変形性膝関節症の痛み|【ヒアルロン酸注射の前に】試したいセルフケア

東角剛司

東角剛司

テーマ:ストレッチ・運動

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

「階段の上り下りで、膝の内側が痛む…」

「正座ができなくなり、和室での生活がつらくなってきた…」

「朝、起き上がって歩き出す時に、膝がこわばってスムーズに動かない…」

そんな、「膝の痛み」、特に中高年以降の方に多く見られる膝の痛みに悩んでいませんか?

もし、このような症状に心当たりがあり、病院でレントゲンを撮ってもらった結果、「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」と診断された方もいらっしゃるかもしれません。

変形性膝関節症は、日本の推定患者数が約2,530万人とも言われる、非常にありふれた疾患です。

そして、病院での治療法の一つとして、「ヒアルロン酸注射」を勧められたことがある方も多いのではないでしょうか。


今回は、そんな「変形性膝関節症」と「ヒアルロン酸注射」について、その効果と限界を正しく理解するとともに、注射に頼る前に、あるいは注射と並行してぜひ試していただきたい、痛みの根本原因にアプローチするセルフケアについて、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

そもそも「変形性膝関節症」ってどんな状態?

まず、「変形性膝関節症」とは、どのような状態を指すのでしょうか?

膝関節は、太ももの骨(大腿骨)と、すねの骨(脛骨)で構成されています。

正常な膝では、これらの骨の表面が「関節軟骨」という滑らかで弾力性のあるクッション材で覆われています。

「変形性膝関節症」とは、主に加齢や長年の負担によって、この関節軟骨がすり減ったり、変性したりすることで、骨同士が直接こすれ合い、関節に炎症や痛み、変形を引き起こす疾患です。

進行すると、関節の隙間が狭くなったり、骨の縁に「骨棘(こつきょく)」と呼ばれるトゲのようなものができたりします。

特に、日本人に多いO脚の方は、膝の内側に体重がかかりやすいため、内側の軟骨ばかりがすり減ってしまうケースが多く見られます。

「ヒアルロン酸注射」の効果と、知っておきたい限界

では、病院でよく行われる「ヒアルロン酸注射」には、どのような効果があるのでしょうか?

ヒアルロン酸注射の主な「効果」:

ヒアルロン酸は、もともと関節の中にある「関節液」の主成分の一つで、関節の動きを滑らかにしたり、軟骨を保護したり、衝撃を吸収したりする、潤滑油のような働きをしています。

変形性膝関節症になると、この関節液中のヒアルロン酸の濃度や量が低下し、潤滑機能が落ちてしまいます。

ヒアルロン酸注射は、この不足したヒアルロン酸を直接関節内に補充することで、

  • 関節の滑りを良くし、動きをスムーズにする
  • 痛みを和らげる(炎症を抑える作用もある)
  • 軟骨の破壊をある程度抑制する

といった効果が期待できるのです。

一般的には、1週間に1回を5週間連続で行い、その後は2~4週間に1回のペースで継続することが多いです。


知っておきたいヒアルロン酸注射の「限界」:

ヒアルロン酸注射は、痛みを和らげ、日常生活を楽にする上で有効な治療法の一つです。

しかし、その一方で、以下のような「限界」も理解しておく必要があります。

①すり減った軟骨を「再生」させるものではない:

ヒアルロン酸注射は、あくまで対症療法であり、すり減ってしまった軟骨を元通りに再生させる効果はありません。


②効果には個人差があり、持続期間も限定的:

注射後すぐに痛みが楽になる方もいれば、あまり効果を感じられない方もいます。

また、効果の持続期間も数週間から数ヶ月程度と個人差があり、効果を維持するためには定期的に注射を続ける必要があります。


③進行した変形には効果が薄い:

関節の変形がかなり進行してしまっている末期の状態では、ヒアルロン酸注射の効果はあまり期待できないと言われています。


ヒアルロン酸注射は、痛みをコントロールしながら、その間にリハビリやセルフケアを進めるための「時間稼ぎ」や「サポーター」のような役割と捉えるのが、賢明な付き合い方かもしれません。

なぜ膝に負担がかかるの?痛みの「根本原因」を見つめ直す

ヒアルロン酸注射で一時的に痛みが和らいでも、膝に負担をかけ続ける生活習慣や体の状態が変わらなければ、またすぐに痛みはぶり返してしまいます。

痛みの根本改善を目指すためには、なぜ自分の膝に過剰な負担がかかってしまったのか、その「根本原因」を見つめ直すことが不可欠です。


1.筋力の低下(特に太ももの筋肉):

膝関節を安定させる上で最も重要なのが、太ももの前側にある「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」です。

この筋肉が弱ると、膝関節が不安定になり、軟骨への負担が増大します。

また、お尻の筋肉(大殿筋、中殿筋)や、太ももの裏側(ハムストリングス)、内側(内転筋群)の筋力も、正しい歩行や姿勢を保つ上で重要です。



2.体の歪みと悪い歩き方(構造医学的視点):

これは私たち整体師・鍼灸師が特に注目するポイントです。

①骨盤の歪み:

体の土台である骨盤が歪んでいると、左右の足にかかる体重がアンバランスになり、片方の膝にばかり過剰な負担がかかります。


②O脚・X脚:

