慢性疲労症候群の悩み|【何をしても取れないだるさ】と自律神経ケア

東角剛司

東角剛司

テーマ:ストレッチ・運動

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

「寝ても寝ても、まるで泥のように重い疲労感が抜けない…」

「ちょっと動いただけでも、翌日寝込んでしまうほど疲れてしまう…」

「頭に霧がかかったような感じで、集中できないし、物事も考えられない…」

そんな、日常生活に深刻な支障をきたすほどの、極度な「だるさ」や「疲労感」に、長期間悩まされていませんか?

「怠けているだけだ」「気の持ちようだ」と周りから理解されず、一人で苦しんでいる方もいるかもしれません。

もし、このような普通の疲れとは明らかに違う、原因不明の強い疲労感が6ヶ月以上続いている場合、それはもしかしたら「慢性疲労症候群(CFS:Chronic Fatigue Syndrome)」、医学的には「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」と呼ばれる、専門的な治療が必要な疾患かもしれません。

今回は、まだ社会的な認知度が低いこの「慢性疲労症候群」とは一体どのような病気なのか、その特徴的な症状や原因、そして、つらい症状と上手に付き合っていくためのヒントについて、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

単なる「疲れ」じゃない!「慢性疲労症候群(ME/CFS)」とは?

まず、「慢性疲労症候群(ME/CFS)」とは、どのような病気なのでしょうか?

これは、これまで健康に生活していた人が、ある日突然、原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、それ以降、強度の疲労感と共に様々な症状が長期間(6ヶ月以上)にわたって続く病気です。

その最大の特徴は、「労作後(ろうさご)の増悪(ぞうあく)」と呼ばれる症状です。

これは、身体的、精神的、あるいは感情的な労作(ちょっとした頑張り)の後に、極度の疲労感や症状の悪化が起こり、その状態が24時間以上続くというものです。

例えば、少し散歩しただけで翌日寝込んでしまったり、集中して本を読んだだけで頭痛や倦怠感がひどくなったりします。

この症状が、単なる「慢性疲労」との大きな違いです。

慢性疲労症候群(ME/CFS)の症状は非常に多彩で、人によって現れ方が異なります。

中核症状


日常生活に支障をきたすほどの強い疲労感:休息しても回復しない、これまで経験したことのないような疲労感。

労作後の増悪:上記で説明した、少しの活動で極度に疲労困憊し、症状が悪化する状態。

睡眠障害:ぐっすり眠れない、眠りが浅い、夜中に何度も目が覚める、あるいは逆に長時間寝すぎてしまう(過眠)。そして、最も特徴的なのが「リフレッシュできない睡眠」(寝ても疲れが取れない)。

認知機能障害(ブレインフォグ):頭に霧がかかったようにぼーっとする、集中力や記憶力が低下する、思考がまとまらない。

起立不耐症:立っているだけで気分が悪くなったり、めまいやふらつき、動悸がしたりする。

その他の一般的な症状


痛み:筋肉痛、関節痛(腫れや赤みはない)、頭痛、喉の痛みなど、体のあちこちに痛みを感じる。

インフルエンザ様症状:微熱、悪寒、リンパ節の腫れなど、風邪のような症状が続く。

過敏症:光、音、匂い、化学物質、薬、食べ物などに対して、過敏になることがある。

自律神経症状:めまい、立ちくらみ、吐き気、腹痛、下痢・便秘、体温調節の異常、発汗異常など。

このように、全身にわたる多様な症状が、日や時間帯によって変動しながら、長期間続くのが、この病気の特徴です。

なぜ起こるの?慢性疲労症候群の原因として考えられていること

残念ながら、慢性疲労症候群(ME/CFS)の明確な原因は、まだ完全には解明されていません。

しかし、現在では、一つの原因ではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症するのではないか、と考えられています。

1.感染症の後遺症:

ウイルス(EBウイルス、ヒトヘルペスウイルス6など)や細菌などの感染症にかかったことをきっかけに、発症するケースが多いことが報告されています。

感染症をきっかけに、免疫システムに何らかの異常が残り、慢性的な炎症や神経系の機能不全を引き起こすのではないか、という説があります。

最近では、新型コロナウイルス感染症の後遺症(Long COVID)との関連も注目されています。



2.免疫システムの異常:

免疫細胞の働きが過剰になったり、逆に低下したりといった、免疫システムの調節異常が、体内の慢性的な炎症や様々な症状を引き起こしている可能性が指摘されています。



3.自律神経・内分泌(ホルモン)系の異常:

ストレスなどに対応する体のシステム(HPA軸:視床下部-下垂体-副腎系)や、自律神経系の機能に異常が生じ、疲労感や起立不耐症、睡眠障害などを引き起こしていると考えられています。



4.遺伝的素因や環境要因:

もともと持っている遺伝的な体質に、強い精神的・身体的ストレス、あるいは環境の変化などが加わることで、発症の引き金となるのではないか、と考えられています。

体の歪みが不調を助長する!?整体的アプローチの視点

慢性疲労症候群(ME/CFS)の治療は、現時点では根本的な治療法が確立されておらず、症状を和らげる対症療法や、無理のない範囲での活動量管理(ペーシング)が中心となります。

