になっています。

肩が内側に入ると(巻き肩)、腕全体も内側にねじれます。

腕が内側にねじれると、前腕(肘から手首)にある筋肉や腱は、雑巾を絞った時のように常にピーンと張り詰めた状態になります。

腱が張り詰めているということは、すでに手首のトンネル内での圧力が高まっているということです。

この「遊び(余裕)」がない状態で指を動かせば、当然、摩擦は大きくなります。

手首が痛いからといって手首だけをケアしても治らないのは、根本にある「肩からのねじれ」が解消されていないため、常に腱が引っ張られ続けているからなのです。

摩擦をゼロにする!手首を守るための「使い方の知識」


腫れ上がったトンネルを治すには、炎症を抑え、これ以上の摩擦を起こさない「使い方」に変えるしかありません。

1.小指で支えない「スマホの持ち方改革」


最も摩擦を生む「尺屈」を防ぐための知識です。

スマホを持つ時、「小指で下を支える」のを今すぐやめましょう。

スマホは、手のひら全体で包み込むように持つか、反対の手を添えて両手で操作するのが鉄則です。

また、スマホリングなどのアクセサリーを使い、指への負担を分散させるのも有効です。

「手首がまっすぐな状態で親指を動かす」限り、摩擦はほとんど起きません。自分の手首が「くの字」に曲がっていないか、常にチェックする習慣をつけてください。

2.抱っこやフライパンは「脇を締める」


重いものを持つ時の物理学です。

脇が開くと、手首だけで重さを支えることになり、手首に変な角度がつきます。

何かを持つ時は、必ず「脇を締める」ことを意識してください。

脇を締めると、重さを手首だけでなく、腕全体や体幹で支えることができます。これにより、手首が固定され、腱への負担が激減します。

フライパンを振る時も、手首のスナップではなく、腕全体を前後に動かすようにすると、痛みが出にくくなります。

3.炎症期は「冷やす」、慢性期は「温める」


対処法の基本知識です。

・ズキズキ痛む、熱を持っている(急性期):氷嚢などでアイシングをして、炎症(火事)を鎮火させます。

・動かしにくい、重だるい(慢性期):お風呂などで温めて、血流を良くし、組織の修復を促します。

多くの腱鞘炎は、冷やすべき時に温めてしまったり、その逆をしてしまったりして長引いています。

「熱感があるかどうか」を基準に、正しい温度管理を行いましょう。

まとめ:腱鞘炎は「角度のエラー」。真っ直ぐ使えば痛みは消える


さて、今回は「スマホを持つ親指が激痛『腱鞘炎』、本当の原因は【手首の角度】と【巻き肩による腕のねじれ】にあった!」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

あなたの親指を襲う激痛が、単なる使いすぎではなく、手首を小指側に曲げたまま使う「尺屈」という角度と、巻き肩による「腕のねじれ」が生んだ、物理的な摩擦の結果であることをご理解いただけたかと思います。

その痛みは、あなたの体が「トンネルの中で腱がこすれています!」「角度を真っ直ぐに戻して!」と警告しているサインなのです。

では、今日のポイントをまとめます。

  • ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)は、親指の腱と、それを包むトンネル(腱鞘)がこすれ合って炎症を起こしている状態である。
  • 最大の要因は、スマホを小指で支えるなどして手首が小指側に曲がる「尺屈」という角度で、親指を酷使することにある。
  • 「巻き肩」による腕のねじれは、腱を常に張り詰めさせ、摩擦を悪化させる隠れた要因である。
  • 対策として、スマホの持ち方を変えて手首を真っ直ぐ保つこと、脇を締めて動作を行うことが、摩擦をゼロにし、回復を早めるための鍵となる。


手は、私たちの生活を支える大切な道具です。

道具も、間違った角度で使い続ければ壊れてしまいます。

「痛いな」と思ったら、まずは手首の角度を見てみてください。

その角度を少し修正するだけで、あなたの手は驚くほど楽になり、またスムーズに動いてくれるはずです。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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