膝が内側や外側に歪んでいると、膝関節の特定の部分にストレスが集中し、軟骨のすり減りを加速させます。


③足元の不安定さ(扁平足など):

土踏まずが潰れている「扁平足」や、足首が内側に倒れ込む「回内足」は、地面からの衝撃吸収能力を低下させ、その衝撃が直接膝に伝わる原因となります。


④悪い歩き方:

膝を曲げたまま歩いたり、体を左右に揺らしながら歩いたりする癖は、膝関節に不必要な負担をかけ続けます。

膝の痛みは、単に膝だけの問題ではなく、足元から骨盤、そして体全体のバランスの乱れが、根本的な原因となっていることが多いのです。



3.体重の増加:

体重が増えると、その分、膝にかかる負担も直接的に増大します。

歩行時には体重の約3倍、階段の上り下りでは約7倍もの負荷がかかると言われています。

体重コントロールは、膝の負担を減らす上で非常に重要です。

注射の前に試したい!今日からできる「膝を守る」セルフケア

痛みの根本原因にアプローチし、膝を守るために、ご自宅でできる効果的なセルフケアをご紹介します。

痛みが強い時や、膝に熱感や腫れがある場合は無理せず、気持ちの良い範囲で行いましょう。


ケア1:太ももの前側の筋肉を鍛える「膝伸ばし運動」

大腿四頭筋を安全に鍛える、最も基本的な運動です。

椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばします。

片方の足を、床と平行になるまでゆっくりと持ち上げ、膝をまっすぐ伸ばします。

太ももの前側に力が入っているのを感じながら、5~10秒キープします。

ゆっくりと足を下ろします。これを左右それぞれ10~20回程度繰り返します。

足首に1kg程度の重り(アンクルウェイト)をつけて行うと、さらに効果的です。



ケア2:お尻の筋肉を鍛える「お尻上げ運動(ヒップリフト)」

お尻の筋肉は、歩行時の安定性に不可欠です。

仰向けに寝て、両膝を立て、足は腰幅程度に開きます。

ゆっくりと息を吐きながら、お尻を持ち上げ、膝から肩までが一直線になるようにします。

数秒キープしたら、ゆっくりと下ろします。これを10回程度繰り返しましょう。

腰を反らせすぎないよう、お尻の筋肉を意識するのがポイント。



ケア3:硬くなった筋肉をほぐすストレッチ

痛みのない範囲で、膝周りの筋肉の柔軟性を保ちましょう。


太ももの裏側(ハムストリングス)のストレッチ:

椅子に浅く腰掛け、片方の足を前に伸ばし、かかとを床につけます。背筋を伸ばしたまま、体を前に倒し、太ももの裏を伸ばします。


ふくらはぎのストレッチ:

壁に手をつき、足を前後に開いて、後ろ足のふくらはぎを伸ばします。



ケア4:膝のお皿(膝蓋骨)の動きを良くするマッサージ

椅子に座るか、床に座って膝を伸ばし、太ももの力を抜きます。

両手の親指と人差し指で、膝のお皿を優しくつまみます。

お皿を、上下、左右に、無理のない範囲で優しく動かします。

お皿の動きがスムーズになることで、膝の曲げ伸ばしが楽になることがあります。

まとめ:膝の痛みは体からのサイン!根本ケアで「注射いらず」の膝を目指そう

さて、今回は「変形性膝関節症の痛み|【ヒアルロン酸注射の前に】試したいセルフケア」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

ヒアルロン酸注射は有効な治療法の一つですが、それだけに頼るのではなく、なぜ膝が痛くなってしまったのか、その根本原因に目を向け、自分自身でできるケアを併せて行うことが、長期的に見て非常に大切であることをご理解いただけたかと思います。

では、今日のポイントをまとめます。

  • 変形性膝関節症は、加齢などにより膝の関節軟骨がすり減り、痛みや変形が生じる疾患である。
  • ヒアルロン酸注射は、関節の滑りを良くし痛みを和らげる効果が期待できるが、軟骨を再生させるものではなく、効果には個人差と限界がある。
  • 痛みの根本原因として、太ももの筋力低下、骨盤や足元からの体の歪み(O脚など)、体重増加などが挙げられる。
  • 注射の前に、あるいは注射と並行して試したいセルフケアとして、太ももの前側やお尻の筋肉を鍛えるトレーニング、硬くなった筋肉のストレッチ、膝のお皿のマッサージなどが有効である。
  • 私たち整体師や鍼灸師は、膝周りの筋肉や関節へのアプローチに加え、根本原因となり得る体全体の歪みを整えることで、変形性膝関節症の痛みの緩和と進行予防をサポートできる。


ヒアルロン酸注射は、つらい痛みを乗り越えるための強力なサポーターです。

しかし、それに頼りきるのではなく、ご自身の体を根本から見つめ直し、セルフケアを続けることで、「注射いらず」の膝を目指すことも夢ではありません。

もし、あなたが変形性膝関節症の痛みでお悩みで、「何から始めたら良いか分からない」「自分の体の歪みが気になる」という場合は、どうぞ一人で抱え込まず、私たち専門家にご相談ください。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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