知らないと損する 6月の不調と睡眠について

樋口麻理

樋口麻理

テーマ:企業研修


なぜ6月、社員は突然不調に落ちるのか?

4月、新年度が始まると同時に、多くの社員が新たな環境に適応しようと気を張り続けます。
配属、昇格、異動、プロジェクト開始など。
この2か月間、見えないストレスは確実に蓄積しています。
そして、6月。
表面的には何も問題がないように見えても、内側では限界を迎えた社員たちが、
次々と不調に陥り始めるのです。
これは、新入社員が対象の話ではありません。
中堅社員も、ベテラン社員も、役職者も等しく起こりうる現象です。

ゴールデンウィーク明けの「5月病」、そして「6月病」へ

4月の緊張、5月の小休止、そして――6月。
ゴールデンウィーク明けに感じる倦怠感や無気力感は、
一般に「5月病」と呼ばれます。
しかし、最近はそれよりも遅れて症状が現れる人が増え、
「6月病」という俗病も広がりつつあります。
5月病と6月病の違い

なぜ6月は特別なのか?

1. 環境変化がひと段落し、緊張が緩む
2. ストレスの「貯金」が限界を超える
3. 梅雨の気候変動による自律神経の乱れ
4. 仕事の本格スタートによるプレッシャー増大
特に梅雨時期は、湿度と気温差の影響で自律神経が乱れやすくなり、
心身の回復力が大きく落ち込みます。
そのタイミングで蓄積された疲労感と気づかない重圧感。
結果、6月に心身不調が噴き出すのは、必然ともいえるのです。

見逃せない「社員不調」のサインとは?

以下の兆候が、職場で一人でも見られたら要注意です。
• いつもより表情が暗い
• 作業スピードが落ちている
• ミスが急に増えた
• 遅刻・早退・欠勤が目立つ
• 無気力、覇気がない
• 小さなことで怒りっぽくなった
• 体調不良(頭痛・腹痛・めまいなど)を訴える
一人ひとりは些細な変化でも、
放置しておくと、組織全体のパフォーマンス低下につながります。
実際、ある企業のデータでは、
「職場の3割以上が軽度~中等度の不調を抱えると、
プロジェクト進行率が20%以上低下する」という結果もあります。
つまり、気づいていない不調者がいらっしゃるということです。

睡眠不足が「負の連鎖」を生む

ここで注目したいのが、不調の大元は“睡眠”であるということ。
人間の心身は、睡眠中に修復しています。
ところが、ストレスや気候変動により睡眠の質が低下すると、
回復せず、負荷だけが蓄積します。

睡眠不足

脳機能低下

パフォーマンス低下

ストレス増加

重症化


この負のループは、解消されることはありません。
むしろ放置すればするほど、 「抑うつ状態」「休職・退職」「深刻な疾病リスク」
へと進行していきます。

だから今、睡眠教育が必要だ

ここまで読んでいただいた方には、
「睡眠が大事」ということや、
「睡眠が組織リスクに直結している」という事実が伝わったはずです。

では、実際にどうするか? 答えはシンプルです。 睡眠リテラシー(知識と習慣)を、社員全体で高めること。
• 社内でできる睡眠教育の具体策
• マネジメント層向け睡眠サポートの考え方
• 国内外企業の成功事例紹介
• 研修プログラム導入による期待効果
• まとめ&アクションプラン提案
って流れで、さらに厚く展開します。