私たち整体師・鍼灸師は、この病気を「治す」ことはできません。

しかし、この病気が引き起こすつらい症状の一部、特に「自律神経の乱れ」や「体の痛み」、「睡眠の質の低下」といった側面に対して、体の構造的なバランスを整えることで、その緩和をサポートできる可能性があると考えています。


1.姿勢の悪化が「労作後の増悪」を招きやすくする:

極度の疲労感や筋力低下は、猫背や巻き肩といった不良姿勢を招きやすくなります。

そして、この不良姿勢は、ただでさえエネルギーが枯渇している体にとって、無駄なエネルギー消費を強いることになります。

歪んだ体を支えるために、筋肉は常に過剰に緊張し、少し動くだけでも健常な人より多くのエネルギーを必要とします。

これが、労作後の増悪を引き起こしやすくする一因となり得るのです。



2.首の歪みと「ブレインフォグ」・「自律神経症状」:

ストレートネックや首の骨(頸椎)の歪みは、脳への血流(特に脳幹や小脳への血流)に影響を与える可能性があります。

脳への血流が低下すると、ブレインフォグと呼ばれる認知機能障害や、めまい、立ちくらみといった自律神経症状が悪化する一因となることが考えられます。



3.体の緊張と「睡眠の質の低下」:

全身の痛みや、姿勢の悪さによる筋肉の過緊張は、睡眠中も体が完全にリラックスできず、交感神経が優位な状態が続きやすくなります。

これでは、いくら長時間寝ても、脳や体が十分に休息できず、「リフレッシュできない睡眠」となってしまうのです。

体の歪みを整え、筋肉の緊張を和らげることは、体の省エネ化を図り、睡眠の質を高め、自律神経のバランスを整える上で、非常に重要な意味を持つと考えています。

つらい症状と上手に付き合うための「ペーシング」と「セルフケア」

慢性疲労症候群(ME/CFS)と付き合っていく上で、最も重要なのが「ペーシング」という考え方です。

ペーシングとは、自分のエネルギーの限界を超えないように、活動量を慎重に管理し、休息を戦略的に取り入れることです。

「無理をしない」ことが、この病気の最良の薬とも言えます。

その上で、症状を和らげるためにできるセルフケアをいくつかご紹介します。


1.エネルギー管理と休息の徹底:

自分の「エネルギーの器」を把握し、決して使い切らないように活動を計画します。

活動と休息をセットで行い、症状が悪化する前に休むことを心がけます。

調子の良い日でも、調子に乗って活動しすぎないことが重要です(無理をすると、後でひどいクラッシュ(症状の悪化)が来ることがあります)。



2.リラックスできる環境づくりと睡眠衛生:

光、音、匂いなどの刺激をできるだけ減らし、心身が休まる静かな環境を整えましょう。

寝室を快適な温度・湿度に保ち、遮光カーテンなどで光を遮断することも有効です。



3.体を温め、血行を促進する:

無理のない範囲で、ぬるめのお風呂に浸かったり、蒸しタオルで首や肩を温めたりすることは、筋肉の緊張を和らげ、リラックス効果を高めます。

ただし、体力を消耗しすぎないように、時間や温度には注意が必要です。



4.優しいストレッチと呼吸法:

調子の良い時に、ベッドの上でできるような、ごく軽いストレッチや、ゆっくりとした深い呼吸(腹式呼吸)を行うことは、体の緊張を和らげ、自律神経を整える助けになります。

絶対に無理はせず、「気持ち良い」と感じる範囲で行いましょう。

まとめ:見えない病気と闘うあなたへ。一人で抱え込まず、理解とケアを

さて、今回は「慢性疲労症候群の悩み|【何をしても取れないだるさ】と自律神経ケア」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

この病気は、周りから理解されにくい「見えない病気」であるため、患者さん本人が抱える苦しみや孤独感は計り知れません。

しかし、決して「気のせい」や「怠け」ではなく、体に明確な異常が起きている疾患であることを、まずはご自身も、そして周りの方も理解することが大切です。

では、今日のポイントをまとめます。

  • 慢性疲労症候群(ME/CFS)は、原因不明の強度の疲労感が6ヶ月以上続き、特に「労作後の増悪」を特徴とする複雑な疾患である。
  • 主な症状として、極度の疲労感、労作後の増悪、睡眠障害、認知機能障害(ブレインフォグ)、起立不耐症、全身の痛みなど、多岐にわたる。
  • 原因は未解明だが、感染症の後遺症や、免疫、自律神経、内分泌系の異常などが複合的に関わっていると考えられている。
  • 体の歪みや不良姿勢は、無駄なエネルギー消費を招き、脳への血流に影響し、睡眠の質を低下させることで、症状を悪化させる可能性がある。
  • 治療の基本は、エネルギーの限界を超えないように活動量を管理する「ペーシング」であり、それに加えて、体を温めたり、ごく軽いストレッチや呼吸法を行ったりするセルフケアが症状緩和に役立つ。


慢性疲労症候群(ME/CFS)の治療は、専門医による診断と指導のもとで、焦らず、長期的な視点で取り組む必要があります。

その上で、体の歪みを整え、筋肉の過剰な緊張を和らげることは、体の無駄なエネルギー消費を減らし、睡眠の質を高め、自律神経のバランスを整える一助となり得ます。

それは、つらい症状と闘うための、体の「土台」を整えることに他なりません。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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