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鴇田誠治

遺言書作成と相続手続きのプロ

鴇田誠治(ときたせいじ) / 行政書士

社会保険労務士・行政書士 ときた事務所

コラム

孫を生命保険金の受取人にするときの注意点

2018年10月9日 公開 / 2020年6月30日更新

テーマ:相続対策のこと

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 生命保険 選び方生命保険 種類


先日、お客様と今後の相続対策についての打ち合わせを行っている際、

「孫のY太郎を生命保険の受取人にするのはどうかしら?」

というお話になりました。

お孫さんを生命保険の受取人にした場合、相続対策としてメリットがあるのでしょうか。

具体的に検討してみましょう。(※ お名前、親族関係等は現実のご相談とは異なります。)

ご相談者 Y太郎さんの祖母Aさん
Aさんの相続人は、長女B子さん、次女C子さんの2名のみで、Y太郎さんはB子さんの子です。

予想外の税負担にご注意を!

相続対策で生命保険を利用する場合のメリットは「非課税枠」の利用です。

死亡保険金を受取った場合に、受取保険金の合計額から「500万円×法定相続人の数」の金額を非課税(受取った合計額から差引くことができる)になります。

仮に法定相続人が3人なら1500万円までが非課税(相続税の計算に含めない金額)となり、1500万円を超える部分について相続税の課税対象になります。

この非課税枠は、生命保険金を「法定相続人が受け取ったとき」にしか、適用することができません。原則として、孫は法定相続人にはならないので、孫を受取人にした場合は非課税枠がないことになります。

仮に、B子さん(長女)500万円、Y太郎さん(孫)500万円の2名がそれぞれ死亡保険金を受取る契約のとき、Y太郎さんが代襲相続人や孫養子でない場合、その500万円は非課税にならずに相続税を計算するための財産に500万円がそのまま加算されることになります。

* 代襲相続人とは:被相続人の子が、被相続人よりも先に死亡している場合
* 孫養子とは:被相続人と養子縁組(普通養子)をしている(孫養子)場合

ちなみに、この「法定相続人」ですが、次の人たちも対象になります。

1)相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして相続人の頭数に含める。
2)養子がいる場合に、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

非課税枠を使うために「5人いる孫をみんな養子にしてしまおう。」としても、上記の2)にあるとおり、養子は1人、多くても2人しかカウントされませんのでご注意を。

孫は相続税が二割増しになることがある

正味の遺産額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると相続税がかかります。

相続税は、相続や遺贈などにより財産を取得した人にかかりますが、配偶者や子(第一順位の相続人)、親(第二順位の相続人)以外の人が財産を相続した場合、負担する相続税額が
通常の方法で計算した税額の2割(20%)増しの金額になります。

具体的には、通常の計算で100万円になる相続税は、2割加算の対象者は20万円(100万円×20%=20万円)余計に支払うことになります。

この2割加算の対象になる人は、兄弟姉妹(第三順位の相続人)、甥姪などが対象になります。

それでは孫の場合はどうかというと、原則的には2割加算の対象になると考えて下さい。

ただし、例外的に次の場合には2割加算の対象にはなりません。

 親が先に亡くなったため相続人になった人(代襲相続人)になる場合 です。

本来相続するはずだった子(孫から見れば親)の権利を引き継いで相続するので、2割加算の対象外になります。

なお、先にもご紹介した「孫養子」の場合は2割加算の対象になります。

まとめ

孫のY太郎さんを生命保険の受取人にすることは相続対策としてどうか?というご質問ですが、まとめると次のようになります。

代襲相続人でないY太郎さんを生命保険金の受取人にすると、

1 代襲相続人でもない、孫養子でもないY太郎さんは、生命保険の非課税枠の対象外です

2 相続税がかかる場合、代襲相続人でないY太郎さんは通常の税額の2割増し(2割加算)となります

Y太郎さんを孫養子にすることで非課税枠を使うことはできますが、相続税は2割増しになってしまいます。

このようにお話ししたところで、「それではやめておきます」となるのかと思いきや、やはりお孫さんにも財産を渡してあげたいとのご意向でした。

金額をお聞きすれば、Y太郎さんが生命保険を受け取って相続税を支払っても十分なほどの金額の生命保険金でした。

税金対策では合理的でも、心情的には合理性だけを追求しないのも相続対策です。
むしろそういった判断をされる方のほうが多いのかもしれません。

皆様はどのようにお考えでしょうか。
今後も皆様のいろいろなお考えをお聞きして、これからもしっかり勉強していきたいと考えておりますので、どうぞお気軽にご相談にいらしてください。

この記事を書いたプロ

鴇田誠治

遺言書作成と相続手続きのプロ

鴇田誠治(社会保険労務士・行政書士 ときた事務所)

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