歯を抜かないでつくる入れ歯
残念ながら自分の歯を喪失し、歯医者さんで入れ歯を製作してもらったものの
「満足に噛めない」
「入れ歯が歯茎にあたって痛い」
「違和感がある」
「入れ歯がすぐ外れる」
「見た目がおかしい」
等々、お悩みの方は多いと思います。
そこで、地方都市の大分で20年来自由診療専門の歯科診療所を営んできた、私、諌山正典が
【噛める入れ歯の条件】についていくつか述べてみたいと思います。
手前味噌で恐縮ですが、当院で製作した入れ歯は、すでに20年近く機能し続けているものを筆頭に、10年以上、クライアントの一部として快適な生活を支え続けている入れ歯も沢山あり、メンテナンスを継続して頂いている方の入れ歯は、まだまだこれから何年も使えそうなものばかりという状況で非常に好評を頂いております。
それでは、これまでの治療経験と、治療後の経過を踏まえて
【噛める入れ歯の条件】
について記していきたいと思います。
★【噛める入れ歯の条件 ①】
〈噛み合わせのバランスがとれている!〉
そもそも入れ歯を製作しなければならなくなるということは、その部分の健康な歯を失っているということです。
健康な歯は、本来、とても丈夫で、管理の仕方が良ければ、一生涯にわたって、100年近く機能し続けることも可能です。
そんな丈夫な歯が駄目になるということは、その場所に何らかの良くない条件があると考えるべきだと思うのです。
その最たるものが、歯を駄目にするような強大な咬合力です。
人それぞれお顔が違うように、骨格や筋肉のつき方、歯の生え方も違います。
故に、人それぞれに異常な咬合力がかかりやすい場所にも違いがあります。
もし、異常な咬合力がかかる場所があって、その部分の歯が駄目になったのだとしたら、その異常な力がかかる条件を無くしてから入れ歯をつくらないと、入れ歯をつくっても痛くて噛めなかったり、入れ歯自体が壊れたりして長持ちしないのです。
だから、噛める入れ歯の第一の条件は、咬合力をしっかりコントロールできるように噛み合わせのバランスがとれていることなのです。
一口に噛み合わせのバランスと言っても、顔と歯列の位置関係が適正かどうか、上下の歯の接触の仕方が適正か、左右が同時に接触するか、顎の位置ならびに関節内部の状態が適正か、などなど、多くの項目の基準をみたしつつバランスをとっていかねばなりません。
特に部分入れ歯は、咬合力を自分の歯で支える部位と入れ歯部分の歯茎で支える部位が共存しなければならないので、噛み合わせのバランスをとるのが、そもそも難しいと言えます。
たとえ難しくても、この噛み合わせのバランスだけはきちんと取らないと、よく噛める入れ歯には絶対ならないので、最優先してバランスをとる必要があります。
★【噛める入れ歯の条件 ②】
〈入れ歯を支える歯茎の形が適正で、均等に圧力が分散される!〉
入れ歯で噛めない大きな理由の一つが、歯茎と入れ歯の間に食べ物が挟まって痛みが出たり、噛んだ時の圧力が強くかかる所とそうでもないところが存在して、強い圧がかかる部分に痛みがでたりすることです。
これは、歯を抜いた後に歯茎が治るのを待って、すぐに型取りをすることが原因でおこります。
入れ歯を製作して、実際に圧がかかりだすと、歯茎の形が変わってしまうのです。
そもそも入れ歯を支えているのは、歯を失った部分の歯茎です。
歯茎はもともと食べ物を咀嚼するための組織ではないので、入れ歯を製作するにあたって、まずは仮の入れ歯を製作して、入れ歯と歯茎の間に特殊な弾力性のある材料を敷きこみます。
その仮の入れ歯で食事をしたりして、日常生活を実際におくってもらい、十分に歯茎に圧をかけ、歯茎を引き締めていくのが理想です。
そうしていると、歯茎が徐々に強くなり、少々の堅いものを咀嚼しても耐えられるようになっていきます。
その引き締まった形を型取りして、最終的な入れ歯を製作し、歯茎に適正な圧力が均等にかかり続けると、何年たっても歯茎が痩せたり、小さくなったりすることはありません。
故に、10年たっても、20年たっても同じ入れ歯を使い続けることが出来るのです。
★【噛める入れ歯の条件 ③】
〈話したり、食べたりしている時に入れ歯が動かない!〉
