【産後の尿もれ】骨盤底筋トレーニングの正しいやり方

東角剛司

東角剛司

テーマ:マタニティ関連

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

出産という大仕事を乗り越えたママさんたち。

周りの人にはなかなか相談しにくいけれど、実は多くのママさんが悩んでいるのが、「産後の尿もれ(尿失禁)」です。

「くしゃみや咳をした瞬間に、思わず『あっ!』となってしまう…」

「子供を抱き上げようとしたり、笑ったりした時に、少し漏れてしまうことがある…」

「トイレが近くなったし、我慢するのが難しくなった気がする…」

そんな経験、ありませんか?

産後の尿もれは、決して珍しいことではなく、多くのママさんが経験する症状です。

「私だけかも…」と一人で思い悩む必要は全くありません。

そして、最も重要なのは、「そのうち治るだろう」と放置せず、適切なケアを早い段階から始めることです。

今回は、そんなデリケートな「産後の尿もれ」がなぜ起こるのか、その原因と、改善の鍵となる「骨盤底筋トレーニング」の正しいやり方について、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

なぜ産後は「尿もれ」しやすくなるの?そのメカニズム

まず、なぜ出産を終えると、尿もれが起こりやすくなるのでしょうか?

その最大の原因は、「骨盤底筋(こつばんていきん)」という筋肉のダメージと機能低下にあります。

骨盤底筋とは?

骨盤底筋は、骨盤の底の部分にハンモックのように張り巡らされている筋肉群です。

この筋肉には、

  • 内臓(膀胱、子宮、直腸など)を下から支える
  • 尿道や肛門をキュッと締めて、排泄をコントロールする
  • 体幹を安定させる

といった、非常に重要な役割があります。

妊娠・出産が骨盤底筋に与えるダメージ

女性の体は、妊娠・出産という大きなイベントの中で、この骨盤底筋に多大な負担がかかります。

妊娠中の持続的な負荷:
妊娠期間中、大きくなる子宮や赤ちゃんの重みを、骨盤底筋は約10ヶ月もの間、常に下から支え続けます。
これにより、骨盤底筋は持続的に引き伸ばされ、疲労してしまいます。

出産時の急激なダメージ:
経膣分娩の場合、赤ちゃんが産道を通る際に、骨盤底筋は極限まで引き伸ばされ、時には筋肉の一部が断裂したり、神経が傷ついたりすることもあります。
これは、元気な赤ちゃんを産むために避けられない、いわば「名誉の負傷」とも言えます。

ダメージを受けた骨盤底筋が「尿もれ」を引き起こす

このように、妊娠・出産によってダメージを受け、緩んでしまった骨盤底筋は、本来の働きを十分に果たせなくなります。

特に、尿道を締める「蛇口」としての機能が低下してしまうため、お腹に力が入る(腹圧がかかる)動作をした時に、自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうのです。

  • くしゃみ、咳
  • 笑う、大声を出す
  • 重いものを持つ、赤ちゃんを抱き上げる
  • 走る、ジャンプする


これらの動作で起こる尿もれは、「腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)」と呼ばれ、産後の尿もれの最も一般的なタイプです。

「尿もれ」だけじゃない!骨盤底筋の機能低下が招く他のトラブル

骨盤底筋の機能低下は、尿もれ以外にも、様々な産後の不調を引き起こす可能性があります。

ぽっこりお腹・体型崩れ:
内臓を支える力が弱まり、内臓が下垂(下がる)することで、下腹部がぽっこり出てしまう原因になります。

腰痛:
体幹を安定させる機能が低下するため、腰に負担がかかりやすくなります。

骨盤の歪みの定着:
出産で開いた骨盤が、元に戻りにくくなります。

頻尿:
膀胱が過敏になったり、十分に支えられなくなったりして、トイレが近くなることがあります。

骨盤臓器脱:
症状が進行すると、子宮や膀胱などが膣から出てきてしまう「骨盤臓器脱」に繋がるリスクもあります。

産後の骨盤底筋ケアは、尿もれの改善だけでなく、産後の体全体の回復と、将来の健康を守る上で非常に重要なのです。

いつから始める?産後の骨盤底筋トレーニングの「正しいやり方」

産後の尿もれ改善の鍵となるのが、「骨盤底筋トレーニング」です。

「ケーゲル体操」とも呼ばれ、緩んでしまった骨盤底筋の筋力と機能を取り戻すことを目的とします。

トレーニングを始める時期の目安

産後、体調が落ち着いてきたら、できるだけ早く始めるのが効果的です。

経膣分娩の場合:
産後すぐ(入院中)からでも、体に痛みや違和感がなければ、ごく軽いものから始めることができます。本格的なトレーニングは、産後1ヶ月検診で医師の許可を得てからが良いでしょう。