社員全体で「睡眠リテラシー
」を高めるためることだと考えます。
多くの人にとってはまだなじみが薄い言葉だと思います。
簡単にいうと、
正しい睡眠知識を身につけ、それを日常で実践できる力
」です。
この力が社員全体に根付くと、
6月に限らず、1年を通して心身を安定させられるようになります。
では、何をどう伝えればいいのか?
ここでは「すぐできる社内睡眠教育のステップ」を紹介します。
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社内でできる睡眠教育の進め方
まず「睡眠の誤解」を修正
社員向け研修やセミナーでは、
最初に**「よくある睡眠の勘違い」**を正すところから始めると効果的です。
例えばこんな誤解
• 週末の夜更かしと寝だめはOK
• お酒を飲むとよく眠れる
• 夜型は体質だから眠れないのは仕方ない
• 短時間睡眠でも慣れれば元気だから大丈夫」
これらはすべて間違いです。
ここを押さえるだけでも、
「今までの自分の常識は違ったのかも」と気づく社員が必ず出てきます。
________________________________________
睡眠の「基本ルール」をシンプルに伝える
難しいものではなく、出来ることから始めるを目標に、
「誰でも今日から実践できるルール」を共有しましょう。
例えば……
• 毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きる
• 休日も2時間以上寝坊しない
• 起床後はすぐ朝日を浴びる
• 夜はスマホ・パソコンの光を控える
• 眠る90分前までに入浴を済ませる
• ベッドの上では「寝る」以外をしない
こうした基本行動を徹底するだけで、
自然に睡眠の質は改善していきます。
難しい理論は要りません。
「できる・できない」ではなく、
「やるか・やらないか」で変わる領域なのです。
________________________________________
この後に
「睡眠チェックシート」で可視化するなど
口頭だけでは実感が得られないためにお勧めしています。
自分自身の「睡眠の弱点」が見えてきます。
そして、それを元に小さな改善目標を設定します。
(例:「まずは朝起きたらカーテンを開ける」など)
ポイントは、
完璧を求めないこと。
まず「気づく」→「一歩だけ変える」だけで充分です。
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管理職・リーダー層には「部下の睡眠マネジメント」を
現場のマネージャーやリーダーには、
自分自身の睡眠改善だけでなく、
部下の睡眠状態にも気を配る視点を持ってもらいましょう。
専門的なアドバイスよりも、小さな変化をキャッチするために
声かけ、
① 対面でのあいさつ 
② 勤務状態(欠勤、遅刻)
③ 健康状態 表情など 
「睡眠」を無関心にせず、マネジメント対象に含める
これがこれからの組織には必要不可欠になります。
________________________________________
海外企業ではすでに「睡眠研修」が標準化しつつある
実は、海外ではすでに「睡眠教育」を
正式な社員研修プログラムに組み込む企業が急増しています。
たとえば、
• Google:社内に睡眠改善のための「ナップポッド(仮眠室)」を設置
• ナイキ:勤務時間中に短時間仮眠を推奨
• プロクター・アンド・ギャンブル(P&G):社員向け睡眠セミナーを定期開催
• アメリカ陸軍:兵士に対して「睡眠を最優先する」教育を実施

理由はシンプルです。 「睡眠はコストではない。最強の投資だから」
睡眠を整えた社員のほうが、
•生産性が高い
• 事故リスクが下がる
• 離職率が下がる
• 医療費コストも削減できる
つまり、企業にとってもメリットだらけなのです。

(まとめ)6月こそ、睡眠教育を本気で始めるタイミング
最後に、改めて。
なぜ、今「睡眠教育」なのかをお伝えしました。


参考資料
スタンフォード大学|Matthew Walker博士著『Why We Sleep』
 著者:Matthew Walker(スタンフォード大学・睡眠神経科学者)
 表題:「Why We Sleep: Unlocking the Power of Sleep and Dreams」
 URL:https://www.sleepdiplomat.com/why-we-sleep

RAND Corporation|『Why Sleep Matters: The Economic Costs of Insufficient Sleep』
 団体:RAND Corporation(米国の政策研究機関)
 表題:「Why Sleep Matters: The Economic Costs of Insufficient Sleep」
 URL:https://www.rand.org/pubs/research_reports/RR1791.html

Gartner|Employee Well-Being Programs Report (2020)
 団体:Gartner(世界最大級のリサーチ・アドバイザリー企業)
 表題:「Employee Well-Being Programs Improve Retention and Performance」
 URL:https://www.gartner.com/en/articles/employee-well-being-programs-improve-retention-and-performance

NASA Ames Research Center|『Napping Improves Performance and Alertness』
 団体:NASA Ames Research Center
 表題:「Napping Improves Performance and Alertness」
 URL:https://ntrs.nasa.gov/citations/19950013180

日本産業衛生学会|『夜勤従事者に対する睡眠支援の効果』
 団体:日本産業衛生学会
 表題:「夜勤従事者に対する睡眠支援の効果」(2022年発表)
 URL:https://www.sanei.or.jp/

厚生労働省|『健康経営優良法人2023 調査報告書』
 団体:厚生労働省
 表題:「健康経営優良法人2023 調査報告書」
 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177188.html

Google|『The Science of Naps』
 団体:Google Inc.
 表題:「The Science of Naps」
 URL:https://www.google.com/about/jobs/lifeatgoogle/nap-pods/
 ※参考記事:https://www.businessinsider.com/google-nap-pods-photos-2015-10

Apple|Apple公式ウェルビーイングプログラム
 団体:Apple Inc.
 表題:「Wellness Programs at Apple」
 URL:https://www.apple.com/careers/us/benefits.html

Amazon|『Wellness and Sleep Guidelines for Warehouse Associates』
 団体:Amazon.com, Inc.
 表題:「Amazon Wellness and Sleep Guidelines」
 URL:https://www.aboutamazon.com/news/workplace/employee-health-wellness-safety

厚生労働省|『若年労働者における健康問題と睡眠習慣調査(2020)』
 団体:厚生労働省
 表題:「若年労働者における健康問題と睡眠習慣調査」
 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13879.html

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樋口麻理
専門家

樋口麻理(睡眠健康指導士)

株式会社印笑

医療・教育の分野を知る睡眠健康指導士が、生活や社会活動の基盤となる睡眠管理をテーマに自己実現や子育て、健康維持をサポート。フェイスメソッドで、いびき対策や顔のこわばり改善などお伝えします。

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