顎関節症の悩み|「カクカク音」「口が開かない」原因とセルフケア
みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。
「大きなハンバーガーを食べようとしたら、顎がバキッと鳴って痛みが走った」
「口を開け閉めするたびに、カクカク、ジャリジャリと変な音がする」
「朝起きると、顎が疲れていて口がスムーズに開かない」
そんな、食事や会話という日常の楽しみを奪う、不快な顎のトラブル「顎関節症」に悩まされていませんか?
「顎が痛いから虫歯かな?」と思って歯科医院に行っても、「歯には異常ありません」「マウスピースを作りましょう」と言われるだけで、根本的な解決に至らず、不安を感じている方も少なくありません。
実は、顎の不調の多くは、歯そのものではなく、顎を動かす「筋肉」と、顎関節の「構造的なズレ」によって引き起こされています。
そして、そのズレを作っているのは、あなたが無意識に行っている「ある偏った習慣」である可能性が非常に高いのです。
今回は、マウスピースで保護するその前に知っておくべき、顎関節症の生理学的なメカニズム、特に見過ごされがちな【片側咀嚼(へんそくそしゃく)の癖】と【舌(した)の正しい位置】に焦点を当て、自分の力で顎のバランスを整えるための「知識」について、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。
顎の中で一体何が起きているのか?「カクカク音」の正体
まず、あの不快な「カクッ」という音や痛みが、なぜ発生するのか、そのメカニズムを知っておきましょう。
顎の関節は、耳のすぐ前にあり、下顎の骨(下顎頭)が、頭蓋骨のくぼみにはまり込むような構造をしています。
この骨と骨の間には、クッションの役割をする「関節円板(かんせつえんばん)」という軟骨組織が挟まっています。
正常な動きでは、口を開ける時、このクッション(関節円板)が骨と一緒にスムーズに前にスライドします。
しかし、顎周りの筋肉のバランスが崩れ、関節に無理な力がかかり続けると、このクッションが前方にズレて引っかかってしまいます。
口を開けようとした時に、ズレて邪魔になっているクッションを、下顎の骨が「バキッ」と無理やり乗り越える瞬間。これがあの音と痛みの正体です。
つまり、顎関節症とは、顎の蝶番(ちょうつがい)の中で、クッションの部品がズレて挟まっている故障状態なのです。
あなたの顎をズレさせる、2つの生活習慣
では、なぜクッションがズレてしまうほどの負荷がかかるのでしょうか。
その原因は、毎日の食事と、安静時の口の中の状態にあります。
1.筋肉のバランスを崩壊させる「片噛み(偏側咀嚼)」
これが、顎の軌道を歪ませる最大の物理的な原因です。
あなたは食事の時、無意識に右か左、決まった方ばかりで噛んでいませんか?
虫歯の治療痕がある、噛み合わせがしっくりくる、などの理由で「片噛み」が癖になっている方は非常に多いです。
顎を動かす筋肉(咬筋や側頭筋)は、片方だけで噛み続けると、よく使う側だけが筋トレをしたように太く短く発達し、使わない側は弱く細くなります。
この左右の筋肉のアンバランスが生まれると、口を開閉するたびに、強い方の筋肉に顎が引っ張られ、軌道が斜めに歪んでしまいます。
毎日3食、何千回という咀嚼運動の中で、顎が常に斜めに引っ張られ続ければ、中のクッション(関節円板)が耐えきれずにズレてしまうのは当然の結果と言えます。
2.顎を緊張させ続ける「舌の落ち込み(低位舌)」
「舌(した)」の位置なんて気にしたことがない、という方がほとんどでしょう。
しかし、顎関節症を改善する上で、舌の位置は極めて重要です。
本来、リラックスしている時の正しい舌の位置は、「舌先が上の前歯の裏に触れず、舌全体が上顎(口の天井)にべったりと吸い付いている状態」です。
これによって、舌の筋肉が頭を内側から支え、顎の筋肉はリラックスできます。
しかし、口呼吸や猫背姿勢などが原因で、舌の筋力が低下すると、舌が下顎の中にダランと落ち込んでしまいます(低位舌)。
