金融教育×住教育から空き家対策を
どのような条件が備われば、高齢者にとって歩きやすい街になるのでしょうか。高齢者は加齢とともに身体能力が衰え、危険を察知する認知力も低下します。一人ひとりの状態は異なり、比較的元気な方から介助がなければ街に出られない方まで多様です。またモータリゼーションが進むなかで、歩行者が歩きやすいと感じる街が少なくなったのではないでしょうか。
一方で「ウォーカビリティ(Walkability)という言葉が最近使われ始めています。ウォーカビリティとは、英語で歩くの「walk」と、できるの「able」を組み合わせて出来た形容詞「walkable(歩くことができる、歩きやすい)」の名詞形で、環境の「歩きやすさ」を意味します。ウォーカビリティが高い都市とは、日常生活の中に歩行を取り入れやすい都市を指します。
東大の山田育穂先生によると、ウォーカビリティが高い空間を以下のように定義しています。
●人がたくさんいて、街に活気があるか ⇒ 人口密度(Population Density)
●安全で快適な道路か ⇒ 歩行者に優しい道路デザイン(Pedestrian-friendly Design)
●様々な目的地・訪問先があるか ⇒ 土地利用の多様性(Land use Diversity)「街に活気があって楽しそうだと家に籠っていないで外出したいと思える」、「道路が安全で快適であれば歩きまわりやすい」、「歩いていきたいと思える目的地があればきっと歩くだろう」といった自然と歩くことができそうな環境を言います。ウォーカビリティが高い都市では、エネルギー消費量が高くなり、肥満の予防・解消にもつながるのではないかと期待されています。
また国土交通省では「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成を目指し、国内外の先進事例などの情報共有や、政策づくりに向けた国と地方とのプラットフォームに参加し、ウォーカブルなまちづくりを共に推進する「ウォーカブル推進都市」を募集しています。現在260以上の市町村がその趣旨に賛同し実現を目指しており、道路空間の再編や交通規制の見直しなどを含む将来ビジョンの作成や実証実験の企画・実施・評価を行っています。そこでは単純な交通量調査に留まらず、アクティビティに関する調査やビッグデータ、交通シミュレーションを用いた定量的な分析をもって地元の合意形成を支援しています。
官民連携による「居心地がよく歩きたくなるまちなか」の事例に一つに、愛媛県松山市にある花園町通りがあります。片側3車線あった道路を片側1車線に減らし、歩行空間を拡大するとともに、沿道施設が一体となった整備と利活用を行うことで、街路空間がウォーカブルな空間へと生まれ変わりました。このような空間が市内の中心にできれば、高齢者にとっても歩きやすい心地良い居場所となり、外出が楽しみになってくると思われます。
http://www.city.matsuyama.ehime.jp/shisei/koho/khm/khm/khm2017/kouhou20171101.files/20171101-01.pdf
今後、ウォーカブルな街が高齢期の住まい選びの指標になるのではないでしょうか。