冬の睡眠は“見えない損失” ~健康経営・生産性向上・離職防止を左右する~

樋口麻理

樋口麻理

テーマ:企業研修


年末に向けて業務が慌ただしくなるこの時期、企業にとって“静かな損失”が生まれています。
今季は寒暖差も加わり感染症が広がり、
「何となく不調の人が増えた」 「ミスが多い」 「集中力が続かない」
そんな声が聞こえます。

実はこの現象、冬に乱れやすい“睡眠”が深く関わっています。
たとえば、睡眠時間が短い社員は同列の睡眠時間を確保している社員に比べて欠勤・プレゼンティーイズムに相当する損失を招くとされ(※1)、
睡眠が6時間未満の労働者は生産性損失が約2.4ポイント高いという報告もあります(※2)。
さらに、睡眠が7時間未満の人は風邪にかかるリスクが高く、感染での欠勤増につながります(※3)。
冬の「日照不足・乾燥・暖房の影響」はこれらのリスクをさらに高め、
生産性低下・ミス増加・欠勤増・離職リスクの上昇へと直結します。
睡眠は、もはや個人の生活習慣ではなく、企業の経営課題です。


■ 1. 冬に急増する「睡眠負債」という経営リスク

 冬は日照時間が短くなり、体内時計が乱れやすくなります。
  光による覚醒刺激が弱くなることで、メラトニン分泌(眠気ホルモン)が過剰になり、
 以下の状態が生まれます。

 • 朝の立ち上がりが遅くなる
 • 判断力・集中力・記憶力が低下
 • 業務スピードの鈍化
• ヒューマンエラーの増加
さらに、睡眠不足は免疫力を低下させ、
冬場のインフルエンザや風邪の感染リスクが上昇。
特定の社員が長期離脱することで、チーム全体の稼働率が落ち、
リーダー層が穴埋めに回るという“悪循環”が発生します。
つまり冬は、企業全体で 「睡眠負債が積み上がる季節」 なのです。

■ 2. 睡眠悪化が生む“企業にとっての見えない損失”

   睡眠の乱れは、数字に表れない損失を大量に生みます。
  ● 生産性低下
    集中力30%低下、判断ミスの増加、作業効率の低下。
    これらは日報では見えませんが、年間で大きな労働損失を生みます。
  ● ヒューマンエラーの増加
    IT・製造・医療など、少しの判断ミスが業務リスクにつながる領域では特に致命的です。
  ● 欠勤・休職コストの上昇
    免疫低下で冬の感染症が増加。
    1名の長期休職は、チームの業務負荷・残業・モチベーション低下に直結します。
  ● 医療費の増大
    慢性的な睡眠不足は、高血圧・メンタル不調・肥満などにつながり、企業負担の医療費増   
   加を招きます。
  ● 離職リスクの増加
  睡眠問題は
   「仕事についていけない」「疲れが取れない」 → モチベーション低下 → 離職意向の増加
    という流れを生みやすいことが分かっています。
    特にマネジメント層が睡眠不足に陥ると、判断力・リーダーシップが低下し、
    組織全体のパフォーマンスが崩れます。

■ 3. 睡眠は“福利厚生”ではなく“経営投資”である

欧米では、睡眠改善を「経営戦略」として扱う企業が増加しています。
日本でも 睡眠改善プログラムを導入した企業では、
• 生産性向上 • 医療費削減 • 離職率低下 • メンタル不調の減少• 集中力の創造性を向上
といった効果がデータで示されています。

  つまり睡眠は、「社員の健康管理」ではなく「企業競争力の源泉」**です。

■ 4. 睡眠は“健康経営のKPI”として最も見える化しやす

健康経営のプログラムは「効果測定が難しい」という弱点があります。
しかし睡眠は違います。
• 睡眠時間 • 睡眠の質 • 昼間の眠気 • 生産性指標(業務効率・ミス率)
   これらは数値化しやすく、改善効果が“目に見える”形で表れます。
   経営者にとって ROI(投資対効果)の見える健康経営施策 なのです。

■ 5. 冬こそ、企業が取り組むべき「睡眠マネジメント」

冬は睡眠が乱れやすく、企業リスクも増える季節。
だからこそ、冬場にこそ睡眠改善に取り組む価値があります。
● 社員教育:正しい睡眠知識の提供
  体内時計・光・メラトニン・食事・入浴など、根拠に基づく情報を提供するだけで改善が
見込めます。
● 管理職研修:意思決定の精度を守る
  リーダー層の睡眠質は、組織パフォーマンスに直結。
● 職場環境:光・温度・休憩の改善
  冬は特に照度不足が起きやすく、業務効率に影響します。
● 睡眠をKPIとして扱う
  睡眠指標を継続的に可視化すれば、健康経営の効果が見える化されます。

■ 6. 睡眠を整えれば、生産性も離職率も下がる

睡眠が整うと、社員は以下の状態になります。
 • 集中力・判断力が向上 • 長期離脱者の減少 • モチベーションアップ 
  • チームの稼働率上昇  • メンタル不調の予防 • 組織の一体感が向上  • 感染症リスク低下



これはすべて、経営者が求める 成果そのもの です。
結論:睡眠を整えることは“企業の成長戦略”である
   睡眠は「個人の健康問題」ではありません。
   社員の睡眠は、 生産性・健康・医療費・離職・組織文化 を左右する、最も影響力の大き  
   い経営レバーです。
   冬は、企業にとって睡眠改善の“最大のチャンス”。
   ここで手を打つかどうかで、来期の業績・組織の安定性は大きく変わります。
   睡眠を整えることは、企業の未来を守る“経営投資”であり、最もコスパの良い健康経営施   
   策です。

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樋口麻理
専門家

樋口麻理(睡眠健康指導士)

株式会社印笑

医療・教育の分野を知る睡眠健康指導士が、生活や社会活動の基盤となる睡眠管理をテーマに自己実現や子育て、健康維持をサポート。フェイスメソッドで、いびき対策や顔のこわばり改善などお伝えします。

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