めまい・ふらつき|【良性発作性頭位めまい症(BPPV)】との違いと対処法

東角剛司

東角剛司

テーマ:身体の痛み・不調

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

特定の頭の位置の変化によって引き起こされる、突然の「めまい」に、驚いた経験はありませんか?

このような特徴的なめまいの多くは、耳の奥にある「内耳(ないじ)」のトラブルが原因で起こる「良性発作性頭位めまい症(BPPV:Benign Paroxysmal Positional Vertigo)」である可能性が高いです。

「良性」という名前の通り、命に関わるような怖い病気ではありませんが、その症状は非常に激しく、強い不安感や吐き気を伴うことも少なくありません。

今回は、そんな「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」とは一体どのような病気なのか、なぜ起こるのか、そして、めまいが起きてしまった時の対処法や、私たち専門家ができるサポートについて、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」ってどんな病気?

まず、「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」とは、どのような病気なのでしょうか?

これは、めまいの原因として最も頻度の高い疾患の一つで、特に中高年の女性に多く見られます。

その名前を分解してみると、特徴がよく分かります。

良性(Benign):命に関わるような危険な病気ではない、という意味です。

発作性(Paroxysmal):症状が突然、発作的に起こる、という意味です。

頭位(Positional):頭の位置を変えた時(頭位変換時)に症状が誘発される、という意味です。

めまい症(Vertigo):目が回るような感覚、という意味です。

つまり、BPPVとは、「命に別状はないけれど、頭を動かした時に突然、発作的に起こるめまい」ということになります。

BPPVの主な症状


1.回転性のめまい:

自分自身や、周りの景色が「グルグル」と激しく回転するような、強いめまいが特徴です。

遊園地のコーヒーカップに乗っているような感覚、と表現される方もいます。



2.特定の頭位変換で誘発される:

このめまいは、必ず「頭を動かした時」に起こります。

  • 寝返りを打った時
  • ベッドから起き上がる時、横になる時
  • 急に振り向いた時
  • 上を向いた時(棚の上のものを取る、洗濯物を干すなど)
  • 下を向いた時(靴紐を結ぶ、床のものを拾うなど)
  • 美容院のシャンプー台で頭を倒した時




3.持続時間が短い:

めまいの持続時間は、比較的短く、通常は数十秒から、長くても1~2分程度で自然に治まります。

じっとしていると症状は落ち着きますが、再び頭を動かすと、また誘発されることがあります。



4.吐き気や嘔吐を伴うことも:

めまいが強いと、吐き気や嘔吐、冷や汗、動悸などを伴うことがあります。



5.難聴や耳鳴りはない:

BPPVの大きな特徴として、原則として「難聴(耳が聞こえにくい)」や「耳鳴り」といった聴覚症状を伴わない点が挙げられます。

もし、めまいと同時にこれらの症状がある場合は、メニエール病など、他の病気の可能性も考えられるため、注意が必要です。

なぜ起こるの?耳の中の「石」が原因だった!?

では、なぜ頭を動かすと、このような激しいめまいが起こるのでしょうか?

その原因は、耳の奥にある「内耳」の中の、「耳石(じせき)」という小さな石にあります。

私たちの内耳には、体の傾きや直線的な動き(エレベーターの昇降など)を感知する「耳石器(じせきき)」という器官があります。

この耳石器の中には、「耳石」と呼ばれる炭酸カルシウムの結晶でできた、砂粒のような小さな石がたくさん乗っています。

頭が傾くと、この耳石が重力で動くことで、体の傾きを感知しているのです。

BPPVは、この耳石器から、何らかの理由で耳石の一部が剥がれ落ちてしまい、体の回転を感知する「三半規管(さんはんきかん)」という別の器官に入り込んでしまうことで発症します。

三半規管は、リンパ液で満たされたチューブのような器官です。

頭を回転させると、中のリンパ液が流れ、その流れをセンサーが感知することで、回転を認識しています。

この三半規管の中に、本来そこにあるはずのない「耳石」が迷い込んでしまうと、頭を動かした時に、この耳石がリンパ液の中でコロコロと転がり、リンパ液に異常な流れを生じさせてしまいます。

すると、三半規管のセンサーが過剰に刺激され、「頭が激しく回転している!」という誤った信号を脳に送ってしまうのです。

これが、BPPVの激しい回転性めまいの正体です。

頭をじっとさせていると、耳石の動きも止まるため、めまいが治まるというわけです。



耳石が剥がれ落ちる原因は?

頭部打撲や、長時間同じ姿勢で寝ていたことなどがきっかけになることもありますが、多くの場合、明確な原因は不明です。

加齢や、骨粗しょう症、カルシウム代謝の異常、女性ホルモンの変動などが関係しているのではないか、と考えられています。

BPPVと「整体」の意外な関係|首こり・肩こりがめまいを助長する

BPPVの直接的な原因は、内耳の耳石です。

そのため、主な治療は耳鼻咽喉科で行われます。

私たちは、BPPVの直接的な原因を治すことはできませんが、その症状を悪化させたり、回復を妨げたりする「間接的な要因」に対してアプローチすることができます。

その間接的な要因とは、「首こり・肩こり」と、それに伴う「血行不良」や「自律神経の乱れ」です。


1.首こり・肩こりが内耳の血行を悪化させる!?

