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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

空き家を作らないために

2020年12月11日 公開 / 2021年2月18日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: DIY相続問題相続税

平成30年住宅・土地統計調査(総務省)によると、2018年には約850万戸もの空き家があり、空き家率13.6%と過去最高です(図表➀)。この傾向は今後も続く見通しですが、この背景には、高齢者の持ち家率と単身高齢者の増加があります。
<図表①>

空き家率


高齢者世帯とそれ以外の世帯の持ち家率を比較したものが図表➁です。約10年間、それぞれの持ち家率には大きな変動はなく、高齢者世帯の持ち家率は80%を超えています。今後、単身高齢者の数は益々増加し、20年後には高齢者世帯の20%以上が単身世帯となる見通しです。持ち家率が高い単身高齢者が増えてくれば、死亡した後に空き家が増加する大きな要因になります。
<図表②>

持ち家率

このような背景から「空き家対策特別措置法」が2015年5月に施行されました。同法の特定空き家に指定されると、措置の実施のための立ち入り調査、更に指導→勧告→命令→代執行の措置が可能になります。同法では次のような空き家を特定空き家と呼びます。
・倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態
・著しく衛生上有害となる恐れのある状態
・適切な管理が行われないことにより、著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空き家に指定されれば、固定資産税の住宅地特例(200㎡までは課税標準が1/6、200㎡を超える部分は1/3に軽減)が適用されなくなり、税額が6倍程度に一気に増加します。例えばこれまで20万円課税されていれば100万円を超え、相当な負担増になります。また以前のコラムでご紹介したように、神戸市では来年度から特定空き家以外にも利活用の見込みがなく老朽化が進んだ一定の空き家について、固定資産税の税制優遇を順次廃止する方針です。

このような空き家に対する規制強化の動きとコスト増加が現実味を増してくれば、今まで以上に空き家活用が求められる時代になります。売却できるような空き家なら問題ありませんが、悩ましいのは流動性が劣る空き家の活用です。敷地が狭小である土地、間口が狭い土地や奥行きが長い土地、借地権や借家権などの権利が付着した土地、共有関係にある土地、また再建築不可な建物や農地などが代表例です。利用予定が無ければ可能な限り早期処分するのが鉄則ですが、通常の処分が難しければ、空き家バンクに登録、最低限のリフォームで賃貸DIY住宅、ペット可住宅、民泊、バイク置場や駐車場などの検討も必要になります。

空き家の活用は簡単ではありません。土地単体の問題ではなく、地域自体が衰退して需要が喪失したケースもあります。それでもできることから始めることです。まずは住まいの現状把握です。権利関係、物理的状況、資産価値、相続人の範囲、今後発生する住まいに纏わる費用の試算などです。それと同時に高齢期をどのように暮らしたいか、という目的を関係者で話し合うことです。

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