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令和3年の民法等の改正(9)

竹下勇夫

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テーマ:民法等の改正

~所有者不明土地等の管理制度~

 土地の所有者が所在不明となり、当該土地の管理等をしない場合には、土地の所有者に代わって当該土地の管理等をする者を選任するなどの措置が必要となります。現行民法においては、不在者の財産の管理制度や、相続財産の管理制度を置き、土地の所有者が不在者になっている場合や、死亡して相続人のあることが明らかでない状態になっている場合に対応することができるようにしています。もっとも、既存の財産管理制度については、管理コストが高く、利用が困難であるとの指摘があり、財産管理制度を見直す必要があると考えられます。

 以上の様な観点から、「第3節 共有」の次に、「第4節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令」の節が設けられ、第264条の2から第264条の8までの規定が新たに設けられました。

 また、土地が現に管理されておらず、そのことによって他人の権利又は法律上の利益が受忍限度を超えて侵害され、又は侵害されるおそれがあるときは、現行法でも、当該他人は、土地の所有者に対し、物権的請求権や人格権に基づき、是正措置を求めることができますが、例えば、継続的な管理が必要となるケースや、あらかじめ是正措置の内容を確定することが困難であり、訴訟手続で権利行使をすることが困難であるケースなどでは、土地管理人による管理を認めることが必要な場合もあると考えられます。

 このような場合に対応するため、新たに、「第5節 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令」の節を設け、第264条の9から第264条の14の規定を設けました。

 第4節においては、裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地について、必要があるときは、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分(所有者不明土地管理命令)をすることができるとし、この場合には、裁判所は、所有者不明土地管理人を選任しなければならない、としました(第264条の2)

そして、この場合には、所有者不明土地等の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属すること、保存行為及び所有者不明土地等の性質を変えない範囲内においてその利用又は改良を目的とする行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならないこと(第264条の3)、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告としなければならないこと(第264条の4)、所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、また、共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平に、その権限を行使しなければならないこと(第264条の5)、所有者不明土地管理人の解任及び辞任に関する規定(第264条の6)、報酬に関する規定(第264条の7)、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない場合における所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人に関する上記と同旨の規定(第264条の8)が設けられました。

 また、第5節においては、裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を選任して、その管理を命ずる処分(管理不全土地管理命令)をすることができるとし(第264条の9)、管理不全土地管理人は、管理不全土地等について、管理及び処分をする権限を有し、保存行為及び管理不全土地等の性質を変えない範囲内においてその利用又は改良を目的とする行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならないこと、管理不全土地の処分について裁判所が許可をするときは、所有者の同意が必要であることが定められ(第264条の10)、管理土地不全土地管理人の義務(第264条の11)、解任及び辞任(第264条の12)、報酬等(第264条の13)について、所有者不明土地管理人に対するのと同様の規定が設けられました。

 また、裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、管理不全建物管理人を選任して、その管理を命ずる処分(管理不全建物管理命令)をすることができるとし、管理不全土地管理に関する上記条文が準用されています(第264条の14)。  —続—

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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