金融教育×住教育から空き家対策を
住宅選びや住み替えをスムーズに進めるには、一定程度の空き家は必要になりますが、適切に管理されない空き家が増えると社会問題に発展します。
既述したように今後も空き家の増加が見込まれますが、どのような経緯で空き家は発生したのか、空き家の所有者の意識、維持管理や老朽化の実態はどうなっているのでしょうか。
(空き家の実態)
空き家にも一つひとつに歴史があり、その実態は異なります。ここでは「令和元年空き家所有者実態調査(国土交通省)」から、「その他空き家」に着目しその特徴を確認します。
「その他空き家」は、それ以外の種類の空き家に比べ、
・半数以上が相続で取得しているが、登記手続きの未了が多い。
・約4戸に1戸の空き家期間が20年以上と長く、建物の腐朽・破損が進んでいる。また旧耐震基準の建物が多い。
・半数近くが今後も利用予定がない空き家。
「その他空き家」は、建物の老朽化が進み、今後の予定もないために既に放置空き家であるとか、近い将来放置空き家になる可能性が高くなります。
また、土地所有者の死亡や移転に伴う相続登記や変更登記が未了のままでは、所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかなければ、いわゆる所有者不明土地が生まれてきます。
(マンションの空き家)
多くの(区分所有)マンションが現在、建物の高経年化と入居者の高齢化という二つの老いに直面しています。マンションは現在、空き家対策特別措置法の対象外ですが、戸建住宅と同様に空き家問題が悩みの一つです。
平成25年度マンション総合調査(国土交通省)の空室率(3か月以上の空室)に関するデータから、その特徴を確認します。
着目する点は、所在不明・連絡先不通住戸が20%を超えているマンションの存在です。いわゆる所有者不明住戸です。このような所有者不明住戸が増えれば、マンションの維持管理にも重大な支障を与えます。
調査対象1,688組合のうち37組合(2.2%)で、所有者不明住戸がマンション全体に占める割合が20%を超えています。37組合のうち、平成元年までに完成した高経年マンションが19組合と約半数を占めています。
大木(2014)は、建物の二つの劣化(構造的劣化と社会的劣化)が空き家の発生原因となり、二つの劣化が進むマンションは、好立地でも空き家の増加は免れないと指摘しています。
因みに、構造的劣化は、新耐震基準を備えていない、エレベーターがないなどバリアフリー化が不十分、長期修繕計画が作られていないとか修繕積立金が不足し適切な修繕がされていないなどが原因とする劣化です。社会的劣化とは、狭い専有面積や低い階高などが制約になって、現在の居住ニーズに応じた間取りや設備にキャッチアップできない状況を指します。
相続で取得した住宅は、相続後の準備をしていなかった、或いはできない事情があって、手付かずのまま放置されることも少なくありません。その間に建物は老朽化して所有者等の腰が段々と重くなり、放置期間が長引くほど、腐朽・破損が更に進行する悪循環に陥っていると言えます。
このような背景には、所有者の無責任さだけでなく、相続や共有によって権利関係が複雑に絡み、糸口を見つけられないでいる所有者もいるはずです。そこには問題を先送りしたいという心理が働いているようにも思えます。
<参考文献>
「都市の空閑地空き家を考える」(2014)浅見泰司編「老朽マンションにおける空き住戸問題」(大木祐悟)