糖尿病と血行不良|【足のしびれ・冷え】を予防するセルフケア

東角剛司

東角剛司

テーマ:ストレッチ・運動

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

「健康診断で、血糖値が高めだと指摘された…」

「糖尿病と診断され、食事や運動に気をつけている」

「最近、足先がしびれたり、冷えたりするのが気になる…」

そんな、「糖尿病」に関するお悩みや、それに伴う体の変化に不安を感じていませんか?

糖尿病は、今や日本の成人の約5人に1人が「糖尿病が強く疑われる」または「糖尿病の可能性を否定できない」と言われるほど、非常に身近な生活習慣病です。(※1)

血糖値をコントロールするための食事療法や運動療法、薬物療法は、糖尿病治療の基本であり、非常に重要です。

しかし、それと同時に、糖尿病が引き起こす「合併症」、特に「血行不良」と、それに伴う「足のトラブル」について、正しい知識を持ち、日頃から適切なケアを行うことが、健康で快適な毎日を送る上で欠かせないのです。

今回は、そんな「糖尿病と血行不良」の深刻な関係、そして、つらい「足のしびれ」や「冷え」を予防・改善するためのセルフケアについて、私たち専門家ができるサポートも交えながら、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

(※1)出典:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html

なぜ糖尿病になると「血行不良」が起こるの?

まず、なぜ糖尿病になると、血行不良が起こりやすくなるのでしょうか?

その背景には、高血糖の状態が続くことによる、血管へのダメージが大きく関わっています。


1.動脈硬化の進行:

高血糖の状態が続くと、血管の内壁が傷つきやすくなります。

傷ついた部分には、コレステロールなどが溜まりやすく、「プラーク」と呼ばれるこぶのようなものができます。これにより、血管が硬く、そして狭くなってしまう「動脈硬化」が進行するのです。

血管が狭くなると、当然、血液の流れは悪くなりますよね。

特に、心臓から遠い足の血管は、動脈硬化の影響を受けやすい部分です。



2.赤血球の変形と血液の粘度上昇:

高血糖の状態では、血液中の赤血球が硬くなり、変形する能力が低下します。

赤血球は、体の隅々にある細い毛細血管を通るために、しなやかに形を変える必要がありますが、硬くなると毛細血管を通りにくくなってしまいます。

また、血液中の糖分が多いと、血液自体の粘度、つまり「ドロドロ度」も増し、血流が悪化するのです。



3.自律神経障害による血流コントロールの乱れ:

高血糖は、血管だけでなく、神経にもダメージを与えます。これを「糖尿病神経障害」と呼びます。

血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経が障害されると、血流の調整がうまくできなくなり、血行不良を助長することがあります。


これらの要因が複合的に絡み合い、糖尿病の患者さんは、特に足の「血行不良」が起こりやすい状態になっているのです。

血行不良が招く、怖い「足のトラブル」とは?

では、足の血行不良が続くと、具体的にどのような怖いトラブルが起こるのでしょうか?

1.足の「しびれ」や「痛み」(糖尿病神経障害):

これが、糖尿病の三大合併症の一つである「糖尿病神経障害」の代表的な症状です。

血行不良によって神経細胞に十分な酸素や栄養が届かなくなり、神経がダメージを受けることで、

  • 足の裏がジンジン、ピリピリとしびれる
  • 足の裏に一枚、薄い紙が貼ってあるような感覚(感覚鈍麻)
  • 砂利の上を歩いているような、じゃりじゃりした感じ
  • 逆に、何も触れていないのに痛みを感じる


といった、様々な異常感覚が現れます。

最初は足先に現れ、徐々に上の方に広がっていくのが特徴です。



2.足の「冷え」:

血行不良により、温かい血液が足先まで十分に届かなくなるため、足が冷えやすくなります。

特に冬場は、しもやけや凍傷のリスクも高まります。



3.感覚の低下と「ケガのリスク」増大:

神経障害が進行すると、痛みや熱さ、冷たさを感じる感覚が鈍くなります。

すると、靴擦れや小さな切り傷、やけど、低温やけどなどをしても気づきにくくなり、発見が遅れてしまうのです。



4.傷が治りにくく、「感染症」のリスク増大:

血行不良は、傷を治すために必要な酸素や栄養素、免疫細胞などが患部に届きにくくなることを意味します。

また、高血糖の状態は、細菌が繁殖しやすい環境でもあります。

そのため、糖尿病の患者さんは、ほんの小さな傷からでも細菌が感染し、化膿しやすく、そして非常に治りにくくなるのです。



5.【最悪のケース】足の壊疽(えそ)と切断:

小さな傷の発見が遅れ、感染が悪化し、血行不良で組織が死んでしまう「壊疽」という状態に陥ってしまうことがあります。

壊疽が広範囲に及ぶと、命を救うために、足の切断を余儀なくされるケースも少なくありません。

これを「糖尿病足病変(とうにょうびょうあしびょうへん)」と呼び、年間多くの方が足の切断に至っているという深刻な現実があります。


糖尿病における「足のケア」は、単なる美容や快適さのためではなく、将来のQOL(生活の質)を守る上で、非常に重要な意味を持っているのです。

今日から実践!足のしびれ・冷えを予防する「フットケア」

では、このような怖い足のトラブルを防ぐために、日常生活でどのようなケアをすれば良いのでしょうか?

