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竹下勇夫

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竹下勇夫(たけしたいさお) / 弁護士

弁護士法人ACLOGOS

コラム

令和3年の民法等の改正(8)

2021年9月26日 公開 / 2021年9月27日更新

テーマ:民法等の改正

コラムカテゴリ:法律関連

~共有制度の見直し④~

 裁判による共有物の分割に関する第258条も改正された。

 第1項は、裁判所に共有物の分割請求ができる場合として、「共有者間に協議が調わないとき」のみを挙げていましたが、改正第1項は、「協議をすることができないとき」を加えました。最高裁判所昭和46年6月18日判決は、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため協議ができない場合も共有物の分割請求ができると判断しており、改正法はこの点を明確にしました。

 新設された改正第2項は、裁判所は、①共有物の現物を分割する方法、②共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法、によって共有物の分割を命ずることができる、と規定しました。これも、特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法によることも許されるとした最高裁平成8年10月31日判決の立場を明文化したものです。

 さらに新設された改正第4項は、裁判所は、共有物分割訴訟において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる、としています。

 次に、所在等不明共有者の持分の取得に関する第262条の2が新設されました。第1項で、不動産が共有されている場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき(その共有者を「所在等不明共有者」といいます。」は、共有者の請求によって、裁判所は、その請求者に、所在等不明所有者の持分を取得させる旨の裁判をすることができること、第2項で、共有物分割請求や遺産分割請求があって、異議の届出が出された場合には前項の裁判をすることができないこと、第3項で、所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合で共同相続人間で遺産分割をすべき場合には、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は第1項の裁判をすることができないこと、第4項で、共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、持分を取得した共有者に対して、時価相当額の支払を請求することができること、第5項で、これらの規定は、不動産の地上権・賃借権等の準共有持分についても準用する、とする各規定が設けられました。

 また、所在等不明所有者の持分の譲渡に関する第262条の3が新設され、第1項で、不動産が共有されている場合において所在等不明共有者以外の共有者全員が同意していれば、所在等不明共有者の持分を含む不動産全体を売却することを共有者は裁判所に請求し、裁判所は、請求した共有者に所在等不明共有者の持分を特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができるとし、第2項から第4項まで、第262条の2の第3項から第5項までと同様の規定が置かれています。   —続—

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