【フォームローラーの使い方】プロが教える効果的な筋膜リリース
みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。
「移乗介助や入浴介助で、毎日腰が痛くてたまらない…」
介護労働安定センターの調査によると、介護の仕事をしている方のうち、実に6割以上が自身の仕事が原因と思われる腰痛を経験しているというデータがあります。
介護職の腰痛は、個人の問題だけでなく、介護業界全体が抱える深刻な課題です。
「腰痛は介護職の宿命だ」と諦めて、痛み止めの薬や湿布でごまかしながら、毎日を乗り切っていませんか?
しかし、正しい知識と技術を身につけ、日々のセルフケアを徹底することで、そのつらい腰痛のリスクを大幅に減らし、あなた自身の体を守りながら、長くこの仕事を続けていくことは十分に可能です。
今回は、そんな介護職の腰痛を防ぐための鍵となる「ボディメカニクス」の原則と、ご自身でできる効果的なセルフケアについて、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。
なぜ介護職は腰痛になりやすいの?その「3つの大きな理由」
まず、なぜ介護の現場では、これほどまでに腰痛が多発するのでしょうか?
その背景には、主に3つの大きな理由が考えられます。
1.「中腰・前かがみ」姿勢の多さ
ベッドでの体位変換、おむつ交換、車椅子への移乗、入浴介助など、介護の仕事には「中腰」や「前かがみ」になる動作が非常に多いのが特徴です。
人間の頭と腕の重さは、合わせると体重の約15%にもなります。
ただ前かがみになるだけでも、腰には大きな負担がかかりますが、そこにさらに利用者さんを支える力が加わるため、腰の筋肉や椎間板には、想像以上のストレスがかかり続けているのです。
2.「ひねり」や「非対称」な動作
ベッドサイドから車椅子へ、といったように、体をひねりながら利用者さんを移動させる動作も、腰を痛める大きな原因となります。
腰椎(腰の骨)は、構造的に回旋(ひねり)の動きに弱く、ひねりが加わることで、椎間板や関節に大きなダメージを与えやすいのです。
また、利用者さんの片側だけを支えるなど、左右非対称な力の使い方も、体のバランスを崩し、腰痛のリスクを高めます。
3.精神的なストレスと筋肉の緊張
介護の仕事は、体力的だけでなく、精神的にも大きな責任と緊張感を伴います。
「利用者さんを転倒させてはいけない」「安全に介助しなければ」といった精神的なストレスは、無意識のうちに全身の筋肉を緊張させ、血行を悪化させます。
この筋肉の過緊張が、腰痛を引き起こしたり、悪化させたりする一因となるのです。
あなたの体を守る!介護技術「ボディメカニクス」の8つの原則
これらの腰痛リスクを軽減するために、介護の現場で必ず知っておくべき技術が「ボディメカニクス」です。
ボディメカニクスとは、人間の体の動きや力の働きに関する力学(メカニクス)を活用し、最小限の力で、安全かつ効率的に介助を行うための技術のこと。
これは、利用者さんの安全を守るためだけでなく、何よりも「介助者自身の体を守る」ために不可欠な知識なのです。
ここでは、ボディメカニクスの8つの基本原則をご紹介します。
原則1:支持基底面積(しじきていめんせき)を広くする
両足を肩幅程度に開き、前後にも少し開くことで、体を支える面積(支持基底面積)が広くなり、安定性が増します。
ふらつきを防ぎ、どっしりと構えるための基本です。
原則2:重心を低くする
腰を落とし、膝を曲げることで、体の重心が低くなり、安定性がさらに高まります。
腰を曲げるのではなく、膝を曲げる「スクワット」の動きを意識しましょう。
原則3:利用者と自分の体を近づける
「てこの原理」を思い出してください。
支点から作用点までの距離が短いほど、小さな力で物を動かせますよね。
利用者さんとの距離が離れていると、腕の力だけで支えることになり、腰に大きな負担がかかります。できるだけ体を密着させましょう。
原則4:大きな筋群(大筋群)を使う
腕や背中といった小さな筋肉ではなく、太ももやお尻、腹筋といった、体の中心にある大きな筋肉(大筋群)を意識して使うことで、パワフルかつ安定した介助ができます。
「腰で持ち上げる」のではなく、「脚で持ち上げる」という意識が重要です。
原則5:体を「ひねらない」
前述の通り、腰をひねる動作は非常に危険です。
方向転換する際は、腰だけをひねるのではなく、足先から体全体を一体として、移動したい方向に向けるようにしましょう。
