自然災害と高齢者施設

菊池浩史

菊池浩史

地球温暖化による気候変動がもたらす自然災害、中でも豪雨災害が頻発・激甚化しています。今年も熊本県南部を中心に岐阜県や長野県などで甚大な被害が出ています。関東や甲信越、東北地方を襲った台風15号、19号(2019年)、西日本豪雨(2018年)、九州北部豪雨(2017年)、関東・東北豪雨(2015年)、8月豪雨(2014年)、九州北部豪雨(2012年)など、毎年日本列島に大きな爪痕を残しています。

豪雨災害は高齢者施設にも容赦なく襲い掛かります。令和2年7月豪雨では、7月9日時点で高齢者施設の被害は全国で78施設に上っています(厚労省発表)。熊本県の特別養護老人ホーム「千寿園」では入所者14名と職員1名が犠牲になりました。4年前の台風10号でも岩手県内の河川が氾濫し、近くのグループホームの入所者9名全員が亡くなりました。

自然災害を考慮した立地戦略のある高齢者施設は殆どないでしょう。災害危険度の高い地域に立地する高齢者施設も少なくないと予想されます。しかしながら災害要配慮者である高齢者が暮らす場であるにも関わらず、災害対応を謡うホームページやパンフレットにお目にかかったことがありません。国土交通省では都市計画法や都市再生特別措置法を改正して、災害レッドゾーン(災害危険区域等)での有料老人ホームやグループホームの開発が原則禁止になりました(施行日は未定)。

これからの高齢者施設選びに当たっては、立地するエリアの災害危険度を確認することが求められます。市区町村が公開しているハザードマップで被害想定が一定程度可能です。ハザードマップとは、自然災害による被害の軽減や防災対策の目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図のことであり、河川氾濫や内水氾濫、津波浸水などが想定できます。

自然災害に纏わる情報発信をする高齢者施設が殆どないなかで、選択する側がしっかりと確認しなければなりません。「停電時や断水時の対応」について、是非、聞いてみてください。その時にどのような回答になるかが大きなポイントです。“すり替え型”や“取り合わない型”でなく、“しっかり受けとめ型”になっているでしょうか。そして“できること”と“できないこと”をきっちりと説明されているでしょうか。そのようなところから、自然災害に対する意識と備えを窺い知ることができます。

豪雨災害が特別なものではなくなりました。宅地建物取引業法の改正でハザードマップを活用した水害リスクの説明が来月から義務化されます。但し、同法が適用されない高齢者施設の入居にあたっては、自己責任が求められます。安心・安全な高齢期の住まいのためにも、災害リスクとそれへの備えをしっかりと見極めましょう。

以上

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住まいの消費者教育研究所

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