基本は、血糖コントロールを良好に保つことですが、それに加えて、毎日の「フットケア」が非常に重要になります。


1.毎日、自分の足を「観察」する習慣を!

感覚が鈍くなっている可能性を常に念頭に置き、目で見て異常がないかを確認することが大切です。


観察するポイント:

  • 切り傷、すり傷、靴擦れはないか?
  • 皮膚の色が変わっている部分はないか?(赤み、紫色の変色など)
  • タコやウオノメ、水ぶくれはできていないか?
  • 腫れや熱感はないか?
  • 皮膚が乾燥しすぎて、ひび割れていないか?



観察のコツ:

足の裏や指の間など、見えにくい場所は、手鏡を使ったり、家族に協力してもらったりして、毎日チェックしましょう。

お風呂上がりなど、時間を決めて行うと習慣化しやすいです。



2.足を「清潔」に保つ!

感染予防の基本は、清潔を保つことです。

毎日、石鹸をよく泡立てて、指の間まで優しく洗いましょう。ゴシゴシこするのは禁物です。

洗った後は、乾いたタオルで、特に指の間を丁寧に拭き、しっかりと乾かします。



3.「保湿」で乾燥を防ぐ!

乾燥は、皮膚のバリア機能を低下させ、ひび割れや傷の原因になります。

入浴後、保湿クリームやローションを、足全体(特に乾燥しやすいかかとなど)に優しく塗り込みましょう。

ただし、指の間に塗りすぎると、湿って水虫の原因になることがあるので注意が必要です。



4.「爪切り」は慎重に!

深爪や巻き爪は、傷や感染の原因となります。

爪は、まっすぐに切り、角はヤスリで少し丸める程度(スクエアオフカット)にします。

爪が硬い場合は、入浴後など、爪が柔らかくなっている時に切りましょう。

自分で切るのが難しい場合は、無理せず家族に頼んだり、フットケア外来などで専門家に切ってもらったりするのも良いでしょう。



5.「靴」と「靴下」の選び方にも注意!

足を守る上で、靴と靴下選びは非常に重要です。

靴:つま先にゆとりがあり、柔らかく、通気性の良い素材のものを選びましょう。足のサイズは時間帯によっても変わるので、夕方に試着するのがおすすめです。

靴下:吸湿性の良い綿素材などがおすすめです。縫い目が少なく、ゴムがきつすぎないものを選びましょう。



6.血行を促進する「簡単エクササイズ」:

足の血行を良くするための簡単な運動を、毎日の習慣にしましょう。

足首の運動: 椅子に座って、足首をゆっくりと大きく回したり、つま先を上げ下げしたりします。

足指の運動: 足の指で「グー」「パー」を繰り返したり、床に置いたタオルを指でたぐり寄せたりする「タオルギャザー」も効果的です。

ふくらはぎの運動: 貧乏ゆすりや、座ったままでのかかと上げ運動も、ふくらはぎの筋ポンプ作用を促し、血行を促進します。

まとめ:足のケアは命のケア!毎日の観察と予防で未来を守ろう

さて、今回は「糖尿病と血行不良|【足のしびれ・冷え】を予防するセルフケア」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

糖尿病における足のケアが、いかに重要で、将来の生活の質を左右する可能性があるかをご理解いただけたかと思います。

「たかが足のしびれ・冷え」と軽視せず、体からの重要なサインとして受け止め、今日からできるケアを始めてみませんか。

では、今日のポイントをまとめます。

  • 糖尿病による高血糖は、動脈硬化の進行、血液の粘度上昇、自律神経障害などを引き起こし、特に足の「血行不良」を招きやすい。
  • 血行不良は、「糖尿病神経障害」によるしびれや痛み、感覚低下、そして傷が治りにくく感染しやすい状態を作り出し、最悪の場合、足の壊疽や切断に繋がる「糖尿病足病変」のリスクを高める。
  • 足のトラブルを予防するためには、良好な血糖コントロールを基本とし、毎日の足の観察、足を清潔に保つこと、保湿、正しい爪切り、適切な靴・靴下選びといった「フットケア」が非常に重要である。
  • 血行を促進するための簡単なエクササイズ(足首・足指の運動、ふくらはぎの運動など)を毎日の習慣にすることも有効である。
  • 私たち整体師や鍼灸師は、血行を促進する施術や、体の歪みを整えて足への負担を軽減するアプローチを通じて、糖尿病患者さんのフットケアをサポートし、QOL(生活の質)の維持・向上に貢献できる。


糖尿病の治療は、内科や糖尿病専門医の指導のもとで行うことが大前提です。

その上で、私たち整体師や鍼灸師は、薬物療法とは異なる視点から、体の機能を高め、合併症を予防するためのお手伝いができます。

私たちは、体の歪みを整え、筋肉のバランスを調整することで、足への負担を軽減し、全身の血行を促進するサポートをします。

鍼灸治療も、足のしびれや冷え、血行不良の改善に効果が期待できます。

もし、あなたが糖尿病で、足のしびれや冷えといった症状にお悩みでしたら、かかりつけ医と相談の上、ぜひ一度私たち専門家にもご相談ください。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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