帝王切開の場合:
傷の痛みが落ち着いてからになります。こちらも、産後1ヶ月検診で医師に相談し、許可を得てから始めるようにしてください。

最も重要!「骨盤底筋を締める」感覚を掴む

骨盤底筋トレーニングで最も難しく、そして最も重要なのが、「どこの筋肉を使っているのか」を正しく意識することです。

骨盤底筋は、体の奥にあって目に見えないため、意識するのが難しい筋肉です。


まずは、以下の方法で感覚を掴んでみましょう。

トイレで排尿している途中で、意識しておしっこを「ストップ」してみてください。

この時に使われる筋肉が、骨盤底筋の一部です。(※この方法は、感覚を掴むためのもので、頻繁に行うと排尿障害の原因になる可能性があるので、練習は1~2回程度にしてください)

仰向けに寝て膝を立て、リラックスします。

「膣と肛門を、体の内側に優しく引き上げる」ようなイメージで、キュッと力を入れてみましょう。

ティッシュを膣で吸い上げるような、エレベーターを1階から2階へ引き上げるようなイメージも良いでしょう。

この時、お腹やお尻、太ももの筋肉に力が入ってしまわないように注意してください。

あくまで、体の奥深くの筋肉だけを、優しく使う感覚です。

基本の骨盤底筋トレーニング

感覚が掴めたら、いよいよトレーニングです。

最初は仰向けの姿勢が最も意識しやすいでしょう。

仰向けに寝て、両膝を軽く立てます。

体はリラックスさせ、腰が反らないように注意します。

ゆっくりと息を吐きながら、骨盤底筋をキュッと締めます。(膣と肛門を、体の内側に引き上げるイメージ)

そのままの状態で、5~10秒間キープします。

この時、呼吸は止めずに、自然な浅い呼吸を続けましょう。

ゆっくりと息を吸いながら、完全に力を抜いてリラックスします。

締めている時間と同じか、それ以上の時間をかけて、しっかりと緩めることが大切です。

これを10回程度繰り返します。

これを1セットとして、1日に数セット、体調に合わせて行いましょう。

慣れてきたら、他の姿勢でも!

仰向けの姿勢で正しくできるようになったら、座った姿勢や立った姿勢など、日常生活の様々な場面でトレーニングを取り入れてみましょう。

授乳中や、信号待ち、電車の中など、気づいた時にキュッと締める練習をすることで、骨盤底筋を意識する癖がつき、より効果的です。

トレーニングの注意点


痛みがある場合は無理しない。

呼吸を止めない。

お腹やお尻、太ももに余計な力を入れない。

回数よりも「質」を重視する。

正しい筋肉を、正しく使えているかどうかが最も重要です。

効果を実感するには、少なくとも数週間~数ヶ月かかります。焦らず、気長に続けることが成功の鍵です。

まとめ:産後の尿もれは改善できる!正しいケアで自信を取り戻そう

さて、今回は「【産後の尿もれ】骨盤底筋トレーニングの正しいやり方」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

産後の尿もれは、多くのママさんが経験する、決して恥ずかしいことではないということ。そして、その原因である骨盤底筋の機能低下は、適切なトレーニングによって改善できる可能性があることをご理解いただけたかと思います。

では、今日のポイントをまとめます。

  • 産後の尿もれ(腹圧性尿失禁)の主な原因は、妊娠・出産による「骨盤底筋」のダメージと機能低下である。
  • 骨盤底筋の機能低下は、尿もれだけでなく、ぽっこりお腹、腰痛、骨盤の歪みの定着、さらには将来的な骨盤臓器脱のリスクにも繋がる。
  • 産後の尿もれ改善の鍵は「骨盤底筋トレーニング」であり、産後体調が落ち着いたら、できるだけ早く始めるのが効果的である。
  • トレーニングで最も重要なのは、お腹やお尻に力を入れず、「骨盤底筋だけを意識して締める」感覚を正しく掴むこと。
  • 正しいやり方で、焦らず、毎日コツコツと継続することが、改善への一番の近道である。


産後の体は、あなたが思っている以上に、大きな変化とダメージを経験しています。

尿もれという症状は、その体からの「ちゃんとケアしてね」という大切なメッセージです。

もし、トレーニングのやり方がよく分からない、効果が実感できない、あるいは骨盤全体の歪みも気になるという場合は、体の構造を整え、正しい筋肉の使い方を指導することも可能です。

一人で悩まず、自信に満ちた笑顔の毎日を取り戻しましょう。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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