長屋でも耐震補強はできる
長屋を切り離す際の最初の関門は住人や所有者の承諾を得ること
連棟長屋など、連なった家の一部分を切り離し建替えやリフォームなどを行うことになった際、まずやらなくてはならないことは、隣家などその長屋に住んでいる方の合意を得ることです。さらにその建物の所有者の承諾も必要となります。
これは「建物の区分所有等に関する法律」。通称「区分所有法」という法律で定められていて、柱や梁が自分の敷地内にあったとしても、建物全体を支える構造の一部分のため各所有者の共用物であるとされています。
切り離しには、これら柱や梁の切断も必要ですので、全所有者の4分の3の承諾と隣家の住人の合意がなければ切り離しもできないという決まりです。
実際に住んでいる人と所有者が別でなかなか連絡が取れなかったり、一旦は承諾が取れたにもかかわらず、それ以外の人間がそれを覆してしまうなど工事以前の段階で色々とトラブルが起きることが多々あります。しっかりと説明をした上で、書面での承諾を取るなど円滑に、そしてなおかつ慎重に進めていかなくてはなりません。
長屋の切り離しにおいて隣家とトラブルが起きるパターン
切り離しの合意が取れれば、それですべての問題がなくなるという訳ではありません。工事を進めていく上では、隣家とのトラブルには特に気をつけなければなりません。
連棟長屋は、切り離すことを前提に建てられてはいないため、一棟全体で強度を保つ構造になっています。つまり切り離すことにより、隣家の耐震強度が著しく落ちてしまう可能性が高いのです。
また壁だけではなく、屋根がつながっている部分を切り離すとなると、雨漏りなどの心配もあるため、耐震だけではなく防水、さらには防火などに関する補修にも応じる必要があります。
他にも工事による家の傾きや騒音、ほこりによる体調不良を訴えてくるなど、隣家とのトラブルの種はたくさんあるのです。
トラブルを未然に防ぐ方法
こういったトラブルを未然に防ぐ方法として、まずは工事前の合意を取る段階で、できる限りの誠意を持って交渉にあたることです。
そして建築士や土地家屋調査士など、専門家立会いのもとに事前調査をしっかりと行います。この時点で家の傾きを確認し、補修工事の内容も書面にして共有すれば後々にトラブルが起きるリスクを減らすことができます。
隣家の補修工事は、原状回復が基本となっており、それ以上の耐震補強工事のすべての負担をしなくてはならないという法律はありません。
しかし工事後も隣同士として暮らしていくわけですし、工事中は多くの迷惑をかけることになりますので、お互いの妥協点を探りつつ、円満に進めていくことが最大のポイントとなります。