アキレス腱の痛み|運動後の痛みを放置するリスクとケア

東角剛司

東角剛司

テーマ:身体の痛み・不調

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

「ランニングやジャンプをした後、アキレス腱のあたりが痛む…」

「朝起きて歩き出す時に、アキレス腱がこわばって痛い…」

「アキレス腱の周りが、なんだか腫れぼったい感じがする…」

そんな、”アキレス腱の痛み”に悩まされていませんか?

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)とかかとの骨(踵骨)をつなぐ、体の中で最も太くて強靭な腱です。

歩く、走る、ジャンプするといった、私たちが地面を蹴り出す動作の際に、バネのように働いて大きな力を生み出す、非常に重要な役割を担っています。

しかし、その分、スポーツや日常生活で大きな負担がかかりやすい部位でもあります。

「ちょっとした痛みだから」「運動後の筋肉痛だろう」と軽く考えて放置していると、痛みが慢性化してしまったり、ひどい場合には「アキレス腱断裂」という大ケガに繋がってしまったりする可能性もある、注意が必要なサインなのです。

今回は、そんな「アキレス腱の痛み」がなぜ起こるのか、その主な原因と、痛みを悪化させないためのセルフケア、そして私たち専門家ができるサポートについて、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

アキレス腱が痛む…考えられる主な原因とは?

アキレス腱の痛みを引き起こす状態はいくつかありますが、特に多く見られるのが「アキレス腱炎」と「アキレス腱周囲炎」です。


アキレス腱炎(けんえん)・アキレス腱症(けんしょう):

アキレス腱そのものに、繰り返しの微細な損傷や変性が起こり、痛みが生じる状態です。

特に、アキレス腱がかかとの骨にくっつく部分や、その少し上(2~6cm)あたりは、血流が乏しく、損傷が起こりやすいと言われています。

中年以降の市民ランナーなどに多く見られます。



アキレス腱周囲炎(けんしゅういえん):

アキレス腱を包んでいる「パラテノン」という薄い膜に、摩擦などによって炎症が起こり、痛みや腫れが生じる状態です。

アキレス腱を動かすと、ギシギシとした感じ(軋轢音:あつれきおん)がすることがあります。

比較的若いアスリートに多く見られます。

これらの状態は、しばしば合併して起こることもあり、総称して「アキレス腱障害」と呼ばれることもあります。



では、なぜこれらの炎症が起こるのでしょうか?


1.使いすぎ(オーバーユース):

これが最も一般的な原因です。

  • ランニング、ジョギング、ジャンプ系のスポーツ(陸上、バスケットボール、バレーボールなど)
  • 急激な練習量の増加や、強度の高いトレーニング
  • 慣れない運動の開始


これらの動作は、アキレス腱に繰り返し大きな牽引力(引っ張られる力)を加え、微細な損傷を蓄積させていきます。



2.ふくらはぎの筋肉の「硬さ(柔軟性低下)」:

ふくらはぎの筋肉(腓腹筋、ヒラメ筋)が硬く、柔軟性が低下していると、アキレス腱にかかる負担が直接的に増大します。

筋肉がゴムのようにしなやかであれば、衝撃を吸収できますが、硬くなっていると、その衝撃が全てアキレス腱に集中してしまうのです。

ウォーミングアップ不足や、練習後のクールダウン(ストレッチなど)不足は、筋肉の硬さを招く大きな要因となります。



3.不適切なシューズや練習環境:

  • クッション性が低い、かかとがすり減っている、サイズが合っていないといったシューズ
  • アスファルトなどの硬い路面での長時間のトレーニング
  • 坂道のランニング(特に上り坂はアキレス腱への負担が大きい)


これらは、着地時の衝撃を増大させ、アキレス腱への負担を増やします。



4.加齢による腱の変性:

年齢とともに、腱の弾力性が失われ、もろくなっていく(変性)傾向があります。

そのため、中年以降になると、若い頃と同じような運動をしていても、アキレス腱を痛めやすくなるのです。



5.体の歪みと悪いフォーム(構造医学的視点):

これは私たち整体師・鍼灸師が特に注目するポイントですが、アキレス腱の痛みは、実は体全体のバランスの乱れが根本的な原因となっていることが非常に多いのです。


足元の不安定さ(扁平足・回内足など):

土踏まずが潰れている「扁平足」や、着地時にかかとが内側に過剰に倒れ込む「回内足(オーバープロネーション)」は、アキレス腱に「ねじれ」のストレスを加え、痛みを引き起こす大きな原因となります。


骨盤の歪み:

体の土台である骨盤が歪んでいると、左右の足にかかる体重がアンバランスになり、片方のアキレス腱にばかり過剰な負担がかかります。


悪いランニングフォーム:

体の歪みに起因する悪いフォーム(例えば、体幹がぶれる、足先だけで走るなど)は、着地のたびにアキレス腱に不必要な衝撃を与え続けます。


アキレス腱の痛みは、単に「使いすぎ」と片付けるのではなく、なぜそこに負担が集中してしまったのか、という体全体のバランスの問題として捉えることが、根本改善への鍵となります。

放置は危険!アキレス腱の痛みが招くかもしれない最悪の未来

「ちょっと痛いだけだから…」とアキレス腱の痛みを放置していると、症状が悪化し、様々な問題を引き起こす可能性があります。


痛みの慢性化:

炎症が治まりにくくなり、常に痛みが続く状態になります。

日常生活の歩行だけでも痛みを感じるようになり、QOL(生活の質)が大きく低下します。


腱の肥厚(ひこう)・結節(けっせつ):