原則6:水平に移動させる
利用者さんを持ち上げる動作は、重力に逆らうため、最も力が必要となり、腰への負担も最大になります。
できるだけ持ち上げず、ベッドから車椅子へなど、水平方向にスライドさせるように移動させることを考えましょう。スライディングボードなどの福祉用具を活用するのも有効です。
原則7:利用者さんの体を小さくまとめる
利用者さんの手足を体の中心に近づけ、体を小さくまとめてもらうことで、介助する際の抵抗が減り、力の分散を防ぐことができます。
例えば、移乗の際には腕を胸の前で組んでもらう、などです。
原則8:利用者さんの能力を最大限に活用する
介助者が全てをやってしまうのではなく、利用者さんに残っている能力(残存能力)を最大限に引き出し、協力してもらうことも大切です。
「ここに捕まってくださいね」「お尻を少し上げられますか?」といった声かけを通じて、共同で動作を行うことで、介助者の負担は大きく軽減されます。
これらの原則を、一つ一つの介助動作の前に意識する癖をつけるだけで、あなたの腰への負担は劇的に変わるはずです。
仕事の後に実践!疲労をリセットする「簡単セルフケア」
ボディメカニクスを実践しても、介護の仕事は体に負担がかかるものです。一日の終わりに、その日の疲労をリセットするためのセルフケアを習慣にしましょう。
ケア1:腰周りの筋肉をほぐすストレッチ
膝抱えストレッチ:
仰向けに寝て、両膝をゆっくりと胸に引き寄せ、抱え込みます。
腰からお尻にかけての筋肉がじわーっと伸びるのを感じながら、深呼吸を繰り返します。
お尻のストレッチ:
椅子に座って片方の足首を反対の膝に乗せ、背筋を伸ばしたまま体を前に倒し、お尻の筋肉(梨状筋など)を伸ばします。
ケア2:股関節の柔軟性を高めるストレッチ
股関節が硬いと、その動きを腰が代償してしまい、腰痛の原因になります。
四股(しこ)踏みストレッチ:
足を肩幅より広く開き、つま先を外側に向けます。ゆっくりと腰を落とし、両手を膝の内側に置いて、股関節を開くようにストレッチします。
ケア3:体を温め、血行を促進する
シャワーだけで済ませず、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かり、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進しましょう。
ケア4:腹筋(インナーマッスル)を鍛える
「天然のコルセット」である腹筋を鍛えることは、腰椎を安定させ、腰痛予防に繋がります。
仰向けで膝を立て、お腹をへこませる「ドローイン」は、安全かつ効果的にインナーマッスルを鍛えることができます。
まとめ:自分をケアすることも、良い介護の第一歩
さて、今回は「【介護職の方へ】腰痛を防ぐための【ボディメカニクス】とセルフケア」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?
介護職の腰痛は、決して「宿命」ではありません。正しい知識と技術、そして日々のセルフケアによって、そのリスクをコントロールし、自分自身の体を守ることができるのです。
そして、介助者自身が心身ともに健康であることが、結果として、利用者さんへのより良いケアに繋がるのではないでしょうか。
では、今日のポイントをまとめます。
- 介護職の腰痛の主な原因は、「中腰・前かがみ姿勢」、「ひねりや非対称な動作」、「精神的なストレスと筋肉の緊張」である。
- 腰痛を防ぐためには、最小限の力で安全に介助を行う技術「ボディメカニクス」の習得が不可欠である。
- ボディメカニクスの基本原則は、支持基底面積を広くし、重心を低くし、対象と体を近づけ、大きな筋群を使い、体をひねらず、水平に移動させ、対象を小さくまとめ、相手の能力を活用すること。
- 一日の疲労をリセットするセルフケアとして、腰周りや股関節のストレッチ、入浴による血行促進、そして腰を安定させるインナーマッスルのトレーニングが有効である。
介護という仕事は、本当に素晴らしい仕事です。その仕事を、痛みや不安なく、長く続けていくためにも、まずはご自身の体を大切にしてください。
もし、セルフケアだけでは改善しない慢性的な腰痛や、体の歪みが気になる場合は、体の構造を整え、筋肉のバランスを調整するアプローチも非常に有効です。
あなたの「誰かを支えたい」という尊い思いを、今度は私たちが、あなたの体を通して支えさせていただければ幸いです。
こころ鍼灸整骨院



