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同一労働同一賃金1

竹下勇夫

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テーマ:同一労働同一賃金

大企業については本年4月1日から、中小企業に関しては来年4月1日から、いわゆる「同一労働同一賃金」にかかわる改正法規が適用されることになります。ここで「いわゆる」と言ったのは、「同一労働同一賃金」の意味について、厚生労働省の定めた告示「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」、以下単に「指針」といいますが、この指針の冒頭のところで、「我が国が目指す同一労働同一賃金は、同一の事業主に雇用される通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱いの解消並びに派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱いの解消(協定派遣労働者にあっては、当該協定派遣労働者の待遇が労働者派遣法30条の4第1項の協定により決定された事項に沿った運用がなされていること)を目指すものである。」と明記しているとおり、必ずしもすべての労働者について同じ内容の労働をしたら同じ賃金を支払わなくてはならないということを求めているものではなく、あくまでも通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱いの解消を求めているものである、ということに注意を要する必要があります。また今回の改正では、通常の労働者と「短時間・有期雇用労働者」との待遇差を問題としているものであり、フルタイムの無期雇用労働者、例えば労働契約法第18条により無期転換したフルタイムの労働者との待遇差については沈黙していることにご留意ください。

これまでの法律は、労働契約法第20条において有期雇用労働者の不合理な待遇差を禁じ、パートタイム労働法第8条、第9条において、短時間労働者の不合理な待遇差の禁止及び差別的取扱いの禁止を定めていましたが、改正法では、有期雇用労働者の不合理な待遇差の禁止をパートタイム労働法第8条に移行し(その結果、パートタイム労働法の名称も「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」から「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」⦅通称「短時間・有期雇用労働法」⦆に変更されています。)て短時間労働者と有期雇用労働者をあわせて規定し、第9条でそれまで短時間労働者のみであった差別的取扱いの禁止について有期雇用労働者を付け加えています。その結果、改正法では短時間労働者及び有期雇用労働者のいずれについても不合理な待遇差を禁止し、差別的取り扱いを禁止することとなりました。そして不要になった労働契約法第20条を削除しています。

 また改正法で特徴的なのは、旧法第8条において
    事業主が、その雇用する短時間労働者の待遇を
としていたものを、新法は
    事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて
と明記したこと、また旧法同条が単に
    不合理と認められるものであってはならない
としていたものを、新法は
    当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して
という文言を付加していることです。
 これらの改正によって、旧法時代に不合理な待遇差であるか否かの判断をする際に賃金総額を比較して不合理かどうか判断することができるかとの問題があったのを、法律によってこのような比較法を否定し、賃金を構成する個々の項目、法が明示しているように「基本給」「賞与」それぞれの「各種手当」ごとに、「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして」その不合理性の判断をしなければならないことが明確になりました。詳細は追々説明していくことになります。

もうひとつ、改正法で重要なことは、短時間・有期雇用労働法第14条第2項があります。当該条文をそのまま引用すると
 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第6条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。
ということであり、労働者から求められた場合にはその待遇差についての説明義務が課されたことです。
この点は事業主にとってはかなり大きな問題ですが、この点についても今後追々説明していきます。                          

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専門家

竹下勇夫(弁護士)

弁護士法人ACLOGOS

検察官として10年、弁護士として30年超のキャリアを有し、高い専門性が求められる企業法務を得意とする。沖縄弁護士会会長等の公職を歴任する傍ら、琉球大学大学院法務研究科(現在は学部)講師の顔を持つ。

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