コラーゲンで結ばれる「美肌」と「歯周病」の意外な関係
4回シリーズの3回目となる今回のコラムは「毛細血管」について。
以前もお伝えしたことがありますが、成人の血管の長さは約10万キロといわれています。地球一周が4万キロなのでナント地球2周半分の長さです。血管にはいろいろ種類があるのですが、心臓からの流れを簡単に例えると動脈⇒毛細血管⇒静脈となっており、毛細血管は10万キロのうち99%を占めるといわれています。1本の管としての長さは10万キロですが何度も枝分かれをすることで毛細血管網(=叢)をつくり、60兆ある(一説では37兆とも)細胞に栄養や酸素を届けているというわけなのです。
今回の重要ポイントはただ1つです。ヒトのカラダは60兆ある細胞の1つ1つに栄養を届けるために毛細血管を網の目のように張り巡らせているわけなのですが、枝分かれして毛細血管網に至るその入り口付近には毛細血管へ流入する血液量を調整する「栓」があり、この「栓」の役割を「毛細血管括約筋」という筋肉が担っているという1点です。わかりにくければ用水路の「栓」をイメージしてみてください。田んぼや畑に水を供給したいときには「栓」を緩める必要があります。カラダの1つ1つの細胞にとっても、酸素と栄養をたくさん含んだ血液を十分に欲しいわけですから、この「栓」(=括約筋)には必要な時に緩んでほしいものです。では、どうやったら「栓」を緩めることができるのでしょうか?
栓を緩める作用があるのは自律神経の中の「副交感神経」が優位になるもしくは亢進した時なのです。副交感神経が「働いている」「優位」「亢進している」状態とはリラックスしている状態にたとえられます。口の中の環境を例にとると、食事をしているときがまさにリラックスした状態で、副交感神経の働きにより「唾液」が出ることになります。当然、自律神経ですので、自分の意志で意識してもしくは踏ん張って唾液を出せる人はいらっしゃらないはずです。逆に緊張しているときは反対の交感神経が優位ですので口の中がカラカラになるといった具合です。このメカニズムを逆手にとって、緊張状態でありながらリラックス状態を作り出そうとしているのがメジャーリーグなどで見かける「ガム」や「葉タバコ」です。成分的に鎮静効果もあるのかもしれませんが、唾液を出すことで脳をだましているみたいな状態です。
本題に戻り、栄養や酸素を末梢の細胞へ十分届けるためには副交感神経が優位になる時間が必要であることは何となく理解いただけたかと思います。ただし、現代のストレスフルな社会環境では、ストレスに耐えるために交感神経が優位になる時間が長くなり、副交感神経が働きにくくなってきているという現状があります。そして、副交感神経が優位になる時間について、「美肌」になるための「代謝」(≒コラーゲンづくり)を行いたいのは睡眠中です。「睡眠不足はお肌の敵」と言われる所以です。
つまり、起きている間も必要ですが睡眠中にはしっかりと副交感神経が優位になる時間=リラックスできる質の高い睡眠環境をつくることが重要になるということです。しかしながら現在の日本は数年前の流行語に「睡眠負債」があるように、睡眠の量の不足が知られてきていますが睡眠の「質」に関する認識が乏しいのが現状です。
では、どうすれば副交感神経を優位にできるのでしょうか?ガムを食べながら寝るわけにもいかないですし・・・・。答えは「呼吸」です。正確には「深い・腹式での・鼻呼吸」です。呼吸トレーニングの仕方については、以前のコラムにも書いてますのでそちらを参考にしてください。私自身、様々なことについて勉強してきたつもりですが、正直、副交感神経を優位にする方法については「呼吸法」しか知りません。逆に皆さんも、「呼吸の仕方」を習って生まれてきたわけでもないですし、理想的な呼吸のトレーニングをしたわけでもないと思います。様々なストレス下で生活して、知らないうちに睡眠の質を低下させ毛細血管に「栓」をし続けているとしたら、恐ろしいことだとおもいませんか?
是非、実生活の中に「運搬」(=毛細血管)の目線を取り入れて「美肌や健康歯肉」、ご自身の健康に役立ててください。
追伸)コロナ禍において免疫力に関する情報があふれていました。詳しい方なら「自然免疫」「獲得免疫」などの言葉を聞いたことがあると思います。自然免疫は侵入者(コロナウィルス)をいち早く探知し初期の攻撃を行いますが、その役割を担っているのは樹状細胞やキラーTと呼ばれる細胞です。そして侵入場所へこれらの細胞を届ける道が毛細血管です。「高齢者ほど重症化しやすい」「若い健康な人でも死亡する」「若年者でも重症化する」など、様々な不安をあおる報道がありますが、これらの不安情報の要因には毛細血管の入り口に「栓」をされて、十分な免疫細胞が供給されていないことが絡んでいるのではないか?との気がしてなりません。