大人のための住まい教育実践に向けて①
令和4年4月1日、シニアの住まい研究所を「住まいの消費者教育研究所」に名称変更しました。同時に、サービス対象をこれまでのシニアに加えて、年代に関係なく住まいに関わる消費者全般とします。高齢期の住まいの安心・安全を実現するためにも、学校教育を含めた幅広い住まい教育が必要だと判断したためです。
住まいにまつわるトラブル
多くの消費者にとり住宅は一生で最も高い買い物(借り物)です。気に入らないとか問題があるからといって、簡単に返品や取り換えができるものではありません。そして、運悪くトラブルに発展すれば、経済的にも精神的にも大きな痛手を受けます。
不動産取引に伴う紛争相談のなかで、最も多いトラブルが重要事項の説明に関連するもので、その他に瑕疵や契約解除に絡む問題などがあります。また、代表的な消費者相談窓口である(独)国民生活センターには、リフォーム工事や賃貸住宅の敷金返還や原状回復にまつわるトラブル相談が多く寄せられています。賃貸住宅の関係では、次のような事案があります。
•6カ月居住した賃貸アパートを退去した。玄関の壁紙のわずかな傷で全面の張替え費用を請求され不満だ。
•管理会社の了解を得て賃貸マンションの光回線工事をしたが、退去時に、工事は許可していないと言われ、原状回復費用を請求された。
•賃貸マンションを退去したところ、高額なハウスクリーニング代を請求された。納得できない。
•4年前に契約した賃貸マンションを退去したが、契約当時に提出した現状確認書を管理会社が紛失し、入居時についていた傷まで含めた修復費用を請求された。
•亡くなった母が住んでいた賃貸住宅を引き払ったが、原状回復費用としてふすまの張替費用などを請求されている。支払う必要があるのか。
同様なトラブルが毎年続いています。
なぜ住まい教育なのか
トラブルに遭遇すれば、事案の重大性や内容に応じて、弁護士や建築士などの専門家や消費者相談窓口などへ相談したりしますが、できるなら未然防止を図りたいものです。しかしながら、海千山千の業者に対抗できるほど、消費者は住まい選びなどの経験値は高くありません。
そもそも住まい選びは、人生の大きな選択の一つです。どう住まうかは、どう生きるかにも通じます。にもかかわらず、衣食住の「住」教育を受ける機会は多くありません。学校教育でもインテリアや建築的要素の比重が大きく、商品としての住まいを考える消費者視点は十分とは言えません。住まいへの認識を高めていくには、住まい教育の場の創造と提供、これが必要です。
住まい教育の目的の一つは、消費者が自分に適した暮らしや住まいを主体的に選択できる能力の育成です。具体には、住まいという商品選択に必要な情報処理能力、価格・賃料や維持管理などの知識習得があります。消費者の主体性を育てるシステムの構築が求められます。
当研究所では、消費者を対象とする住まい教育の実践に向けて、新たな歩みを始めます。