自宅の土地建物の遺産分割 その注意点は?

鴇田誠治

鴇田誠治

テーマ:相続のこと


父が亡くなり、相続人は母と長男である私A、それからすでに嫁いでいる姉Bの3人です。

父の遺産は、自宅の土地建物しかなく、この自宅には、私A(長男)の家族と母が住んでおり、姉B(長女)は、姉の夫名義のマンションで別に暮らしています。

母は、私Aが相続するように言ってくれています。

姉Bも、以前は「遺産は何もいらないよ」と言ってはいましたが、現在はどう考えているか分かりません。遺産分割にあたって、どんな提案を姉Bにすべきでしょうか。

なお、父は遺言書を書いていませんでした。

法定相続分の確認

お父様の相続の場合、法定相続分はお母様が2分の1、Aさんが4分の1、Bさんが4分の1となります。

Bさんは他家に嫁いだとはいえ、法定相続人から外れることはありませんので、Bさんが相続放棄をせず、遺産の相続を希望すれば、Bさんにも遺産を分けることになるでしょう。

しかし、土地建物の名義を、たとえ4分の1であっても、住んでもいないBさん名義にする(相続人で共有する)のは現実的ではありません。

また、自宅をを売却して、売却代金を相続分に応じて分配する方法(換価分割)も、今後の家族の生活を考えれば難しい選択になります。

代償分割

このような場合に取られる方法は、代償分割という方法です。

代償分割とは、ある人が遺産の現物(今回の場合は、Aさんが取得する自宅)を取得する代わりに、その相続分を超えて取得することとなった部分に相当する価値を、金銭で他の相続人(姉Bさん)に支払うという分割方法です。

Bさんが相続分を主張し、代償金の受取りについて合意すれば、代償金を支払う内容の遺産分割協議書を相続人全員で作成することになります。

代償金の支払いは、一括で支払うのが基本ですが、相続人間での合意があれば分割払いも可能です。ただし、この場合は、何円を何回で支払うのかなどのことを詳しく決めて合意する必要があるでしょう。

Bさんへの対応

Bさんは以前は「遺産はいらない」と言っていたのですから、まずは本当に相続する気がないのかどうか確認しましょう。

あらためて聞かれると「まあ、権利もあるわけだから、何もいらないというのもねえ...。」というのが人情です。

ですから、「何も渡さない」という選択肢はない、ということを最初から頭に入れておくべきです。

まずは、Bさんにお話し(交渉)する中で、「法定相続分を渡す資力がないから、この位でどうですか?」という、自分にとって低めハードルから提案をしていくのが良いのではないでしょうか。

そして気を付けて欲しいのは、今まで父の面倒も母の面倒も見てこなかったのだから、相続するなんてとんでもない!などという勢いで、いきなり遺産分割協議書を送り付けるなど一方的な対応をしないことです。

このような場合には、私の経験上「かえって頑なになってしまう」という経験が多々ありましたのでお気を付けください。

人生の先輩である皆様ならお分かりのとおり、自分がやられて嫌なことは、(どんな理由があるにせよ)相手も嫌なのだ」という当たり前のことを前提に、虚心坦懐に話し合うことが大切です。

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鴇田誠治
専門家

鴇田誠治(行政書士)

社会保険労務士・行政書士 ときた事務所

相続・相続対策の専門家として、相続手続きの総合的なご支援はもちろん、争族の対策もお客様と共に立案いたします。また、任意後見、財産管理、家族信託など、お客様が安心できる老後の生活支援もお手伝いします。

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