夏の集客を一発勝負にしない 沖縄企業のテストマーケティング設計
「普段は会社員なので、自分で営業する時間がありません。代わりに売ってもらえませんか?」
最近、弊社にもこうした相談が寄せられます。
AIでサービスやツールを作り、副業として販売したい。開発はできるけれど、営業やマーケティングは得意ではない。だから、その部分を任せたいというお話です。
営業を仕事にしている僕としては、頼っていただけるのはありがたいことです。
ただ、詳しく伺うと、すぐに営業を始めるより、先に整理した方がよさそうなケースがあります。
よくあるのが、知り合いの困りごとを解決するために作ったツールです。
実際に使ってもらい、喜んでもらえた。だったら、同じような会社にも売れるのではないか。
この発想は自然です。最初の一人の役に立ったという経験は、事業を始めるうえで貴重な手応えでもあります。
ただ、ここに一つ、見落としやすいことがあります。
「その人に喜ばれた理由」と「ほかの会社がお金を払う理由」は、必ずしも同じではないんです。
お客さんの要望から作った。それでも売り手目線になる理由
お客さんの困りごとを出発点に商品を考えることを、「マーケットイン」と呼びます。
一方、自分たちが作れるものや、作りたいものを出発点にするのが「プロダクトアウト」です。
この言葉だけで考えると、知り合いの要望に応えて作ったツールは、マーケットインに見えます。実際、その人に向けて作っている段階では、そうだったのでしょう。
ところが、ほかの会社に売ろうとした瞬間に、話が変わります。
「この会社は何に困っているだろう」ではなく、「もう作ったこのツールを、どこかに売れないだろう」と考え始めるからです。
作ったきっかけはお客さんの要望でも、売り方を考える段階で、商品が先に立ってしまう。
今回お伝えしたいのは、ここです。
知り合い一人の要望は、その人にとって必要だったことの証拠にはなります。ただ、それだけで同じ業種の会社にも需要があるとは言い切れません。
しかも、「便利だね」と言ってもらえることと、毎月料金を払って使ってもらえることの間にも、距離があります。
同じ「見積書が大変」でも、中身は違う
例えば、知り合いの会社から「見積書を作るのが大変」と相談され、AIで見積書の下書きを作るツールを開発したとします。ここからは説明のための仮の例です。
その会社では、文章を入力する作業に時間がかかっていた。そこで下書きが出るようにしたら、仕事が楽になった。
ところが、別の会社を訪ねると、見積書で困っているのは同じでも、時間がかかる理由が違います。
過去の価格を探すのに手間取っている会社もあれば、社長の確認待ちで止まっている会社もある。取引先ごとに書式が違い、転記を繰り返している会社もあります。
こうした会社に「AIが文章を作ってくれます」と説明しても、反応は薄いかもしれません。
文章を書くことが、一番の負担ではないからです。
「見積書に困っている会社」という分け方では、まだ大きすぎる。同じ仕事をしていても、どこで手が止まるのかまで見なければ、商品の必要性は分かりません。
ここを確認せずに営業先だけ増やしても、断られる件数が増えてしまいます。
知り合いは、商品以外も買ってくれている
もう一つ考えたいのが、知り合いだから使ってくれた可能性です。
困ったらすぐに連絡できる。自分の会社の事情を分かってくれている。多少使いにくくても、相談すれば直してくれる。
その安心感まで含めて、「使ってみよう」と思ってくれたのかもしれません。
初めて会う会社には、まだその関係がありません。
本業のある方が提供するサービスなら、「平日の昼間に止まったら、誰が対応するのか」と気になる担当者もいるでしょう。今使っているソフトから切り替える手間や、社員への説明を負担に感じることもあります。
機能の説明を増やしても、こうした不安への答えにはなりません。
新しいお客さんに売るには、ツールの便利さに加えて、導入後の仕事がどう変わるのか、困ったときにどう対応してもらえるのかまで伝える必要があります。
営業代行は、「誰に必要か」を飛ばせない
「営業が苦手なので、得意な人に任せる」
これは合理的な判断だと思います。何でも一人で抱える必要はありません。
ただし、営業を任せることと、売れるかどうかの検証を済ませることは別です。
誰の、どの困りごとに役立つのか。今のやり方を変えてまで使う理由があるのか。その理由に対して、価格は見合っているのか。
ここが曖昧なままだと、営業担当者は機能を説明するしかなくなります。
「AIを搭載しています」
「いろいろな作業に使えます」
「業務を効率化できます」
どれも間違いではなくても、電話を受けた相手には、自分の仕事との関係が見えません。
例えば、実際にその課題へ対応できる商品なら、「見積書を作るたびに、過去のファイルを探し直していませんか」と聞く方が、話の入口になります。
AIのすごさより、相手が昨日も困っていたこと。その話から始められるかどうかで、営業の会話は変わります。
もちろん、言い方だけ変えれば売れるわけではありません。入口の言葉と、実際に解決できることが合っている必要があります。
売り始める前に、知らない会社の話を聞く
僕なら、最初に喜んでくれた方へ、もう一度話を聞きます。
使う前は、どの作業に困っていたのか。使ってから何が変わったのか。あまり使っていない機能は何か。もし使えなくなったら、どのくらい困るのか。
褒めてもらうためではなく、何が本当に役立っているのかを知るためです。
そのうえで、同じような状況にありそうな、まだ接点のない会社にも話を聞いてみます。
最初から商品説明をするのではなく、今どうやって仕事を進めているのか、どこに手間がかかっているのかを伺う。すると、似た困りごとが見つかることもあれば、こちらの想像と違う事情が出てくることもあります。
その反応をもとに、営業先を絞り直したり、最初に伝える内容を変えたりする。必要なら、商品の提供範囲も見直します。
弊社が営業支援で大切にしているのも、この順番です。
いきなり大量の会社へ連絡するのではなく、小さく試して、相手の反応を確かめる。話を聞いてもらえた理由も、断られた理由も、次の営業に使います。
アポイントが取れたから検証終了、ではありません。その後、料金を払って使ってもらえるか、使い続けてもらえるかまで見て、初めて分かることがあります。
作れるようになったからこそ、作る前の会話が大事になる
AIのおかげで、以前なら開発を諦めていた人も、自分のアイデアを形にできるようになりました。それは、とてもいいことだと思います。
知り合いの仕事を楽にしたツールが、ほかの誰かの役に立つ可能性もあります。
ただ、「作れた。喜ばれた。あとは営業を頼めば売れる」と、一気に進めない方がいい。
次に確かめたいのは、同じように困っていて、解決のためにお金を払いたい人が、ほかにもいるかどうかです。
そこで相手の話を聞き直すことは、せっかく作った商品を否定する作業ではありません。必要としてくれる人を、もう少し正確に探すための作業です。
「営業代行を頼みたいけれど、まだ商品が固まっていない」
「知り合いには喜ばれたが、ほかの会社への売り方が分からない」
BLUE LEAFでは、そうした段階からご相談を受けています。
お話を伺った結果、「今は営業件数を増やすより、先にお客さんに聞いてみましょう」とお伝えすることもあります。営業を依頼するために、無理に準備を整えていただく必要はありません。
売り込む言葉を考える前に、誰なら本当に必要としてくれそうか。そこから一緒に整理できればと思っています。
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