股関節の痛み|歩き始めや立ち上がりが辛い【変形性股関節症】のケア

東角剛司

東角剛司

テーマ:身体の痛み・不調

みなさん、こんにちは!
こころ鍼灸整骨院の東角です。

「椅子から立ち上がる時に、足の付け根が痛む…」

「歩き始めの一歩が、なんだかギクシャクして痛い…」

「靴下を履いたり、足の爪を切ったりする動作がつらくなってきた…」

そんな、股関節、つまり「足の付け根」の痛みや動かしにくさに悩んでいませんか?

最初は軽い違和感だったものが、だんだんと痛みに変わり、日常生活の何気ない動作にも支障が出てくる…。

もし、そのような症状に心当たりがあるなら、それはもしかしたら「変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)」という、進行性の疾患が原因かもしれません。

「変形性」と聞くと、少し怖いイメージがあるかもしれませんが、放置することで症状が悪化し、最終的には手術が必要になることもある疾患です。


しかし、早い段階でその状態を正しく理解し、適切なケアや生活習慣の見直しを行うことで、痛みを和らげ、進行を遅らせ、自分の足で元気に歩き続けられる未来を守ることは十分に可能なのです。

今回は、そんな「変形性股関節症」とは一体どのような状態なのか、なぜ起こるのか、そして症状と上手に付き合っていくためのセルフケアや、私たち専門家ができるサポートについて、みなさんと一緒に詳しく見ていきたいと思います。

そもそも「変形性股関節症」ってどんな状態?

まず、「変形性股関節症」とは、どのような状態を指すのでしょうか?

股関節は、骨盤の受け皿(寛骨臼:かんこつきゅう)に、太ももの骨の先端(大腿骨頭:だいたいこっとう)がはまり込む形をした、体の中で最も大きな関節です。

正常な股関節では、この骨の表面が「関節軟骨(かんせつなんこつ)」という、滑らかで弾力性のあるクッション材で覆われており、スムーズな動きを可能にしています。

「変形性股関節症」とは、この関節軟骨が、何らかの原因ですり減ったり、変性したりすることで、骨同士が直接こすれ合い、炎症や痛み、関節の変形を引き起こす疾患です。

進行すると、骨の縁に「骨棘(こつきょく)」と呼ばれるトゲのようなものができたり、関節の隙間が狭くなったりします。



【変形性股関節症の主な症状】

症状は、進行度によって異なりますが、一般的には以下のようなものが現れます。

初期症状:
立ち上がりや歩き始めなど、動き始めに足の付け根(股関節)に軽い痛みや違和感を感じます。
しばらく動いていると、痛みは和らぐことが多いでしょう。


中期症状:
痛みが強くなり、歩行時や階段の上り下りなど、日常生活の様々な場面で痛みを感じるようになります。
関節の動きも悪くなり始め、「可動域制限」と言われる状態になります。
例えば、靴下を履く、足の爪を切る、あぐらをかくといった動作が困難になってきます。


末期症状:
安静にしていても痛みが続くようになり、夜間に痛みで目が覚める(夜間痛)ことも。
関節の変形がさらに進み、左右の足の長さに差が出て、歩く時にびっこを引く(跛行:はこう)ようになります。
日常生活に大きな支障をきたし、杖が必要になったり、最終的には手術(人工股関節置換術など)が検討されたりします。

なぜ起こるの?変形性股関節症の意外と知られていない原因

変形性股関節症は、欧米では加齢によるものがほとんどですが、日本では少し事情が異なります。


日本の患者さんの約8割!「臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)」:

これが、日本の変形性股関節症の最も多い原因です。

「臼蓋形成不全」とは、生まれつき、あるいは乳幼児期の発育過程で、骨盤の受け皿(寛骨臼)の「かぶり」が浅くなってしまっている状態を指します。

受け皿が浅いと、太ももの骨の先端(大腿骨頭)を十分に覆うことができず、体重がかかる面積が狭くなります。

その結果、狭い範囲の軟骨に集中して大きな負担がかかり続け、通常よりも早く軟骨がすり減ってしまうのです。

特に女性に多く、若い頃は自覚症状がなくても、加齢や体重増加、出産などをきっかけに、中年以降に痛みが出始めることが多いのです。



その他の原因:

①先天性股関節脱臼:生まれつき股関節がはずれている、あるいははずれていた既往がある場合。

②加齢:明確な原因がなくても、加齢とともに軟骨がすり減っていく場合。

③ケガ(外傷):股関節周りの骨折や脱臼などのケガの後遺症。

④病気:関節リウマチや、大腿骨頭壊死症といった病気が原因となることもあります。

構造医学的視点!「体の歪み」が症状を悪化させる

元々の原因が臼蓋形成不全などであったとしても、症状の進行スピードや痛みの程度には、日常生活の習慣や「体の歪み」が大きく関わっています。

これは、私たち整体師・鍼灸師が特に注目するポイントです。

体全体のバランスが崩れていると、ただでさえ負担がかかりやすい股関節に、さらに追い打ちをかけることになるのです。


骨盤の歪み:
体の土台である骨盤が歪んでいると、左右の股関節にかかる体重がアンバランスになります。
すると、片方の股関節にばかり過剰な負担がかかり、軟骨のすり減りを早めてしまう可能性があります。


背骨の歪み(猫背・反り腰など):
姿勢が悪いと、歩行時の重心バランスが崩れ、股関節に不自然な力がかかりやすくなります。
例えば、反り腰の方は、股関節の前側に詰まり感や痛みを感じやすい傾向があるでしょう。


