相続時精算課税適用のポイントと手続き

鴇田誠治

鴇田誠治

テーマ:相続対策のこと


(Q)
相続時精算課税の適用を受けるための手続きはどうしたらいいですか?

(A)贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」を「贈与税の申告書」とともに提出する必要があります。
なお、「父と母からそれぞれ贈与された」場合は、届出書の提出は「贈与者(父と母)ごと」に必要になります。

相続時精算課税とは

相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

この制度を選択すると、今後同じ贈与者から贈与を受けるときもすべてこの制度が適用され、「暦年課税(れきねんかぜい/※下記参照)」へ変更することはできません。また、贈与のたびに申告が必要となります。

この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時には、相続税の計算上、この制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を相続財産に加算して相続税額を計算します。

暦年課税(れきねんかぜい)

贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。

したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。の場合、贈与税の申告は不要です。

なお、贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。会社など法人から財産をもらったときは贈与税はかかりませんが、所得税がかかります。

また、自分が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合や、債務免除などにより利益を受けた場合などは、贈与を受けたと「みなされて」贈与税がかかります。

相続時精算課税のポイント

・2500万円までの特別控除がある

・一度選択すると、暦年課税に変更はできなくなる

・2500万円を超えて財産の贈与を受けると、一律20%の課税となる

・財産をくれた人が亡くなった場合、相続時精算課税で受け取った財産は相続財産に「贈与時の価額で」加算されます

相続時精算課税の対象者

・贈与者(財産をあげる人)は原則として60歳以上の父母又は祖父母

・受贈者(財産をもらう人)は、贈与者の推定相続人及び孫で、贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上である者

※孫は、推定相続人になる、ならないに関わらず20歳以上であれば適用対象者となります。
 ただし、相続税の計算時には2割加算の対象です。

相続時精算課税の注意点

・相続時精算課税で受け取った財産を、相続時に相続財産と合算させるときの価額は、贈与時の価額とされています。将来価値の上昇する財産を贈与すれば、節税になりますが、確実に上昇すると思われて実際には上がらない場合もありますので、節税目的での利用は慎重に検討しましょう。

・贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告をする必要があり、この期間内に申告がない場合には特別控除の適用を受けることができず、多大な贈与税を負担することになりかねませんので、期限は十分な注意が必要です。

・届出書に記載された贈与者からの贈与については、その贈与者が亡くなるまで相続時精算課税制度の適用が継続されます。(選択を撤回することはできません。)。

・小規模宅地の評価減の特例は、「相続または遺贈により」取得した宅地についてのみ適用できるものですので、相続時精算課税制度を利用して取得した土地については、相続の時に相続財産に含めることになりますが、そのときに評価減の特例が適用できなくなります。

相続時精算課税届出書に添付する書類

この届出書には、次の書類を添付することとされています。[平成30年4月1日現在法令等]

1.受贈者が贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人である場合

(1)受贈者の戸籍の謄本又は抄本その他の書類で、次の内容を証する書類
  ① 受贈者の氏名、生年月日
  ② 受贈者が贈与者の推定相続人である子又は孫であること

(2)受贈者の戸籍の附票の写しその他の書類で、受贈者が20歳に達した時以後の住所又は居所を証する書類

(3)贈与者の住民票の写しその他の書類(贈与者の戸籍の附票の写しなど)で、次の内容を証する書類
  ① 贈与者の氏名、生年月日
  ② 贈与者が60歳に達した時以後の住所又は居所

2.受贈者が「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(措法70の7の5)」の適用を受ける特例経営承継受贈者である場合
  ※ 特定経営承継受贈者が上記1に該当する受贈者である場合を除きます。

(1)受贈者の氏名及び生年月日を証する書類

(2)受贈者が贈与者からの贈与により特例対象受贈非上場株式等の取得をしたことを証する書類

(3)上記1の(2)及び(3)の書類

なお、社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)が導入されたことに伴い、個人番号を記載した各種申告書、申請書、届出書等を提出する際には、個人番号カード等の一定の本人確認書類の提示又は写しの添付が必要になります。

(相法21の9、措法70の2の6、70の2の7、相令5、相規11、措規23の5の6、23の5の7、相基通21の9-5)

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鴇田誠治
専門家

鴇田誠治(行政書士)

社会保険労務士・行政書士 ときた事務所

相続・相続対策の専門家として、相続手続きの総合的なご支援はもちろん、争族の対策もお客様と共に立案いたします。また、任意後見、財産管理、家族信託など、お客様が安心できる老後の生活支援もお手伝いします。

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