なぜ人は眠るのか ― 経営判断を左右する生理機能

樋口麻理

樋口麻理

テーマ:企業研修



眠らなくても生きられるなら、なぜ「眠る機能」は存在するのか
― 脳科学が示す、人材パフォーマンスの本質
企業において、生産性や判断力の差はどこで生まれるのでしょうか。
同じ経験を持ち、同じ知識を持つ人材であっても、
日によって判断の質や集中力、業務効率に差が生じることがあります。
多くの場合、こうした差は能力、経験、意欲といった個人の資質の問題として解釈されます。
しかし近年、この差の背景には、
睡眠によって変化する生理機能の状態が大きく関与している可能性があると指摘されています。
つまり、日々のパフォーマンスの差は、能力そのものの差ではなく、
能力を発揮できる「機能状態」の差によって生じている可能性があるのです。
ここで、みなさんに質問します。
もし、重要な意思決定が、本来の機能を十分に発揮できていない状態で行われているとしたら、
組織にどのような影響が生じるでしょうか。
この視点は、これまでほとんど注目されてこなかったのではないでしょうか。

睡眠は「休息」ではなく、生理機能を維持するための必須プロセス
私たちは、水や食事を摂取しなければ生命を維持することはできません。
一方で、睡眠は外界への反応性が低下し、
無防備な状態で目を閉じ、身体を横たえるという、
生存という観点から見れば、一見すると不利とも言える状態です。
極端に言えば、睡眠を一晩取らなくても、
直ちに生命の危機に直結するわけではありません。
そのため、業務や生活の都合により、
睡眠はしばしば優先順位を下げて扱われています。
人間の進化の過程において、
生存に不利となる機能は淘汰されてきました。
にもかかわらず、「睡眠」という機能はすべての人間に備わっています。
これは、睡眠が単なる休息ではなく、
生命維持および機能維持に不可欠な生理機能であることを示していると考えます。

睡眠中、身体では多くの重要な調整が行われています。
例えば、
・日中に得た情報の整理と記憶の定着
・神経回路の再構築
・脳内および身体に蓄積した代謝産物の除去
・ホルモンバランスの調整
・免疫機能の維持
・感情の安定化
・注意力および判断力の回復
などです。
これらは、
翌日の認知機能、意思決定能力、行動精度を維持するために不可欠なプロセスです。
つまり睡眠は、
単に疲労を回復させる時間ではなく、
人間の機能そのものを維持し、再構築するための時間といえるでしょう。

睡眠不足が引き起こすのは「能力低下」ではなく「機能低下」
睡眠不足の状態では、
・判断速度の低下
・注意力の低下
・作業効率の低下
・ミスの増加
・感情制御の低下
が生じることが知られています。
ここで重要なのは、
これは意欲や責任感の問題ではないという点です。
睡眠不足によって生じているのは、
能力そのものの消失ではなく、
能力を発揮するための生理機能の低下です。
つまり、
「能力がない」のではなく、
「能力を発揮できない状態」になっているのです。
この違いは、組織にとって極めて重要な意味を持ちます。
なぜなら、機能低下は、
本人の努力だけでは解決できない領域だからです。

睡眠は、個人の問題ではなく、組織のパフォーマンス基盤である
企業において重要とされる、
・生産性
・意思決定の質
・安全性
・創造性
これらはすべて、人間の生理機能に依存しています。
そして、その機能は睡眠によって維持されています。
つまり睡眠は、個人の生活習慣の問題ではなく、
組織全体のパフォーマンスを左右する基盤要素です。
もし組織内で、
・ヒューマンエラーの増加
・判断ミスによる機会損失
・集中力の低下
・生産性の不安定化
が生じている場合、その背景には、睡眠による機能低下が関与している可能性があります。
これは見えにくい要因であるため、これまで見過ごされてきました。
しかし実際には、組織の成果は、人材の能力だけでなく、その機能状態によって大きく左右されています。

睡眠は「失われる時間」ではなく、「機能を回復させる投資」である
睡眠は、時間を失う行為ではありません。
むしろ、
判断力を回復させる時間 集中力を再構築する時間 本来の能力を発揮できる状態を取り戻す時間 です。

睡眠に対する認識が変わると、
パフォーマンスに対する認識も変わります。
そして、パフォーマンスに対する認識が変わると、組織の成果そのものが変わります。

重要なのは、
問題は能力ではなく、機能状態である可能性があるという視点です。
この視点を持つことが、人材パフォーマンス管理の本質的な第一歩になります。

睡眠管理は、人材パフォーマンス管理の一部である
これまで、睡眠は個人の自己管理の問題として扱われてきました。
しかし現在では、睡眠は、これは福利厚生ではなく、組織パフォーマンスを最大化するための戦略的要素です。

過去の投稿も参考にいただけますと幸いです。
人はなぜ眠る?眠りが未来を変える理由
なぜ睡眠教育をお伝えするの?


企業研修・個別相談について
組織における生産性向上および意思決定能力の向上を目的とした睡眠教育研修、
および経営者・管理職・個人向けの個別相談を行っております。
・社員の生産性向上のための睡眠研修
・管理職の意思決定能力向上
・ヒューマンエラー予防対策
・経営者および個人のパフォーマンス改善

など、それぞれの課題に応じた対応が可能です。
人材の能力を最大限に活かすために必要なのは、
能力開発だけではなく、能力を発揮できる機能状態を整えることです。
詳細については、お問い合わせください。

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樋口麻理
専門家

樋口麻理(睡眠健康指導士)

株式会社印笑

医療・教育の分野を知る睡眠健康指導士が、生活や社会活動の基盤となる睡眠管理をテーマに自己実現や子育て、健康維持をサポート。フェイスメソッドで、いびき対策や顔のこわばり改善などお伝えします。

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