入れ歯には、大きく分けると部分入れ歯と総入れ歯があります。
どちらの入れ歯にも共通して言えることは、話したり、食べたり、機能しているときに外れたり、動いたりしないことが重要だということです。
部分入れ歯には、大抵、入れ歯を支える役割をする歯がありますので、比較的動いたりはしにくいといえますが、それでも、その維持のさせ方が上手くいってない場合は、がたがた動いたり、食べ物によっては噛んだ時に一緒に浮き上がってきたりします。
理想を言えば、入れ歯が動かないように維持する役割をする歯には、専用の被せ物を被せるなどして、キッチリと入れ歯を維持できるようにするべきだと思います。
また、そうすることで入れ歯を支える歯自体にも取り外しの時や機能時に異常な力がかかりにくくなり、長期的に歯が安定して機能するのを、これまでたくさん見てきました。
また総入れ歯に関しては、基本的に入れ歯をささえる歯などはありませんから、入れ歯と歯茎の隙間を極力なくして、吸着(入れ歯と歯茎の間の空気を抜いた状態をつくり歯茎と入れ歯が引っ付くようにすること)をさせることが重要です。
この吸着は入れ歯の周囲から空気が入り込んだり、噛み合わせがアンバランスに作用すると、すぐに外れてしまうので、入れ歯を歯茎の形通りに作るのはもちろん、機能するときの筋肉の動きも考慮した形にすることが重要です。
噛み合わせのバランスをしっかりとるのは、すでに記載した通りです。
やはり、これも仮の入れ歯を製作し、日常生活を実際に送って頂いて、筋肉の形やよく噛める噛み合わせのバランスなどを見つけ出して、最終的な入れ歯を製作するときのデータとして活かすような入れ歯の作り方をするのがベストだと言えます。
★【噛める入れ歯の条件 ④】
〈アタッチメントデンチャー〉
自分の歯が残っている場合に限りますが、上記の条件をみたすアタッチメントデンチャーというものがあります。
通常の部分入れ歯には、歯と入れ歯を維持固定する為のクラスプという金属の装置が露出します。
またノンクラスプデンチャーと言って、金属製のクラスプの代わりに、プラスチックの弾力性を利用して歯と入れ歯を固定するものもありますが、こちらは維持力の調整がしにくくて、義歯が動きやすい傾向があります。
ご紹介するアタッチメントデンチャーは、入れ歯を支える歯と入れ歯との間にアタッチメントという特殊な装置を介在させて、入れ歯が機能時に動いたり外れたりしないようにしてあります。
このアタッチメントがあれば、金属製のクラスプは必要なく、レジンの弾力性というあいまいなものに頼らず、入れ歯を維持安定することが可能になります。
さらに、外見上は入れ歯が入っているようには見えず、非常にスマートに口腔内にフィットするという優れものです。
このアタッチメントはプラスチック製なので、着脱を繰り返し、年数が経った時に、少し緩んできた場合には、すぐに新品に交換することが可能です。
★【おまけ!?】
〈インプラントと入れ歯はどっちがお勧め?〉
入れ歯が合わなくて困っている方や入れ歯のイメージが悪いと思っている方は、インプラントを検討しているかもしれません。
これは、私個人の見解ですが、インプラントは最終手段かなと思っています。
インプラントは骨の中に埋めるのは比較的簡単にできるのですが、除去するのは大変です。
また、噛み合わせのバランスを考えると、一カ所にインプラントをすると、他の場所の歯が欠損した時にもインプラントをした方が良いので、生涯、インプラントとお付き合いしていく必要が出てきます。
インプラントにも、もちろんメリット、デメリットがあるので、それを良く理解した上で決断を下す必要があります。
ただ、順番から考えるなら、入れ歯をまず試してみるのがお勧めです。
入れ歯を製作したとしても、インプラントはいつでもできますので、まずはダメージや負担の少ない入れ歯治療をしてみて、どうしても合わないと思う時にインプラントという選択肢を検討するのが良いのではないかと考えます。
当院のクライアントの方々にも、基本的にはそのようにお勧めし、今までの20年間のデータでは95%以上の方が、結局は、入れ歯でご満足いただいており、インプラントを採用された方はごく少数派であるのが実情です。