住まい選びにおける消費者の潜在ニーズを考える
(はじめに)
住まいの消費者教育の必要性を感じるのは、やはり「現場」です。以前に賃貸住宅の入居者対応をしていた時に、幾度となく入居者の住まいにまつわる情報不足や知識不足を目の当たりにしました。「もっと契約書をしっかり読んで欲しい」「共同生活のルールを学んで欲しい」などの思いに少なからず至りました。
もちろん、このことは入居者だけの責任ではありません。管理者も含めた住まいに関連する全員の問題と捉えるべきでしょう。今回のコラムでは、現場で実感した住まいの消費s教育の必要性を取り上げます。
(契約書を読む)
皆さんは、住宅を買ったり借りたりする場合、しっかりと契約内容を確認していますか。まずは、契約前には契約書を読むという習慣づけをお勧めします。賃貸契約書には、貸主と借主の権利義務が記載されていますが、時々、全く目を通していないなと思えるケースもあります。
例えば、「共用部分には私物を置かない」といった契約で禁止されている行為を知らない入居者に出くわすことがあります。禁止行為と知った上でする確信犯もいますが、それを「知らなかった」という入居者もいます。契約書は普段なじみがないものですが、事前に目を通して理解しておくべき書面です。
(建物特性を知る)
次に建物特性を考慮した暮らし方の理解です。賃貸住宅のような共同住宅の生活では、戸建住宅と異なり、音や振動などの生活音が伝わりやすい特性があります。そのため、近隣への配慮やお互い様という心掛けが求められます。
しかしながら、そのことに想像が及ばない入居者がいるのも事実です。故意に騒音を出すようなケースは論外として、足音に注意する、テレビのボリュームに気を配る、ドアの開閉を静かにする、といったことで皆が機嫌よく過ごせるようになります。
(原則と特約を知る)
賃貸住宅で最も多い相談が、退去時に負担する原状回復費用に関連することです。その大きな原因は貸主の説明不足ですが、一方で入居者も賢くなることが大切です。
過大な修理費を請求された場合、原状回復費用の原則や、特約の有無と内容を理解しているだけで、貸主や管理会社への対応に大きな差が生じます。国土交通省からも原状回復のガイドラインが出ています。一度、目を通しておくだけでも大いに参考になります。
(学びを機会をつくる)
これらは一例ですが、住まいに関わる者として、住まいの消費者教育の必要性を強く感じています。賃貸住宅は気軽に住み替えができるため、ともすれば深く考えないまま入居を決める傾向が見られます。
一方で消費者の学びの機会が多くないことも実感しています。住まいの専門家として、一人でも多くの消費者が、住まい教育を通してトラブルを避け、理想の住まいの実現を応援していきます。