自宅に住み続けるには温熱環境にご注意

菊池浩史

菊池浩史

懸念されていた新型コロナウイルス感染症の「第3波」が収まる気配がありません。17日には国内の新たな感染者が3211人確認され、過去最高を更新しました。厚生労働省の発表では11月18日、全国の新規陽性者数は2179人と過去最多を更新しました。年末年始を含め外出自粛により在宅時間が長くなることから、今回は住宅環境、特に高齢者にとり重要な温熱環境に着目します。

ところで住宅ストックの断熱性能(国交省2017)によると、断熱化の現状は現行基準を満たすものは10%で、無断熱の住宅が約1/3を占めています。
【図表挿入】
住宅ストックの断熱性能


また国土交通省では、5年間(平成26~30 年度)に亘り温熱環境に関する調査を行いました。断熱改修を予定する住宅を対象に、改修前後における居住者の血圧や身体活動量など健康への影響を検証しています。調査数は、断熱改修を予定する住宅に居住する4,131 人(2,307 軒)について、改修前の健康調査を行うとともに、そのうち既に断熱改修を実施した1,194 人(679 軒)については改修後の健康調査を実施しています。

得られたデータに基づく検証の結果、住宅の室内環境が血圧など健康関連事象に与える影響について、以下の知見が得られつつあることが確認されました。
1. 室温が年間を通じて安定している住宅では、居住者の血圧の季節差が顕著に小さい。
2. 居住者の血圧は、部屋間の温度差が大きく、床近傍の室温が低い住宅で有意に高い。
3. 断熱改修後に、居住者の起床時の最高血圧が有意に低下。
4. 室温が低い家では、コレステロール値が基準範囲を超える人、心電図の異常所見がある人が有意に多い。
5. 就寝前の室温が低い住宅ほど、過活動膀胱症状(トイレが近い)を有する人が有意に多い。断熱改修後に就寝前居間室温が上昇した住宅では、過活動膀胱症状が有意に緩和。
6. 床近傍の室温が低い住宅では、様々な疾病・症状を有する人が有意に多い。
7. 断熱改修に伴う室温上昇によって暖房習慣が変化した住宅では、住宅内身体活動時間が有意に増加。

温熱環境を改善する住宅改修にはどのような支援策があるのでしょうか。
一つは介護保険による支援です。支給額は最大18万円(工事費用20万円の9割まで支給)で次の支給要件があります。
・ 要介護認定で「要支援・要介護」と認定されていること
・ 改修する住宅の住所が被保険者証の住所と同一で、本人が実際に居住していること
・ 一定の介護リフォーム工事を行うこと
その他には自治体により住宅改修費の補助があります。例えば大阪市には高齢者住宅改修費給付事業があり、大阪市内に住所を有し、介護保険料段階が第1~6段階であり、要介護認定で要支援以上の認定を受けた高齢者のいる世帯が対象となります。対象となる住宅改修は日常生活の利便を図るもので、介護保険制度の居宅介護住宅改修費制度に関連し、その給付対象とならない工事で、介護保険制度の住宅改修と同時に行われる工事となります。
 
気候変動によって私たちが暮らす住環境は大きく変わりつつあります。暑すぎる家、寒すぎる家は快適ではないばかりか、健康にも影響を与えることが実証されつつあります。まずは自宅の現状を知ることから始めませんか。

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住まいの消費者教育研究所

住まいにまつわるビジネス経験や、不動産鑑定士としての専門的知見を活かし、顧客ファーストで「住まい教育」を普及・実践。住まい選びやメンテナンス、そして家仕舞いまで、ワンストップでトータルサポートします。

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