うつ症状と体の痛み|【気分の落ち込み】と姿勢の悪循環を断ち切る

東角剛司

東角剛司

テーマ:精神的なストレス

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

「なんだか最近、何をしても楽しくないし、気分がずっと落ち込んでいる…」

「朝、ベッドから起き上がるのが億劫で、一日中体がだるい…」

「気分の落ち込みと同時に、原因不明の頭痛や肩こり、腰痛もひどい…」

そんな、「心の不調」と「体の痛み」の両方に、同時に悩まされている方はいらっしゃいませんか?

「うつ病は心の病気だから、体の痛みとは関係ないだろう」

「この痛みは、ただの疲れやコリだろう」

そんな風に、心と体の問題を別々に考えてしまいがちですが、実は「うつ症状」と「慢性的な体の痛み」には、非常に深く、そして複雑な関係があることが、近年の研究で明らかになってきています。

そして、この心と体の不調の悪循環に、意外にも「姿勢」が大きく関わっている可能性があるのです。

今回は、そんな「うつ症状」と「体の痛み」の知られざる関係、そして、その負のスパイラルを生み出す「姿勢」との繋がり、さらには、心と体の両面からこの悪循環を断ち切るためのヒントについて、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

「うつ病」と「痛み」の驚くべき共通点

まず、「うつ病」について簡単におさらいしておきましょう。

うつ病は、単なる「気分の落ち込み」ではなく、脳のエネルギーが欠乏した状態であり、意欲の低下や興味・関心の喪失、様々な精神症状・身体症状が長期間続く、治療が必要な病気です。


うつ病の主な症状


精神症状:

  • 抑うつ気分(気分の落ち込み、憂鬱、悲しい)
  • 興味や喜びの喪失(これまで楽しめていたことが楽しめない)
  • 意欲の低下、おっくう感
  • 不安、焦り、イライラ
  • 集中力・思考力の低下
  • 自分を責める気持ち(罪悪感)、無価値観
  • 死にたいという気持ち(希死念慮)



身体症状:

  • 睡眠障害(不眠、過眠)
  • 食欲不振または過食
  • 疲労感、倦怠感
  • 頭痛、肩こり、腰痛、関節痛、腹痛といった原因不明の「体の痛み」
  • 動悸、息切れ、めまい、吐き気


注目すべきは、この身体症状の中に「体の痛み」が含まれている点です。

実は、うつ病の患者さんの約半数以上が、何らかの慢性的な痛みを併発しているというデータもあります。


では、なぜ「うつ」と「痛み」は、これほど密接に関係しているのでしょうか?

その鍵を握るのが、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」と「ノルアドレナリン」です。

これらの神経伝達物質は、

  • 気分や意欲、不安といった感情をコントロールする
  • 痛みを脳に伝える神経の働きをコントロールし、痛みを抑制する(下降性疼痛抑制系:かこうせいとうつうよくせいけい)


という、2つの非常に重要な役割を担っています。

うつ病になると、このセロトニンやノルアドレナリンの働きが低下してしまうと考えられています。

すると、気分が落ち込むだけでなく、痛みを抑制するシステムもうまく機能しなくなり、通常であれば気にならないような些細な刺激でも「痛み」として感じやすくなってしまうのです。

これが、「うつ病になると、体のあちこちが痛くなりやすい」理由の一つです。

逆に、慢性的な痛みが長期間続くと、それがストレスとなってセロトニンなどの働きを低下させ、うつ症状を引き起こすこともあります。

つまり、「うつ」と「痛み」は、互いに原因となり、結果となり得る、非常に厄介な「負のスパイラル」を形成してしまうのです。

「うつむき姿勢」が心と体をむしばむ!?姿勢と感情の深い関係

そして、この「うつと痛みの悪循環」に、拍車をかけてしまうのが「姿勢」の問題です。

みなさんも、気分が落ち込んでいる時、自然とどんな姿勢になっているか、思い浮かべてみてください。

おそらく、背中を丸め、肩を内側にすぼめ、視線は下を向き、うつむいた姿勢になっていないでしょうか?


この「うつむき姿勢(猫背や巻き肩)」は、単に「気分が落ち込んでいるから、そういう姿勢になる」というだけでなく、その姿勢自体が、さらに気分を落ち込ませ、体の痛みを引き起こすという、双方向の関係があることが分かってきています。



姿勢が「心」に与える影響:

ネガティブな感情の誘発:

ある研究では、うつむいた姿勢をとり続けると、ポジティブな記憶よりもネガティブな記憶を思い出しやすくなる、という結果が報告されています。

姿勢は、私たちの感情や思考にも影響を与える「身体化された認知」の一つなのです。

胸を張った姿勢では自信が湧きやすく、うつむいた姿勢では無力感や悲しみを感じやすくなります。


呼吸の浅さによる自律神経の乱れ:

猫背や巻き肩になると、胸郭が圧迫され、呼吸が浅くなります。

浅い呼吸は、自律神経のバランスを乱し、不安感やイライラを増大させることがあります。



姿勢が「体」に与える影響:

慢性的な筋肉の緊張と血行不良:

