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低額譲受⑤

竹下勇夫

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テーマ:低額譲受・ケース①(1)

■ 財産評価基本通達6項とは

 財産の評価方法を定めた財産評価基本通達は、その6項で「この通達の定めにより難い場合の評価」について下記のように定めています。

「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」

 これは、財産評価基本通達に定められた方法である財産を評価すると、その価額が不当に低く算定されてしまう場合などに適用される規定です。この場合には、土地は路線価方式でも倍率方式でもない方法で評価されます。

■ 負担付贈与通達とは

 負担付贈与通達は、正式には「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」といいます。略称は「負担付贈与通達」ですが、負担付贈与だけでなく、個人間の対価を伴う取引、つまり売買取引により土地等を取得した場合の財産の評価方法についても定めています。その内容は下記のとおりです。

「土地等および家屋等のうち、負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得したものの価額は、その取得時における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。」

 これを売買取引に着目して読んでみると、土地や家屋(建物)を、個人間で売買取引により取得した場合のその価額は、その取得時の「通常の取引価額」に相当する金額により評価する、ということになります。つまり、財産評価基本通達に定めた方法ではなく、「通常の取引価額」(この場合、市場価格のような意味)で評価する、ということです。

■ Xさんが取引した土地は、なぜ6500万円と評価されたか

 ここで一度、Xさんとその祖母Aさんとの間の売買取引に立ち戻ってみましょう。
 Xさんは、Aさん所有の賃貸アパートとその敷地である土地を、売買取引により取得しました。これは個人間の土地・建物の売買取引に該当します。
 さらに、負担付贈与通達では、個人間の売買取引により取得した土地・建物の評価額は、財産評価基本通達によらず、「通常の取引価額」により評価するとあります。そのため、課税庁はXさんが取得した土地と建物を、財産評価基本通達によらない方法で評価しました。その結果、土地についてはその時価は6500万円である、としたのです(なお、本件土地の相続税評価額は5530万円です)。
 このように、財産評価基本通達に定められている以外の方法でも、土地の時価評価が行われることがあります。(続く)

※ 本件は国税不服審判所平成15年6月19日裁決をモデルにしていますが、一部の事実は異なります。
※ なお、本件は納税者側の主張が認められ、課税の決定処分等は取り消されています(確定)。

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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