慢性的な炎症が続くと、アキレス腱が硬く、分厚くなってしまうことがあります。

また、しこりのようなもの(結節)ができることもあり、さらに痛みが強くなったり、治りにくくなったりします。


パフォーマンスの低下:

痛みで思い切り走ったり、ジャンプしたりすることができなくなり、スポーツのパフォーマンスが著しく低下します。


【最悪のケース】アキレス腱断裂:

炎症や変性が進んでもろくなったアキレス腱は、ちょっとした強い衝撃(急なダッシュやジャンプなど)で、「ブチッ」という音とともに完全に断裂してしまうことがあります。

アキレス腱断裂は、スポーツへの復帰に長期間を要する大ケガであり、場合によっては手術が必要となります。

アキレス腱炎を繰り返している人は、アキレス腱断裂のハイリスク群であることを、ぜひ知っておいてください。

今日から実践!アキレス腱の痛みを和らげるセルフケア

つらい痛みを和らげ、悪化を防ぐために、ご自宅でできる効果的なセルフケアをご紹介します。

痛みが強い急性期は、まずは安静とアイシングを優先し、無理に行わないでください。


ケア1:安静とアイシング(急性期):

運動後や、痛み、熱感、腫れが強い時は、まず「安静」が第一です。

原因となっている運動は中止しましょう。

そして、痛む部分を15分~20分程度「アイシング(冷却)」します。

ビニール袋に氷と少量の水を入れ、タオルで包んだものを当てると効果的です。



ケア2:ふくらはぎのストレッチ(慢性期):

アキレス腱の痛みの改善と予防には、ふくらはぎの筋肉の柔軟性を高めることが最も重要です。

痛みが少し落ち着いてきたら、丁寧に行いましょう。

壁に向かって立ち、両手を壁につけます。

痛む方の足を大きく後ろに引き、かかとを床につけたまま、前足の膝をゆっくりと曲げていきます。

ふくらはぎの上部(腓腹筋)が伸びるのを感じながら、20~30秒キープします。


次に、後ろ足の膝を少し曲げると、ふくらはぎの深層部(ヒラメ筋)とアキレス腱がより伸びます。

これも20~30秒キープしましょう。

反動をつけず、じわーっと伸ばすのがポイントです。



ケア3:足裏のセルフマッサージ:

足裏の筋肉(足底筋群)の硬さは、アキレス腱への負担にも繋がります。

ゴルフボールやテニスボールを床に置き、足裏でコロコロと転がし、土踏まずのあたりを重点的にほぐしましょう。



ケア4:ヒールリフト(かかと上げ運動):

痛みがかなり落ち着いてきたら、ふくらはぎとアキレス腱の機能を高めるための軽い筋力トレーニングも有効です。

壁や椅子に手をついて、まっすぐに立ちます。

両足のかかとを、ゆっくりとできるだけ高く持ち上げます。

ゆっくりと下ろします。これを10~15回程度繰り返します。

痛みが出る場合は、絶対に無理しないでください。



ケア5:靴やインソールの見直し:

かかと部分のクッション性が高く、衝撃を吸収してくれる靴を選びましょう。

また、扁平足や回内足がある場合は、アーチをサポートするインソールの使用が非常に効果的です。

まとめ:アキレス腱の痛みは「断裂」への警告サイン!根本ケアで再発を防ごう

さて、今回は「アキレス腱の痛み|運動後の痛みを放置するリスクとケア」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

単なる筋肉痛だと思っていたアキレス腱の痛みが、実はより深刻な状態への「警告サイン」である可能性をご理解いただけたかと思います。

そのサインを見逃さず、早めに適切なケアを行うことが、スポーツを長く楽しむため、そして健康な足を守るために非常に重要です。

では、今日のポイントをまとめます。

  • アキレス腱の痛みは、アキレス腱そのものに炎症が起こる「アキレス腱炎」や、アキレス腱を包む膜に炎症が起こる「アキレス腱周囲炎」が主な原因である。
  • 発症の背景には、使いすぎだけでなく、ふくらはぎの筋肉の硬さ、不適切なシューズ、加齢による変性、そして扁平足や骨盤の歪みといった体全体のバランスの乱れが大きく関わっている。
  • アキレス腱の痛みを放置すると、慢性化や腱の肥厚、パフォーマンス低下を招き、最悪の場合、アキレス腱断裂という大ケガに繋がるリスクがある。
  • セルフケアとして、急性期は安静とアイシングを優先し、慢性期にはふくらはぎのストレッチや足裏のマッサージ、軽い筋力トレーニング、靴やインソールの見直しが有効である。
  • 私たち整体師や鍼灸師は、痛みの緩和に加え、根本原因となり得る体全体の歪みを整え、筋肉のバランスを改善し、正しい体の使い方を指導することで、アキレス腱の痛みの根本改善と再発予防をサポートできる。


アキレス腱の痛みは、体からの重要なメッセージです。「これくらい大丈夫」と過信せず、その声に耳を傾けてあげてください。

もし、あなたがアキレス腱の痛みに悩んでいる、あるいは痛みを繰り返してしまっているなら、どうぞ一人で抱え込まず、私たち専門家にご相談ください。

あなたの体の状態を詳しく評価し、根本原因にアプローチすることで、再び痛みなく、思いっきり体を動かせる喜びを取り戻すお手伝いをさせていただきます。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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