うつむき姿勢は、首、肩、背中の筋肉に持続的な負担をかけ、過剰な緊張状態を作り出します。

筋肉が硬くなると、その中を通る血管が圧迫され、血行が悪化。その結果、筋肉内に老廃物や痛みを発する物質が溜まり、慢性的な肩こりや頭痛、背中の痛みを引き起こします。


体の歪みによる腰痛や関節痛:

猫背は、骨盤の後傾を伴うことが多く、腰への負担を増大させ、腰痛の原因となります。

また、全身のバランスが崩れることで、膝や股関節など、他の関節にも不調が現れることがあります。

このように、「気分の落ち込み → うつむき姿勢になる → 体の痛みが出る・呼吸が浅くなり気分がさらに落ち込む → ますますうつむき姿勢になる…」という、まさに「心と体と姿勢の悪循環」に陥ってしまうのです。

その悪循環、どう断ち切る?今日からできるセルフケア

このつらい悪循環を断ち切るためには、心と体の両面から、そして「姿勢」という具体的なアプローチを通じて、少しずつ良い循環に変えていくことが大切です。

ただし、うつ病の治療には、精神科や心療内科での専門的な治療が不可欠です。

以下のセルフケアは、あくまで医師の治療と並行して行う補助的なものとして捉えてください。


1.「姿勢」を意識的に変えてみる:

気分が落ち込んでいる時こそ、あえて「良い姿勢」を意識してみましょう。

①胸を開く:

背もたれのある椅子に座り、両手を頭の後ろで組みます。ゆっくりと息を吸いながら、胸を天井に向かって広げ、肩甲骨を寄せます。

数秒キープし、息を吐きながら元に戻ります。


②視線を上げる:

意識的に少し遠くを見るようにし、視線を上げるだけでも、気分が少し変わることがあります。


③笑顔を作る:

無理にでも口角を上げて笑顔を作ると、脳が「楽しい」と錯覚し、セロトニンの分泌を促す効果があると言われています(表情フィードバック仮説)。



2.「太陽の光」を浴びる:

朝日を浴びることは、体内時計をリセットし、セロトニンの生成を促す上で非常に重要です。

朝起きたら、まずはカーテンを開けて、15分程度、太陽の光を浴びる習慣をつけましょう。

軽い散歩ができればさらに効果的です。



3.「リズム運動」を取り入れる:

ウォーキング、ジョギング、サイクリング、あるいはガムを噛むといった、一定のリズムを繰り返す運動は、セロトニンの分泌を活性化させる効果があると言われています。

つらい時は無理せず、5分程度の散歩からでも良いので、始めてみましょう。



4.「体を温める」習慣:

ぬるめのお風呂にゆっくり浸かることは、副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせる効果があります。

また、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげることで、体の痛みの軽減にも繋がります。



5.「腸内環境」を整える食事:

幸せホルモン「セロトニン」の約9割は、腸で作られると言われています。

発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)や食物繊維(野菜、きのこ類、海藻類など)を積極的に摂り、腸内環境を整えることも、心の安定に繋がります。

また、セロトニンの材料となるトリプトファン(大豆製品、乳製品、バナナなど)や、ビタミンB6、マグネシウムなども意識して摂りましょう。

まとめ:うつと痛みの悪循環は断ち切れる!姿勢から始める心と体のケア

さて、今回は「うつ症状と体の痛み|【気分の落ち込み】と姿勢の悪循環を断ち切る」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

「心の不調」と「体の痛み」、そして「姿勢」が、いかに密接に影響し合っているかをご理解いただけたかと思います。

つらい悪循環の中にいると、出口が見えないように感じるかもしれませんが、心と体の両面から、そして「姿勢」という具体的な行動からアプローチすることで、必ず変化のきっかけは見つかります。

では、今日のポイントをまとめます。

  • 「うつ症状」と「慢性的な体の痛み」は、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン)の機能低下という共通のメカニズムを持ち、互いに悪化させ合う「負のスパイラル」を形成する。
  • 気分の落ち込みに伴う「うつむき姿勢(猫背・巻き肩)」は、さらに気分を落ち込ませ、呼吸を浅くし、首・肩・背中・腰などに慢性的な痛みや緊張を引き起こすことで、この悪循環を助長する。
  • この悪循環を断ち切るためのセルフケアとして、意識的に良い姿勢をとること、太陽の光を浴びること、リズム運動、体を温めること、腸内環境を整える食事が有効である。
  • うつ病の治療には専門医の診断と治療が不可欠であるが、整体や鍼灸は、姿勢矯正、筋肉の緊張緩和、自律神経のバランス調整、呼吸法指導などを通じて、「体から心へ」のアプローチでその悪循環を断ち切るサポートができる。


うつ症状と体の痛みの悪循環は、決して一人で抱え込むべき問題ではありません。

もし、あなたが今、このようなつらい状況にいるなら、まずは勇気を出して、精神科や心療内科といった心の専門家にご相談ください。

その上で、「体の痛みもなんとかしたい」「姿勢から体を変えてみたい」とお考えでしたら、ぜひ一度、私たち体の専門家にもお声がけください。

私たちは、あなたの心と体に寄り添い、このつらい悪循環から抜け出すための一歩を、全力でサポートさせていただきます。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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