膝や足首の歪み(O脚・X脚・扁平足など):
膝や足首のバランスが崩れていると、歩行時の地面からの衝撃をうまく吸収できず、その衝撃が股関節にまで伝わり、負担をかけてしまいます。


つまり、股関節の痛みは「股関節だけの問題」ではなく、体全体の構造的なバランスの乱れが、症状を悪化させる大きな要因となっているのです。

悪化を防ぎ、痛みと上手に付き合うための「生活習慣」

変形性股関節症の進行を遅らせ、痛みを和らげるためには、日常生活で股関節に負担をかけない工夫をすることが非常に重要です。

体重コントロール:
体重が1kg増えると、歩行時には股関節にその約3倍の負荷がかかると言われています。
適正体重を維持することは、股関節の負担を減らす上で最も効果的な方法の一つ。


和式から洋式の生活へ:
正座やあぐら、和式トイレ、床からの立ち座りといった動作は、股関節に大きな負担をかけます。
できるだけ、椅子やベッド、洋式トイレを使用する洋式の生活スタイルに切り替えることをお勧めします。


杖の使用:
痛みがある場合は、無理せず杖を使用しましょう。
杖は、痛い方と反対側の手で持つのが基本です。杖を使うことで、股関節にかかる負担を大幅に軽減できます。


靴の選び方:
ヒールの高い靴や底の硬い靴は避け、クッション性が高く、衝撃を吸収してくれるウォーキングシューズなどを選ぶのが良いでしょう。


体を冷やさない:
体が冷えると、血行が悪くなり、筋肉が硬くなって痛みが増すことがあります。
ぬるめのお風呂にゆっくり浸かったり、服装を工夫したりして、体を冷やさないようにしましょう。

今日から実践!股関節をいたわる「セルフケア」

股関節周りの筋肉の柔軟性を保ち、筋力を維持することは、痛みの緩和と進行予防に繋がります。

ただし、痛みが強い時に無理に行うのは禁物です。「痛気持ちいい」と感じる範囲で行ってください。


ケア1:股関節周りの筋力トレーニング(お尻上げ)
お尻の筋肉(大殿筋)は、股関節を支える重要な筋肉です。

仰向けに寝て、両膝を立て、足は腰幅程度に開きます。

ゆっくりと息を吐きながら、お尻を持ち上げます。

数秒キープしたら、ゆっくりと下ろします。これを10回程度繰り返しましょう。

腰を反らせすぎないよう、お尻の筋肉を意識するのがポイント。


ケア2:貧乏ゆすり運動
股関節の動きを滑らかにし、血行を促進する効果が期待できます。

椅子に少し浅めに腰掛けます。

かかとを床につけたまま、つま先を小刻みに上下に動かし、貧乏ゆすりのように膝を揺らします。

リラックスして、1日数回、数分間行ってみましょう。


ケア3:水中ウォーキングやプールでの運動

水中では、浮力によって股関節への負担を減らしながら、筋力トレーニングや関節の運動ができます。

痛みが強い方にもおすすめの運動です。

まとめ:股関節の痛みは体からのSOS!早期ケアで自分の足で歩き続けよう

さて、今回は「股関節の痛み|歩き始めや立ち上がりが辛い【変形性股関節症】のケア」というテーマでお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?

股関節の痛みは、単なる加齢現象と片付けずに、その背景にある原因を正しく理解し、早めに対処することが、将来の健康を守る上で非常に大切であることをご理解いただけたかと思います。

では、今日のポイントをまとめます。

  • 変形性股関節症は、関節軟骨がすり減ることで痛みや関節の変形を引き起こす疾患であり、日本では生まれつきの骨盤の形状(臼蓋形成不全)が主な原因であることが多い。
  • 初期症状は立ち上がりや歩き始めの痛みで、進行すると安静時痛や夜間痛、可動域制限、跛行などが現れる。
  • 体の歪み(骨盤、背骨、膝、足首など)は、股関節への負担を増大させ、症状を悪化させる大きな要因である。
  • 悪化を防ぐためには、体重コントロール、和式から洋式への生活スタイルの変更、杖の使用、クッション性の良い靴の選択、体を冷やさない工夫などが重要。
  • セルフケアとして、お尻の筋力トレーニングや貧乏ゆすり運動、水中ウォーキングなどが有効だが、痛みが強い時は無理しないこと。
  • 私たち整体師や鍼灸師は、股関節周りの筋肉の緊張緩和に加え、根本原因となり得る全身の歪みを整えることで、痛みの緩和と進行予防をサポートできる。


もし、あなたが股関節の痛みや動かしにくさでお悩みでしたら、どうぞ一人で我慢せず、まずは整形外科を受診し、正確な診断を受けてください。

その上で、「手術はまだ早いと言われたけれど、痛みをなんとかしたい」「体の歪みから根本的に見直したい」という場合は、ぜひ私たち専門家にご相談ください。

あなたのつらい痛みに寄り添い、いつまでも自分の足で元気に歩き続けられるよう、全力でサポートさせていただきます。

こころ鍼灸整骨院

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東角剛司
専門家

東角剛司(柔道整復師・はり師・きゅう師)

こころ鍼灸整骨院

構造医学の視点から、個々の体の動かし方に合わせて骨格を整えます。肩や腰などの慢性的な痛みに向き合い、整骨院に通わずに済む健康な体づくりをサポート。実務者向けのセミナーも開催しています。

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