AIを使える新人ほど育成が難しくなる 沖縄企業が見直すべきOJTの設計
「それ、社長に確認してから返事します」
丁寧な対応に聞こえます。
実際、確認しなければいけないこともあります。
ただ、この言葉が社内で一日に何度も出ているなら、少し立ち止まって考えたい。
見積もりも、日程の変更も、お客さんへの返信も、全部社長の確認待ちになっていないでしょうか。
社員は働いている。社長も忙しい。目の前の仕事は、何とか終わっている。
それでも、社長が一日連絡を取れなくなった途端、返事のできない案件が積み上がる。
それは会社が回っているというより、社長が回し続けている状態かもしれません。
人を採ったのに、自分の仕事が減らない
社長が判断を抱えるようになったのには、理由があるはずです。
以前、任せて失敗した。
自分が答えた方が早い。
お客さんとの付き合いが長く、事情を一番分かっている。
創業当初なら、それで乗り切る場面も多いと思います。自分で売って、現場に入り、お金を管理する。会社を守るために、何でも判断してきた。
ところが、社員が増えてもそのやり方が変わらないと、人が増えるほど確認も増えます。
作業する手は増えたのに、決める人は一人のまま。
社員からすると、勝手に進めて怒られるくらいなら、先に聞いた方が安全です。聞けば社長が答えてくれるので、自分で考えるより確認する方が確実になります。
社長は「もっと自分で考えてほしい」と思う。
社員は「どこまで決めていいのか分からない」と思う。
お互いに仕事を進めたいのに、すれ違ってしまうんです。
AI社員を増やしても、承認待ちは減らない
ここにAIを入れると、どうなるでしょうか。
メールの下書きはすぐにできます。
提案書の案も、見積もりに必要な情報も、以前より短い時間でそろうかもしれません。
でも、全部を社長が一から確認していたら、最後はそこで止まります。
むしろ、AIが仕事を速く進めるほど、社長の前に確認待ちが積み上がることもあります。
「社員が足りない」と思っていたけれど、実は足りなかったのは、社員が判断できる範囲だった。AIを使って初めて、そのことがはっきりする会社もあるでしょう。
だからといって、AIに何でも決めさせればいいわけではありません。契約、価格変更、外部への送信など、影響の大きい操作には人の確認が必要です。
ただ、その確認をすべて社長一人に集める必要があるのかは、別の話です。
作業を任せるだけでなく、誰が何を決めるかまで変えなければ、社長の忙しさは残ります。
見積もり一枚で、どこまで社長が見る必要があるか
例えば、既存のお客さんから、いつもと同じサービスの見積もりを頼まれたとします。ここからは説明のための例です。
料金表もある。提供する内容も決まっている。それでも担当者が見積もりを作り、社長に送り、返事が来るまで提出できない。
社長が見ているのは、何でしょうか。
計算が合っているか。
利益が残るか。
特別な約束をしていないか。
納期に無理がないか。
その確認内容を一つずつ分けると、社長でなくても確かめられる部分が見つかります。
計算や記入漏れは、仕組みで確認できるかもしれない。
決まった料金、通常の納期、追加条件なしなら、担当者や責任者の確認で出せるかもしれない。
値引きが必要な場合や、通常と違う契約条件がある場合だけ、社長へ相談する。
こうすれば、社長はすべての見積書を読み込むのではなく、会社として判断が必要な案件に時間を使えます。
大事なのは「もう自分でやって」ではありません。
「この条件なら進めてよい。この条件からは相談してほしい」と、境目を伝えることです。
渡したいのは、社長の答えより「その答えにした理由」
営業でも、同じことが起きます。
社員が商談から戻るたびに、社長が次の提案を考える。提案書を直し、価格を決め、連絡するタイミングまで指示する。
その場の商談は進みます。でも、社員の手元に残るのが指示だけなら、次の案件でもまた社長が必要になります。
僕が営業を教えるときに大切にしているのは、うまくいった言葉だけを渡さないことです。
なぜ、あの質問をしたのか。
なぜ、今回は提案を急がなかったのか。
なぜ、値引きではなく内容の変更を提案したのか。
そこまで話すと、社員は次に似た場面が来たとき、自分で考える材料を持てます。
例えば「このお客さんには、まだ見積もりを出さない」とだけ言うのではなく、「必要な時期と、社内で誰が決めるかを確認できていないから、先にそこを聞こう」と伝える。
これなら、別のお客さんにも応用できます。
AIを使う場合も、社長の判断理由を整理して、社内で見返せる形にする補助はできます。ただし、AIがまとめた内容が実際の方針と合っているかは、人が確認する必要があります。
立派なマニュアルを何十ページも作るより、今日迷った案件について、判断の理由を短く残す。その方が、現場で使えることもあります。
任せた後に、毎回ひっくり返さない
任せる範囲を決めても、社長が後から全部直してしまうと、元に戻ります。
決められた条件を守って進めたのに、「自分ならこうした」と毎回変更される。そうなると、社員は次から確認するようになります。
もちろん、お客さんに不利益が出ることや、大きな損失につながることは止めなければいけません。
ただ、社長の好みと違うことと、仕事として間違っていることは分けたい。
説明の順番や、メールの細かい言い回しが違っても、必要な内容が伝わり、約束を守れているなら、そのまま進めてよい場面もあるはずです。
任せた結果を振り返って、判断の基準に不足があれば直す。社員の能力だけの問題にせず、渡した情報や決めた範囲も見直す。
社長と全く同じやり方を再現することを求めると、いつまでも社長しかできない仕事になってしまいます。
社長がいない日に止まった仕事を、一つ選ぶ
いきなり大きく権限を渡す必要はありません。
次に出張や休みで社長が不在になるとき、「何が社長待ちになったか」を残してもらってください。
返事が遅れた問い合わせ。
提出できなかった見積もり。
決められなかった日程。
確認待ちで止まった発注。
その中から、何度も起きていて、間違えた場合の影響を小さく抑えられる仕事を一つ選びます。
誰が判断するか。どの条件なら進めてよいか。迷ったときは誰に相談するか。社長に連絡がつかない場合はどうするか。
そこまで決めて、試してみる。
人にもAIにも、任せる範囲と止まる条件が必要です。何でも社長が抱えることと、何でも任せることの間には、会社ごとに決められる分担があります。
社長が休めないことを、会社の強さにしない
社長がいなくなったら回らない会社は、社長自身にとっても負担が大きいものです。
体調を崩したときだけではありません。大切な商談に集中したい日、新しい事業を考えたい日にも、細かな確認が入ってくる。
今日の仕事を終わらせるために、会社の先を考える時間がなくなる。その状態が続けば、現状は維持できても、次へ進む余力が残りません。
社長にしかできない判断はあります。だからこそ、社長でなくても決められることまで抱えない方がいい。
BLUE LEAFでは、営業の進め方を整える際も、電話の件数や商談の話し方だけでなく、「誰の、どの判断で仕事が止まっているか」を一緒に確認します。AIで減らせる作業と、人に渡すべき判断を分けることも、その一つです。
人を採っても、AIを入れても、自分の忙しさが変わらない。
そう感じているなら、次に増やすべきものは人数やツールではないのかもしれません。まず、社長の確認待ちになっている仕事を、一つ見せてください。
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