舌が下がると、下顎は支えを失い、不安定になります。すると体は、顎がグラグラしないように、無意識に奥歯を噛み締めたり、顎周りの筋肉を緊張させて固定しようとします。
この「無意識の緊張」が、関節内部への圧力を高め、クッションを押し潰してしまう原因となるのです。
マウスピースに頼らない!顎を守るための「使い方の知識」
ズレた顎を治すには、筋肉のバランスを整え、顎にかかる負担を減らす「正しい使い方」を体に覚えさせる必要があります。
1.左右差をなくす「ガム・トレーニング」の意識
片噛みの癖を治すには、意識的なリハビリが必要です。
食事中に意識するのは難しい場合、ガムを使った練習が有効です。
粒ガムなどを噛む際、あえて「普段噛んでいない方」で噛む時間を増やしてみましょう。
また、左右交互にリズミカルに噛む練習をすることで、脳に「両方使うのが当たり前」という感覚を再教育します。
ただし、痛みがある時に無理に硬いものを噛むのは逆効果ですので、痛みのない範囲で行うことが重要です。
2.顎を休ませる魔法の言葉「TCH(歯列接触癖)の遮断」
顎関節症の方の多くに見られるのが、TCH(Tooth Contacting Habit)と呼ばれる、何もしていない時でも上下の歯が触れ合っている癖です。
本来、食事や会話以外の時間、上下の歯は数ミリ離れているのが正常であり、接触しているだけで顎の筋肉には大きな負担がかかります。
ふとした瞬間に、「あ、今、歯が当たっているな」と気づいたら、すぐに歯を離してください。
これを習慣化するために、「唇は閉じて、歯は離す」というスローガンを目に見えるところに貼っておくのも有効です。
歯を離すだけで、顎の筋肉への血流が一気に回復し、関節への圧力が激減します。
3.舌を天井に貼り付ける「N(エヌ)の発音」
落ち込んだ舌を正しい位置(スポット)に戻すための知識です。
英語の「No(ノー)」や日本語の「な・に・ぬ・ね・の」と言う時の、舌の動きを思い出してください。
舌先が上顎の歯茎のあたりに触れるはずです。
口を閉じている時は、常にその位置(Nの発音の位置)に舌をキープし、舌全体を上顎に吸い付けておくように意識します。
舌が上にあると、構造上、食いしばることが難しくなり、自然と顎がリラックスできるポジションに収まります。
まとめ:顎の痛みは「噛み方」と「舌の位置」を見直すサイン
さて、今回は「口を開けると痛い・鳴る『顎関節症』、本当の原因は【片噛みの癖】と【舌の落ち込み】にあった!」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?
あなたの食事や会話を邪魔していた顎の不調が、単なる歯の問題ではなく、左右不均等な「筋肉の使い方」と、舌の位置による「構造的な負担」が引き起こした結果であることを、ご理解いただけたかと思います。
その音や痛みは、あなたの体が「片方ばかり使いすぎだよ!」「無意識に力が入っているよ!」と教えてくれている、大切な警告サインなのです。
では、今日のポイントをまとめます。
- 顎関節症の多くは、関節内のクッション(関節円板)が、筋肉のアンバランスによってズレることで発生する。
- 最大の原因は「片噛み」の癖であり、左右の筋力差が顎の軌道を歪ませている。
- 「舌の位置」が下がっていると、顎を安定させるために無意識の食いしばり(TCH)が起こり、関節への負担が増大する。
- 改善には、苦手な側で噛む意識を持つこと、上下の歯を離す意識(TCHの是正)、そして舌を常に上顎につけておく習慣づけが、根本的な解決策となる。
私たちは、一日に何度も食事をし、言葉を話します。
そのたびに顎は働いてくれています。
道具も使い方が悪ければすぐに壊れてしまうように、顎も正しい使い方をしてあげなければ悲鳴を上げます。
まずは次の食事から、左右均等に噛むことを少し意識し、ふとした時に歯を離してリラックスする時間を作ってみてください。
その小さな積み重ねが、美味しく食べ、楽しく笑える、快適な毎日を取り戻す鍵となるはずです。
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