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竹下勇夫

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竹下勇夫(たけしたいさお) / 弁護士

弁護士法人ACLOGOS

コラム

同一労働同一賃金6

2020年11月19日

テーマ:同一労働同一賃金

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 同一労働同一賃金 対策

 なお、指針では、その(注)において、「通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に賃金の決定基準・ルールの相違がある場合の取扱い」について、次のように記載していますので、あわせてご確認ください。
 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に基本給、賞与、各種手当等の賃金に相違がある場合において、その要因として通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の賃金の決定基準・ルールの相違があるときは、「通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」等の主観的又は抽象的な説明では足りず、賃金の決定基準・ルールの相違は、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものの客観的及び具体的な実態に照らして、不合理と認められるものであってはならない。

 ここで基本給に関する裁判例を見ておくことにします。

 東京高裁平成31年2月20日(メトロコマース事件控訴審)判決
  ①正社員一般と契約社員Bとの間には、職務内容及び変更範囲に相違がある。
  ②一般論として、高卒・大卒新入社員を採用することがある正社員には長期雇用を前提とした年功的な賃金制度を設け、本来的に短期雇用を前提とする有期契約労働者にはこれと異なる賃金体系を設けるという制度設計をすることには、企業の人事施策上の判断として一定の合理性が認められる。
  ③その他の事情
   本件で比較対象とされる売店業務に従事している正社員は、関連会社再編によって転籍してきた者が一定程度の割合を占めており、その勤務実績や関連会社再編という経緯からして、関連会社在籍時に正社員として勤務していた者を契約社員に切り替えたり、正社員として支給されてきた賃金の水準を一方的に切り下げたりすることはできなかったものと考えられ、勤務条件についての労使交渉が行われたことも認められるから、そのような正社員がそのような労働条件のまま実際上は売店業務以外の業務への配置転換がされることなく定年まで売店業務のみに従事して退職することになっているとしても、それは上記事情に照らしてやむを得ないものというべきである。
 
 以上①②③の事情を考慮し、正社員と契約社員の本給の待遇差は不合理ではないとされました。
 
 大阪高裁平成31年2月15日(大阪医科薬科大学事件控訴審)判決
  ①控訴人と労働条件を比較対照すべきは被控訴人の正職員全体とすべきである。しかし、賃金(基本給)についてみると、その対象者は、控訴人の採用時期に近接した時期である平成25年4月1日付けで新規採用された正職員とするのが相当である。
  ②控訴人と平成25年4月新規採用の正職員との間には、2割程度の賃金格差がある。
  ③アルバイト職員は時給制、正職員は月給制という労働条件の相違についてみると、どちらも賃金の定め方として一般に受け入れられているものである。
  ④被控訴人の正職員は、法人全体のあらゆる業務に携わっており、その業務内容は総務、学務、病院事務等多岐にわたる上、例えば、法人の事業計画の立案・作成、法人の経営計画の管理・遂行、法人の組織及び職制の改善計画の立案等法人全体に影響を及ぼすような重要な施策も含まれ、業務に伴う責任も大きく、また、あらゆる部署への異動の可能性があったこと、一方、アルバイト職員が行う事務は、教室事務員以外の者でみると、書類のコピーや製本、仕分け、パソコンの登録等の定型的な事務であり、教室事務員においても(これはアルバイト職員に限られないが)、多くの教室では、所属する教授等のスケジュール管理・日程調整、各種事務、備品管理等の定型的で簡便な業務や雑務が大半であり、配置転換は例外的であったことを認めることができる。
  ⑤被控訴人の正職員は、期間を定めず、部署を限定せずに採用し、かつ、多数の応募者の中から選定して採用するものであること、アルバイト職員は、期間を定め、特定の業務に限定し、正職員から業務指示を受けることを前提として募集及び採用をしていたことが認められる。このことからは、正職員は、将来にわたってどの部署にも適応し得る能力を有する者を選抜して採用しているのに対し、アルバイト職員は、定型的かつ簡便な作業を行う能力のある者を採用していたということができる。

 上記の事情を考慮し、「職務、責任、異動可能性、採用に際し求められる能力に大きな相違があること、賃金の性格も異なることを踏まえると、正職員とアルバイト職員で賃金水準に一定の相違が生ずることも不合理とはいえないというべきである。その相違は、約2割にとどまっていることからすると、そのような相違があることが不合理であるとは認めるに足りない。」としました。
以上の様に、裁判例の傾向としては、少なくとも基本給に関してはその待遇差については不合理とは言えないとするものが多いようです。

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