高齢者住宅の情報探索を阻害する要因って何?
老人福祉法第29条第7項で、有料老人ホームの設置者は、入居する者又は入居しようとする者に対して、重要事項を開示しなければならないとされています。そこでは、事業主体の概要、施設の概要、従業員や職員体制に関する事項、サービスの内容、利用料金、入居者の状況、施設から解約が求められる場合など幅広い内容が記載されます。
不動産取引に行われる重要事項説明とは異なり、多くは各施設のホームページからダウンロードができ、また郵送してもらい事前に確認することができます。あらかじめ不明な箇所を整理してから、施設見学時に確認することができます。また、重要事項説明書を比較することで、施設ごとの違いをおおよそ把握することは可能です。
しかし、有料老人ホームの重要事項説明書の内容は広範囲かつ専門的であり、一般の方が一読しただけで理解することは簡単ではありません。そこで、今回は最も関心が高いと思われる利用料金を取り上げます。入居時の初期費用の金額や支払い方法、毎月必要となる費用の内訳などが把握できる最重要項目の一つです。
利用料金の項目には、利用料の支払い方法、支払い方法別の料金プラン、家賃やサービス費などの算出根拠、介護保険サービスの自己負担額、料金改定の手続きなどが記載されています。
(利用料金の支払方法)
一時金方式か月払い方式(一時金は不要)、そのいずれかの選択方式かを確認します。一時金方式には、月払いの家賃相当額のある場合とない場合とがあります。
(料金プラン)
施設により呼び方は異なりますが、一時金以外の利用料金には、家賃相当額、上乗せ介護サービス費、食費、管理費、水光熱費などがあります。含まれる費用を確認することで、そこには含まれない消耗品費などをチェックします。入居後に発生する費用全体を把握して資金計画を作成します。それぞれの費用について算定根拠が記載されています。介護サービスの手厚い施設は、上乗せサービス費の負担など介護費用が高くなる傾向です。
金額と同時に、どこまで丁寧に分かりやすく説明されているかも重要なポイントです。情報公開や説明責任に対する運営会社の姿勢の違いが出てくる項目です。
(入居一時金の償却と返還金)
一時金方式を採用している場合は、その算定根拠、想定居住期間、償却年月数、初期償却額などが記載されています。一時金の償却方法や償却期間が終了する前に退去した場合について、返還金の算定方法を確認します。
入居一時金の金額の根拠として、「1か月の家賃相当額×想定居住期間+想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する額」などと記載されたりしています。ここで言う想定居住期間とは、確率的に入居者のうち概ね50%の方が入居し続けることが予想される期間として、当施設が定める期間のことです。
例えば、入居一時金が1000万円、初期償却が20%、償却期間60カ月の場合、初期償却額の200万円を除いた800万円が60か月(5年間)で償却されます。例えば、36か月(3年目)に退去した場合、480万円は償却され、残りの320万円が返還される仕組みです。居住期間が60か月を経過すれば、返還金はなくなります。初期償却の200万円は、想定居住期間を超えて契約が継続する場合に備えて受領する金額となります。
(まとめ)
有料老人ホームの重要事項説明書にある利用料金のチェックポイントを次の通りです。
・支払い方法の種類と選択方法
・利用料金の種類と根拠、その他の費用
・一時金の償却と返還額
・月額負担金額とその比較
以上