梅雨と夏の寝苦しい夜が仕事効率を奪う!
今日から7月。
先日、関西では異例の“梅雨明け”が発表され、
すでに真夏のような暑さが続いています。
昼夜を問わず高温多湿な日々が続くと、
知らず知らずのうちに睡眠の質が低下していきます。
睡眠の乱れは、体調だけでなく、気分や集中力、
仕事のパフォーマンスにも大きな影響を与えます。
だからこそ今、“夏の快眠習慣”を見直す、絶好のタイミングです。
今回は、「人はなぜ眠るのか?」という睡眠の原点に立ち返りながら、
睡眠と深く関係するいくつかの要素についてお伝えしたいと思います。
これまで、「なぜ眠るのか」「睡眠が何に影響するのか」について、
学校教育などで深く学ぶ機会がほとんどありませんでした。
多くの人が「睡眠は大事」と認識しているのは、
テレビやSNSなどメディアを通して得た知識が中心ではないでしょうか。
実際には、「何がどう良くて」「どんな環境や生活リズムが望ましいのか」
睡眠だけに焦点を当てて考えたことがある人は意外と少ないかもしれません。
さらに、「自分の生活には合わない」「環境を一度に変えるのは難しい」と
感じる方もいらっしゃると思います。
だからこそ今日は、原点に立ち戻って、睡眠の基本から一緒に考えてみたいのです。
1. そもそも、人はなぜ眠るのか?
講演の冒頭ではいつも、参加者のみなさんにこう質問します。
「なぜ、あなたは眠るのですか?」
この問いに対しては、さまざまな答えが返ってきます。
「夜だから」「暗くなるから」「眠くなるから」
一見すると素朴な答えですが、実はどれも正解なのです。
最近では、「体のリズムの仕組みだから」「脳が休むため」など、
専門的な知識を交えた回答も増えました。
それは、メディアやネットの普及によって、睡眠に関する情報が広く共有されるようになったからです。
ただ、この質問の本質的な答えはとてもシンプルです。
それは──「人が眠るのは、生きるため」。
つまり、睡眠は本能的な生命維持行動なのです。
現代社会では、情報や刺激があふれ、スマホひとつで退屈を感じることなく過ごせる時代になりました。
両手を使えば、世界中の人とつながったり、ゲームを楽しんだり、知識を深めたりすることもできます。
この便利さは、私自身も大いに恩恵を受けています。
でもその一方で、「終わりがない便利さ」は、つい眠ることを後回しにさせてしまいます。
眠る時間を削ってまで得られる情報や楽しさの裏側で、
心と体には確実に“負担”がたまっていくことも、忘れてはならない事実です。
では、なぜ人は眠るのか?主な目的は次の4つです。
• 生命維持のための本能的リセット
心拍数や代謝を抑制し、エネルギー消費を最小限に抑えることで、体の各器官を休息モードへ移行させます。
•記憶・記録の整理/定着
日中に得た膨大な情報を脳内で分類・統合し、重要な知識や経験を長期記憶へと固定化します。
•脳・心・体のメンテナンス
グリンパティック系による老廃物の除去、成長ホルモンの分泌による細胞修復、ストレスホルモンのバランス調整など、多岐にわたる修復作業が行われます。
•情動・認知の安定化
夢やレム睡眠中の脳活動を通じて感情体験を再構築し、
注意力・判断力・創造性を回復させるとともに、ストレス耐性を高めます。
これらの機能を果たすため、光や視覚情報を遮断することが鍵です。
「暗くなるから」「夜だから」というシンプルな現象は、実は眠りの本質を示すサイン。
眠りを誘発するメラトニンなどのホルモンは光に弱く、光を遮ることで分泌が促されます。
界が断たれると、外界からの情報入力がストップし、
脳は記憶整理やメンテナンスという“与えられた任務”に専念
できるというイメージです。
2.じゃ永遠と眠らない環境で起き続けることはできるのか?
現代社会は情報があふれかえっているので、指1本で退屈することなく過ごせます。
両手を使えば、ひとりでも仲間を増やしゲームで楽しむことができたり、知りたいと思えは検索や学ぶ時間にも
なるほど、便利で豊かな環境にあると思います。
この便利、私も大好きでお世話になっていますが、エンドレスなため、眠ることを忘れて続けてしまうと
心身に多くな負担が生じることも分かっています。
こんな論文をみつけたのでご紹介しましょう。
実験の概要と観察内容
1964年、アメリカ・カリフォルニア州のAさん 高校生(当時17歳)は、
自由研究の一環として、「どこまで眠らずにいられるか」という挑戦をしました。
その結果、264時間(=約11日間)、一度も眠ることなく起き続けることに成功。
この記録は、医学的に観察された中での最長無睡眠記録として、語られている話です。
(追記)
この実験には、スタンフォード大学のウィリアム・ディメント博士らが立ち会い、医学的な観察が行われたうえ
で実施しています。また、脳波測定機器を用いり心理状態の変化も記録されています。
実験中に見られた主な症状
• 2〜3日目:記憶力や注意力の低下
• 4日目以降:言語の乱れ、感情不安定
• 6日目以降:幻覚、被害妄想、動作のぎこちなさ
• 最終日:質問に対する理解が困難になり、会話が成立しない状態
しかし、無睡眠を終えた彼がそのまま回復睡眠(約14時間)をとると、数日以内に脳と体の機能は元に戻ったと報告されています。
【注意点と意義】
この記録はあくまで「医学的な監視下にあったこと、極めて特殊な例」です。
現代では倫理的にも同様の実験はほぼ行われておらず、一般人が真似をすることは極めて危険です。
ただし、この記録が示す重要なことは、
「眠らないことが、脳や心にどれほどの負荷をかけるか」ということが明らかにされた事例です。
たった数日眠れないだけで、人は“自分らしさ”を保てなくなることが分かりました。
動物実験では、感染症をおこし死んでしまったという結果もありました。
参考文献
•Gulevich G., Dement W., Johnson L. (1966). Psychiatric and EEG observations on a case of prolonged wakefulness. Arch Gen Psychiatry, 15(1), 29-35.
Wikipedia「Randy Gardner sleep deprivation experiment」
https://en.wikipedia.org/wiki/Randy_Gardner_sleep_deprivation_experiment
3. まとめ
今回は「なぜ眠るのか」をテーマにお話ししました。
しかし、現状では学校教育の現場でもごく一部の地域でしか睡眠の重要性が取り上げられておらず、多くの人がその大切さをまだ十分に理解できていません。
睡眠は生命維持に不可欠なだけでなく、パフォーマンス向上やメンタル・身体の健康にも深く関わっています。
日中の課題解決に目を向けるのはもちろん大切ですが、その背後で働く「睡眠」に注目することで、新たな改善策が見えてくるはずです。
当社では、幼稚園から企業研修まで幅広く睡眠教育を実施しています。
ぜひ一緒に、睡眠の価値を再確認し、より健やかな毎日をつくっていきましょう。
次回は「睡眠にまつわる具体的な問題点と改善策」についてお話しします。