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竹下勇夫

会社法・労働法・経済法に精通した企業法務のプロ

竹下勇夫(たけしたいさお) / 弁護士

弁護士法人ACLOGOS

コラム

新型コロナと休業手当 休業要請のある場合ー特措法改正ー

2021年2月4日 公開 / 2021年2月5日更新

テーマ:新型コロナと休業手当

コラムカテゴリ:法律関連

特措法改正後の休業要請に従った場合でも、休業手当の支給義務はあるのでしょうか?

 新型インフルエンザ等対策特別措置法等が改正され、2021年2月13日から施行されます。
 重要な改正点は
   ①緊急事態宣言の前段階の「まん延防止等重点措置」を新設
   ②知事は、事業者に営業時間短縮を命令できる
   ③知事の命令を拒んだ事業者に対し、行政罰である過料を科す
   
 これまで新型コロナと休業手当について7回にわたって述べてきましたが、今回の特措法の改正によって休業手当の支給に関してどこか変わるところがあるのでしょうか。

 考え方のポイントは、このコラムの6回目で述べたように、不可抗力による休業といえるかどうかという点です。6回目で述べたように、不可抗力といえるためには、
   ①その原因が事業の外部より発生した事故であること
   ②事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であることという要件をいずれも満たす必要があります。
 休業要請が単なる要請にとどまっている限り②の要件を満たしていると考えるのに躊躇を感じるのは7回目コラムで述べました。今回の改正によっても、これまで緊急事態宣言が発令されていない時点での知事の協力要請は特措法24条9項に基づいて行われていましたが、今回の改正においてもこの点の変更はありませでしたから、緊急事態宣言や新設された「新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置」の公示前については、これまでと同様の理解でよいと思います。

 それでは新設された新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置や改正された緊急事態宣言に基づいて行われた協力要請についてはどうでしょうか。これらについてはいずれもまず協力要請という形で行われますが、当該要請に「正当な理由がないのに」応じない場合には行政罰である過料の制裁を伴う命令を出すことが認められていることから、協力要請の段階ですでに強制力を伴った措置であると理解せざるを得ないのではないかと考えられます。つまり知事の営業時間短縮の要請に応じないことが違法行為とされることになったのです。さすがにこうなると、①の要件も②の要件の満たしていると考えざるを得ないと思います。そうであれば、本来の労働時間から営業時間が短縮されたことによって稼働できなくなった時間についての休業手当について、事業主は支給義務がないということになるのではないでしょうか。

 勿論労使の合意により休業手当を支給することは可能ですが、営業時間短縮を強制される一方で、まず労働者に休業手当を支給して、そのうえで雇用調整助成金を請求するという事業主がどの程度あるのか疑問も出てきます。
 この場合、休業手当が支給されなければ、中小企業の労働者としては、「新型コロナウイルス感染症対応休業・給付金」「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」に基づいて休業支援金・給付金の請求をするほかないと思われます。そうであれば、今後、この制度の使い勝手について何らかの改善をする必要があるように思います。

 なお、令和3年1月7日に特措法施行令及び厚生労働大臣告示が改正され、「飲食店、喫茶店その他設備を設けて客に飲食をさせる営業が行われる施設」も緊急事態宣言中の協力要請の対象施設に含まれていることにご注意ください。

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