『封じられてきた声 映画界の性暴力』から考える、夫婦のセックスレスの課題
カウンセリングで
セックスレスの時期をうかがうと
「出産後」というタイミングが、やはり多いです。
だからこそ、夫としては
産後にセックスを拒否されると
「このまま、セックスレスに
なってしまうのではないか」
と不安になってしまうのだと思います。
そのため「セックスのない生活に
身も心も慣れてしまっては困る!」と
「産後、3ヵ月経てば大丈夫らしいよ」
などと言ってみたり
「妊娠中もずっとガマンしてたのに、
いつまでガマンさせるんだよ!」
とキレてみたりして
セックスを再開しようとするけれど、
乗り気じゃない妻の様子を見たり
実際に拒否されたりして
焦りや怒り、そして悲しみで
モヤモヤとした気持ちになってしまいます。
●満身創痍の状態です
まず、出産というのは病気ではありません。
でも、ものすごく
女性の身体に負荷がかかるものです。
自分と違う命を
身体の中で育てるわけです。
なんといっても、
身体の形が変わるほどの変化です。
内臓は圧迫され、
皮膚は信じられないくらい伸び、
自分ではどうしようもできない
ホルモンの変化と
感情の変化にも翻弄されます。
出産後の女性の身体は、
満身創痍の状態だと思ってください。
●まとめて寝られないつらさ
産後の子育ては、ただ授乳して
おむつを替えるだけではありません。
人間の赤ちゃんは、
誰かの世話がないと生きていけませんから、
命の責任を負うという、
精神的に大きなプレッシャーがあります。
また、授乳は
自分の身体の栄養を渡すわけですから、
まさに身を削りながら行います。
昼間、子どもと寝られるから
いいじゃないか、と言う人もいますが
2~3時間の小間切れの睡眠では、
疲れも眠気も取れません。
まとめて寝られない、
寝たいときに寝られないというのは、
身体もつらいし、心も疲れさせます。
●やっとオレの番
ようやく子どもが寝て、
「その間にやっと寝られる!」
と思ったときに
夫が「やっとオレの番!」と
ワクワクでセックスを求められると
「あなたは大人なんだから、
自分のことは自分でやってよ」
と泣きたくなるものです。
それなのに
「オレだってガマンしてるんだ!」
と責められると
「この人は、私のことよりも、
自分の性欲が大事なんだ」
「私は、欲望のはけ口でしかないんだ」
と、自分を道具にされたみじめさと、
大変なときに、
自分の楽しみしか考えない夫に対する失望を
胸に刻み付けるのです。
●産後レスの本当の原因
つまり、産後のセックスレスの原因は
セックスしないことに
慣れたからではなく、
妻が満身創痍で戦っているときに、
本来ならば、
一番自分を守ってくれるはずの夫に、
性欲の道具にされたという
「絶望」です。
逆に、この時期に
「夫と一緒にいると安心できる」
「つらくても、
この人がいれば乗り越えられる」
と思える夫婦関係の信頼を築いていれば、
産後、1年や2年、
セックスしなくても大丈夫なんです。
●「ふつう、こうだよね」より、大事なこと
産後のセックスは1ヵ月経てば大丈夫とか、
3ヵ月で大丈夫、など
いろんな見解があります。
でも、そんなこと関係ないんです。
医師の意見より世間の意見より、
大事なことは、
「目の前の妻の心と身体の状態がどうなのか」です。
本当に大切なものは何なのか、
ということと
大切な人を全力で大切にすることに
手を抜かないことが
何よりも、産後のセックスレスを
回避することになるはずです。