内耳は、非常に繊細な器官であり、その機能を正常に保つためには、十分な血液供給が不可欠です。

しかし、デスクワークやスマホの使いすぎなどで、首や肩の筋肉がガチガチに凝り固まっていると、内耳へと血液を送る血管(椎骨動脈など)が圧迫され、血流が悪くなる可能性があります。

内耳の血行が悪くなると、耳石が剥がれやすくなったり、めまいからの回復が遅れたりする一因となると考えられます。



2.体の歪みが平衡感覚を乱す!?

私たちの体のバランスは、内耳からの情報だけでなく、目からの視覚情報、そして足の裏や筋肉、関節からの「固有感覚」という情報を、脳が統合することで保たれています。

猫背やストレートネック、骨盤の歪みといった体の歪みがあると、この固有感覚にズレが生じ、脳が混乱しやすくなります。

そこにBPPVによる内耳からの誤った情報が加わると、めまいやふらつきの症状がより強く感じられたり、長引いたりする可能性があるのです。



3.自律神経の乱れがめまいへの不安を増強する!?

首周りの筋肉の過緊張や、背骨の歪みは、自律神経のバランスを乱す大きな要因です。

自律神経が乱れると、血流のコントロールがうまくいかなくなったり、めまいに対する不安感が強まったりして、症状を悪化させる悪循環に陥ることがあります。

このように、体のコンディションを整えることは、BPPVの症状を和らげ、再発を予防する上で、非常に重要な意味を持っているのです。

もし「めまい発作」が起きたら?落ち着いてできる対処法とセルフケア

突然の激しいめまいに襲われると、パニックになってしまいがちですが、まずは落ち着いて対処することが大切です。

発作が起きた時の対処法:

まずは安全な場所で安静に:転倒の危険があるため、すぐにその場に座るか、横になりましょう。

楽な姿勢を見つける:頭を動かすと症状が悪化するため、めまいが最も楽に感じる頭の位置を探し、症状が治まるまでじっとします。

目を閉じるか、一点を見つめる:視覚からの情報が混乱を招くことがあるため、目を閉じるか、遠くの一点をじっと見つめると、めまいが和らぐことがあります。

慌てて頭を動かしたり、無理に起き上がろうとしたりしないことが重要です。



症状が落ち着いてからのセルフケア(めまいリハビリ):

BPPVの治療には、「浮遊耳石置換法(エプリー法など)」という、頭を特定の位置に動かして三半規管に入り込んだ耳石を元の場所に戻す理学療法が非常に効果的です。これは耳鼻咽喉科で指導してもらえます。

それに加えて、めまいに慣れるための「めまいリハビリ」を自宅で行うことも、回復と再発予防に役立ちます。

※必ず医師に相談し、許可を得てから行ってください。


首の運動:椅子に座り、ゆっくりと首を上下、左右に動かします。次に、左右に首を傾けます。

目の運動:頭は動かさず、目だけを上下、左右に動かします。

寝返り運動:ベッドの上で、ゆっくりと左右に寝返りを繰り返します。

これらの運動を、最初はゆっくりと、少しめまいがしても怖がらずに続けることで、脳がめまいに慣れ、バランス機能が再調整されていきます。

まとめ:BPPVは怖くない!正しい知識とケアでめまいを克服しよう

さて、今回は「めまい・ふらつき|【良性発作性頭位めまい症(BPPV)】との違いと対処法」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

突然の激しいめまいは、本当に怖いものですが、その原因が「耳の中の石」であることを知るだけで、少し不安が和らいだのではないでしょうか。

BPPVは、原因がはっきりしており、適切な対処で改善しやすい疾患です。

では、今日のポイントをまとめます。

  • 良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、頭を動かした時に突然起こる、持続時間の短い回転性のめまいであり、めまいの原因として最も頻度が高い。
  • 原因は、内耳の耳石器から剥がれ落ちた「耳石」が、三半規管に入り込むことで、リンパ液に異常な流れを生じさせ、脳に誤った回転信号を送ってしまうことである。
  • BPPVの症状を悪化させる間接的な要因として、首こり・肩こりによる内耳の血行不良や、体の歪みによる平衡感覚の乱れ、自律神経の乱れなどが考えられる。
  • めまい発作が起きた際は、慌てずに安全な場所で安静にし、症状が落ち着く楽な姿勢を見つけることが大切である。
  • 私たち整体師や鍼灸師は、首こり・肩こりの緩和、体の歪みの調整、自律神経の安定などを通じて、BPPVの回復をサポートし、再発しにくい体づくりのお手伝いができる。


BPPVは、耳鼻咽喉科での診断と治療が基本です。しかし、その上で体のコンディションを整えることは、回復を早め、再発を防ぐために非常に有効です。

もし、あなたが繰り返すめまいにお悩みで、「首や肩のこりもひどい」「体の歪みが気になる」と感じているなら、それは体からの重要なサインかもしれません。

体のバランスを整えることは、めまいの改善だけでなく、様々な不調の予防にも繋がります。ぜひ、ご自身の体と向き合うきっかけにしてみてください。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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